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支えてくれる人への想いが、走りを変える。|松谷 秀幸選手

2025年07月03日

高松宮記念杯で3度目のG1決勝進出を果たした松谷秀幸選手(神奈川・96期)
年齢を重ねた今だからこそ辿り着いた「平常心」と、師匠から受け継ぐ"感"の言葉に込めた思いとは。
様々なお話を伺いました。

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−まずは高松宮記念杯開催を振り返ってはいかがですか。

すごく疲れましたね。笑 緊張感が長かったので。

−やはりそこは6日間という戦いというところで。

そうですね。やっぱり休みの日も気を抜けずに過ごしていたので。

−その中でG1では初めて予選での連勝となりました。その辺りはいかがですか。

練習メニューを師匠の佐々木龍也さん(神奈川57期・引退)に組んでもらってるんですけど、レース前まで結構追い込んでやっていて、そこでちょっと成績結果出なくても気にすんなよみたいなことを言われていたんです。G1に向けてしっかり結果が出るように組んでもらっていたのでそれが本当に良かったなっていう感じがします。

−その成果がこのG1にバッチリ出たと。

はい、調整がうまくいったのかなっていう風には感じます。
ちょっと別府記念で調子悪いなって感じで不安要素はいっぱいあったんです。
別府から日にちもなかったので大丈夫かなぁと思いながら行ったんですけどね。

−それが初日走ってみた感覚が良かったと。

そうですね。初日、深谷(深谷知広選手・静岡96期)の後ろに付いてあれだけ行ってくれたんで初日は調子が良いというよりは展開に恵まれたなという感じだったんですけど、一次予選の2で郡司(郡司浩平選手・神奈川99期)の後ろに付けて、あの踏み返しての捲りを差せるということは今までなかったので、あれで調子はいいのかなというふうに思いました。

−確かに1C辺りからの郡司選手の捲りをきっちり捉えてというのは、本当に見ていてすごいなと感じました。

そうなんですよ。今までは差せないで付けきって終わるというか、付けてホッとするっていう部分もあって、今までは抜きに行っても抜けなかったので。
そこで差せたことでおっ、と思いましたね。

−そして準決勝に関しては、ラインの3番手から最後ハンドルを投げて2着で決勝進出を決めました。これはウィナーズカップからの伏線があったんですよね。

ウィナーズの時に準決勝4着で決勝に乗れなかったんですが、師匠に喝をくらって、お前はゴール前一番大事なとこで必死さがないな、そこの紙一重で甘さが出てるなみたいなことを言われて。決勝に乗る乗らないじゃ全然変わってくるので、その思いをもっと感じた方がいいぞみたいなことを言われました。

−ウィナーズカップの時の映像も見ても、あの時もハンドルはしっかり投げているようには見えるんですけど、今回とはどのあたりが違ったんでしょうか。

自分も意識するようにその時も投げてはいるんですけど、「なんとか!」っていう気持ちはウィナーズカップまでは弱かったというか、気持ちが足りなかったなと感じて、それからはもう必死で投げるようにはしてます。

−そのハンドル投げの成果がこの本当に準決勝の微差の2着だったっていうところですもんね。

そうですね。一次予選2の郡司を差したのもそうですけど、そういうところを必死にやっていかないと自分みたいな選手は勝てないですからね。

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−やはりその辺りも含めて気持ちの部分で戦ってらっしゃるのですね。

はい。気持ちとか考え方だったりでやっぱり若い子に必死についていくしかないかなって思っています。

−違う観点から準決勝を見ると、ほぼ2着権利の中で、ライン3人とも勝ち上がりっていうのが難しい中でも松谷選手は3番手を固めました。3番手では1着までっていうのはなかなか難しい中で、松谷選手の中でそのあたりはどういう気持ちなのでしょうか。

自分の中では、初日だけじゃないんですけど、いつも深谷はすごく良いレースをしてくれるし、岩本(岩本俊介選手・千葉94期)
も自分が前の時は本当に頑張りますっていう感じで気持ちよく行ってくれるので、自分はもう3番手の位置を回って4コーナー勝負できれば納得かなっていうふうには思ってるんです。

−3番手を固めることに関しては、やっぱり普段からの流れがあって、なんですね。

はい。あとはもう直線で自分が内外をしっかり見極めてどれだけ行けるかという感じですね。
本当に前2人には世話になってるし、勝ち上がり的にはちょっと厳しい位置なのかなっていうのはあるんですけど、まああのレースだけじゃないんで。
競輪はもうずっと続いていくんで、やっぱりそこだけわがまま言うのもちょっと違うんだなっていう風にも感じますし、やっぱり積み重ねですね。

−今回も番手戦の時もあれば3番手もあって、松谷選手は卒なくこなしている印象があるんですけど、そのあたりの難しさの違いはありますか。

いや~全然違いますね。3番手は3番手でやっぱり難しいですね。
踏んだり止めたりをもろに感じるし、番手の人が横に振ったら吊られて振られないように内を締めてなきゃいけない。
かといって番手の人が強かったら、外を張りながら出ていったら置いてかれちゃうんですよね。今回も青龍賞の時、郡司が外に振ってまた戻ってタテに踏んでって時に口が空いちゃったので、あれも本当は2着確保しなきゃいけないんですけど、やっぱりそこは難しいなって。
やっぱり改めて3番手の難しさがすごい痛感したというか。
そこはもっと勉強していかなきゃいけないし、走って体で感じていかなきゃいけないなっていうのはあります。

