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加瀬 加奈子選手

2020年06月18日

ガールズケイリン1期生としてデビュー後、先行にこだわってトップで戦い続けていた加瀬加奈子選手(新潟102期)。2018年7月には産休に入り、約1年後の2019年7月にガールズケイリンに復帰。更に同年11月には出産後、初の優勝を手にしました。
優勝者を優先して選ばれる7月のいわき平競輪場での『ガールズケイリンフェスティバル』には約3年ぶりのビッグレース選出です。産休から復帰しての近況やガールズケイリンフェスティバルへ向けての意気込みをお伺いしました。

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山口:産休から約1年での復帰でしたが、その前後での違いは何か感じますか?

加瀬:ガールズケイリンに関しては肝が据わりましたね。出産の痛みに比べると他の痛みや緊張、プレッシャーなどは何ともないなと思うようになりました。他のガールズ選手など、レース前になると「緊張しているな」というのはわかるんですが、私はそれがなくなりました。

山口:以前は「人気に応えなければ」や「勝たなければ」などプレッシャーは感じていたんですか。

加瀬:ありましたね。競輪学校(現・養成所)の時は、レース前に他の子同様に私も何度も何度もトイレに行っていたんです。そういうのがなくなりました。

山口:緊張がなくなるくらいの経験が、出産なんですね。

加瀬:出産が本当に痛すぎて、他のことがどうでも良くなるなと。やっぱりそれまでは人並みにオッズでプレッシャーを感じたり、お客さんの声、特に厳しい声には過剰に反応したりしましたが、それも過剰には気にならなくなりました。
前は「勝たなければいけない、勝つためにはどうしたら良いか」そういうことばかりを常に考えていたので、今はそれを考える余裕もなく育児をしなければならないですし、家族のこともあります。
だから逆にレースを走るのが純粋に楽しいです!仕事として楽しんでできていますね。

山口:そうですか!そんな変化もあるんですね。

加瀬:独身だった時は100%ガールズケイリンに集中していたんです。レース、トレーニング、体のケア、その他、すべて全力で取り組んで常に「勝つためにどうしたらいいか」を考えていました。そんなに集中していたので、負けた時は「あとは何を強化したら良いんだろう、何が足りないんだろう。サプリとかプロテインとかもっと良いものがあるんだろうか」と突き詰め過ぎていたように思えます。
今は育児をしているので、体のケアを全くせずにレースに行くこともあり、旦那や母が娘を面倒みられない時、保育園を休まないといけない時は練習もできない。練習量は実際に半減していますからね。「こんな状態ではトップ選手たちに勝てる訳がないだろうな」と思って走っています。

山口:では楽しめて走れているのが、優勝などにも繋がっているんでしょうか。

加瀬:いや、そうではないです。練習量が減っても優勝が出来た開催は、全部【裏開催】(インタビュアー注:ビッグレースの付近で開催されるレースのこと。ビッグレース参加メンバーは走らない)なんです。開催に行った先でオッズパーク杯ガールズグランプリやグランプリトライアルレース、ガールズケイリンコレクションなどを宿舎のテレビで見ていました。
強い選手たちがいないから私が優勝できたんでしょうね。だからガールズケイリンフェスティバルへ選出されたのも「裏開催を優勝したから出られた人」です。

山口:優勝なのはどの開催も変わらないと思いますが・・・。ご自身ではそう思っているんですね。では次のガールズケイリンフェスティバルが勝負なんですか?

加瀬:そうでもないですね。ビッグレースだから育児の時間を削って練習する!という訳にはいかないですし、トレーニング量を増やしたり、ケアをしっかりするために栄養を取って休養、などもできないです。
今まで通りの状態で入りますから、もし優勝できたらラッキーと思っています。もちろん全力で走るのは変わりません。

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山口:復帰後に初めて優勝した2019年11月の向日町は、決勝逃げ切りでしたけど、そこはどう感じたんですか?

加瀬:正直に言うと、自分のレースが終わったら真っ先に帰りたかったです。今は無観客なので表彰式などもありませんが、11月は男子の最終レースが終わった後にバンク内で表彰式がありました。それを待っている時間すらももどかしく、すぐに帰って娘の顔を見たかったです。優勝の嬉しさよりもそちらが先に思い浮かびました。
0歳児を実家にあずけてレースに参加している身としては、いくら実母が面倒を見てくれていると言っても心配が大きかったです。
産休、育休が合わせて1年程だったんですが、そんなに早く復帰できたのも、家族と「レースが終わったらすぐに帰宅する」という約束をしたからなんです。
なので、前検日当日に行くと間に合わず前の日の夜に宿泊しての参加、最終の飛行機や新幹線では帰宅ができないようなミッドナイトの開催などは欠場を出していました。

山口:そうだったんですね。

加瀬:はい。例えば佐世保のミッドナイトなどは私の住んでいる新潟にはレースが終わってその日に帰れません。走りたいのはやまやまですが欠場しました。
家族も「後泊してのんびりしてるくらいなら娘の面倒をみなさいよ」という雰囲気だったんです。当然ですよね。母親ですから。それを約束に早くレースを走れるよう復帰したんです。

山口:加瀬選手が復帰されると聞いた時に、約1年で復帰は早いと思ったんですが、ご家族の協力とお約束があったからなんですね。

加瀬:それもあるし、私自身の年齢も考えて早めの復帰でした。娘を産んだのが38歳の時で、2年後3年後の40歳、41歳で復帰すると考えたら「そんなにレースから離れていて、ちゃんと戻れるか?」と不安でした。
例えば私が、今産休をとっている元砂(元砂七夕美選手・奈良108期)の年齢ならゆっくり復帰をしても大丈夫だと思います。20代中盤ですから。
でも私はそうではなかった。毎年新人選手もどんどんデビューしてくる中、復帰が遅くなればなるほどしんどい。練習もしっかりして万全の状態で復帰できるように時期を待ったとしても、産休前まで体力やスピードが回復するとは言い切れないなと。早く戻ってレース感覚を取り戻すしかないと思ったんです。

山口:復帰するにしても、体力面では戻すのは大変だったのでは?

加瀬:いや・・・、かなり大変でしたね!最初は新潟同期・練習仲間の田中麻衣美や藤原亜衣里についていけないくらい弱かったです。先行しても簡単に捲られる。「私すごい弱くなっちゃった、こんな状態で本当に復帰できるかな」と不安でしたが、それだけ出産のダメージは大きかったんだとそこでも改めて感じました。
復帰して1年経つ今になってようやく体力や筋力も戻ってきて、先行して逃げ切れるくらいの状態です。

山口:体力の万全に戻らない中レースを走るのは本当に大変だったと思いますが、頑張れた原動力はなんですか?

加瀬:守るべきものができたからですね。家で待ってる人がいると思うと頑張れました。

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山口:それを聞いて思い出したのが、デビュー当時の森美紀さん(102期・引退)。「息子の学費を稼ぐために頑張る」と仰っていたのがとても印象に残っているんですが、そんな心境なんでしょうか。

加瀬:あそこまで具体的ではないですけど、気持ちは一緒ですね(笑)。
例えば娘が大きくなって「ピアノがやりたい」「自転車がやりたい」と言った時、「ピアノや自転車はお金がかかるから、やらせてあげられない」とは言いたくないです。
やらせてあげたいと思うからある程度の収入はないとだめだなと思います。
私自身もそうしてもらったから余計そう思うんでしょうね。私が行った高校は中越高校というスポーツが盛んな学校で、更に大学も順天堂大学というどちらも私立の学校でした。
自分の夢が決まってくるとお金がかかる部分はどうしても出てきます。その時に応援してあげられるようにも稼がないとと思うし、強い母親でいたいです。

山口:今の最大のモチベーションは娘さんなんですね。

加瀬:はい。娘が中心ですが、家族も私がレースに行っている時は見てくれるので、その分も頑張りたいです。
家族にとっては私が無事に帰ることが一番だと思うので、怪我をしないようには気を付けてレースをしています。それこそ風をきって先行をするのが一番前でレースができるので怪我のリスクは少ないですしね。

山口:確かに。そうなると先行が一番ですよね。

加瀬:メンバー次第ではありますけど、ごちゃつきそうな展開なら自分が先頭をきってレースを動かすようにはしています。

山口:6月初旬の福井も、まさに3日間先行でしたね。

加瀬:そうですね。決勝は、私の理想としては柳原(柳原真緒選手・福井114期)と先行勝負をしたかったんですが、彼女も地元で優勝が欲しかったんでしょう。
「40歳の私を先行させて、若いのが捲るのか」と思いましたけど(笑)、でもそれを言う間もなく、レース後はすぐに帰路につきました。

山口:ガールズケイリンフェスティバルがあるいわき平は5月末に走っていますが、感じはどうでしたか?

加瀬:みんな強かった、という印象だけでした(笑)。直線も長いと言われますが、地元の弥彦も直線が長いので気にならないです。

山口:メンバーはいかがでしょうか。

加瀬:みんな私の上をいく選手ばかりです。背中を見てしがみついていきたいです。

山口:ガールズ1期生(102期)としては小林莉子選手(東京)と2人だけですね。

加瀬:そうですね。本当なら中川諒子(熊本)とかも強いけど怪我をしていて、つい先日復帰したばかりです。彼女とはガールズケイリンが始まる時に一緒に新潟のクラブスピリッツで練習をしていたから、強さも知っています。
中村由香里(東京)とかも同年代で強いから、本当は一緒に走れたら良いんですけど、「裏開催を優勝した私が出て、彼女たちが出られないんだ」とは思いますが、でも莉子もいるし頑張りたいですね。
ただ莉子は若いんで(笑)。1期生だけど10歳以上違うから同期な感じはあんまりしないです(笑)。

山口:お客様のご声援が今は無い状態ですが、いかがですか?

加瀬:もの寂しいのはありますね。ただ出産後はあまり声援も聞こえない、リラックスして集中できているのでそこまで気にはならないです。
私は40歳だし、ずっと「男道」をコンセプトに男勝りでやってきました。アイドル的な「●●ちゃん、かわいい!頑張って!」という声援は当初からないし、きっとこれからもないでしょう。
ただ車券を買って握りしめて「加瀬は先行で頑張ってくれるんだよな」とつぶやく、期待してくれるお客さんが一人でもいてくれたらありがたいし、そういうお客さんに評価されれば良いなと思っています。

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山口:今の目標は何ですか?

加瀬:新潟の選手に恩返しをしたいです。それには勝つことが一番だと思うんです。
私は妊娠中にも競輪場にパワーマックスやワットバイク(自転車型の練習機械)に乗りに行っていたんです。男女問わず他の選手はレースを走っていて、私は産休中。なのに「妊娠中でレースを休んでいる加瀬が練習にくるな、邪魔なんだよ」という選手は一人もいませんでした。そう思ってもおかしくないのに。むしろ「先に乗っていいよ」と譲ってくれたりしました。
支部長の川村昭弘さん(新潟81期)も「練習に来るのは良いけど、一人ではするなよ」と心配してくれました。亜衣里や麻衣美も「今日は休もうと思っていたけど加瀬ちゃんが行くなら、仕方ないな、付き合うよ」と一人にはしないように、何かあった時のために一緒にいてくれました。大事に思ってくれているのを感じたんです。

山口:そうですか。きっと皆さん、出産してもすぐに加瀬選手が復帰すると思っていたんでしょうね。

加瀬:そうだと思います。諸橋さん(諸橋愛選手・新潟79期)も同門なんですが、復帰してすぐの時、私は軽い練習だけで帰っていたんです。それでも「できることからゆっくりやっていけば良いよ」とたくさんアドバイスをくれました。見捨てないでみんなが大切にしてくれたのが本当に嬉しかったんです。
ようやく産休前まで戻ってきた感じがあるので、グランプリを走れるくらいまでいけたら一番良いですけど、そこには届かないにしても大きいステージで勝つのが一番だし、そこで「ここまで戻ってこられたのも新潟のみんなのお蔭です」とお礼を言いたいです。

山口:とても素敵な目標です!私事ですが、妹が出産を経験しているので大変なのを見てきました。普通の人でも大変なのにそれをガールズケイリンの選手が出産して復帰してレースでも勝って、というのは本当に凄いと思います。

加瀬:本当ですね。自分でもそう思います(笑)。町中で細くて若い女性が、子供を3人連れているのを見ると「凄い、あんなに出産は大変なのに3人も産んだんだ!」と尊敬します。

山口:そうですね。感じ方が違いますね(笑)。今回は貴重なお話ありがとうございました。では最後にオッズパーク会員の方へメッセージをお願いします。

加瀬:力を出し切るレースでデビュー以来ずっと走ってきたので、この先もそういうレースを見せていきたいです。それで代謝になったら弱かっただけ、仕方ないと思えるし、今後もそういうレースしかできないです。それでも良いよと見てくれる方はいるので、応援してください。

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※インタビュー / 山口みのり
三重県松阪市出身。フリーアナウンサー/ナレーター。
各競輪場で中継司会やリポーター、イベント司会などを担当。

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※写真提供:公益財団法人 JKA

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