−そして松谷選手はG1の決勝は今回3回目ということでした。もっと乗っている印象があったのですが、意外にも去年の全日本選抜が初めてだったのですね。

そうなんですよ。なかなか乗れなくて準決勝4着とかも結構多くて、なかなかあと一歩というところだったんです。

−今回は今年初めてのG1の決勝の舞台でしたが、実際にG1の決勝という場所に立ってみての雰囲気や景色はどう感じますか。

やっぱりファンの熱気もあるし、選手一人一人もそれぞれ色々抱えているんだなと。その抱えているものがみんな違って、その熱量を控え室とかでも感じますね。なんというか選手からちょっと圧を感じますね。

−圧ですか。それぞれ秘めている思いや気持ちが伝わってくるような雰囲気なのですね。

はい。自分はもう本当にいつもと変わらず平常心なんですけど、周りはそういう風に見えるんで、自分ももっと集中した方がいいのかなっていう風に思っちゃいます。みんなやっぱりすごいなーっていう感じで見ちゃってるんで。

−松谷選手は意外とそのあたりは冷静に周りを見ている感じなんですね。

そうですね。比較的もう冷静に、じゃあやるぞ、みたいな感じでもなくいつも通りっていうのは心がけてるんです。

−松谷選手の走りを見ていて走り自体には熱いものを感じますが、ご自身の中では気持ちはある程度冷静でいられる部分も作っている感じなんですか。

そうですね。もうあの、なんですかね。ジタバタはしないという意識でいます。笑
年取れば取るほどジタバタしても仕方ないんで、常に冷静にいたいなっていう部分はあって心掛けています。

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−今のS1という地位には10年以上いらっしゃるわけですけども、若い時と比べても気持ちの面も変わってくる部分もありますか。

やっぱりもうこれだけ選手やってると、失敗ばっかしてるんですよね。
昔は気合い入れたりとか、無理に高ぶらせたりとかしてたんですけど、そういう方が良くないのかなって思って。
逆に勝っても負けても、常に同じテンションではいたいなって心がけてて、あんまり喜怒哀楽出さないようにしていますね。
もちろん、勝った時は嬉しいんですけどなるべく内に秘めて、負けた時も悔しいんですけど逆に笑えるぐらいの、勝っても負けても常に同じ状態でいたいなっていうのは本当に心がけてます。

−もう一喜一憂しないっていうような感じですね。

そうですね。
もう常に相手には「何考えてるんだろうこの人」みたいな感じに思われたい感じはあります。
勝っても喜ばない、負けても悔しがんない、なんだこの人みたいな。笑

−確かに私も松谷選手のイメージとして、本当にいつも淡々とされているイメージっていうのはありますね。

本当ですか。一応心がけていて、冷めた感じには見えるんですけど、実際は心の中はいろいろ考えているんです。
嬉しかったりはしてるんですけど表には出さないように。
そういうことをするからやっぱり疲れるのかもしれないですね。笑

−周囲の選手に対してもすごく気を配ることのできるタイプということなんですね。

神奈川県の中でも最近一番年上になってきてるので、やっぱりいいムードというか、いい雰囲気というか、本当に後輩が気を遣わない、リラックスできるようなバカ話とかするような環境が作りたいなって思ってます。
かしこまるのはレース前だけでいいかなっていう感じですね。

−そのあたりはご自身の今の年齢と南関地区での役割っていうのを自分の中で考えて、そういう立ち回りをされているような。

そうですね。意識はそういう風にしています。自分が一番年上で気持ちが入っちゃってたりすると、後輩もゆっくりしたいけどできないな、気が休まんないなって気を遣わせてしまうじゃないですか。
だからそこはリラックスできるような、わざと気を和らげるようなことをしてみたりとかは心がけてます。

−本当にもうそれは理想の上司像みたいな感じですね。

ありがとうございます。
少しでもリラックスできる雰囲気であればいいなと思っていますが、比較的神奈川の雰囲気は明るいかもしれないですね。

−あとは松谷選手は去年あたりから安定感が更に増した印象があるんですけど、何かご自身の中でその要因というのはありますか。

練習はずっと何年も変えていないんですよね。
でも師匠と結構ご飯に行くことがあって、その時にやっぱりいろいろアドバイスをもらっているのが大きいのかなと思います。

−どういった部分のアドバイスなんでしょうか。

精神的なものだったり、日常の生活の仕方とかですね。
師匠に言われた言葉で印象に残っているものが一つあって。
いろいろなことを"感"じるのも大事だし、"感"謝するのも大事だし、"感"動するのも大事だし、「感」っていう字は全てにおいていい言葉なんだよって教えていただいたんですよね。

−おお、ものすごく素敵な言葉ですね。

そうなんです。
誰かを感動させなきゃいけないし、感謝もしなきゃいけないし、自分で感じなきゃいけないと。一流の人は感じる能力も強いし、周りにもしっかり感謝しなきゃダメだっていうのを教えられて、そういう風な心持ちで自分も日常を過ごすようになると、やっぱりちょっと安定しだしたのかなっていう風に思うんです。
やっぱり人に感謝して、支えてもらっている人に感謝して、本当にそういう謙虚な気持ちが大事だなと思って生きています。

−それを師匠に教わって実行している松谷選手の生き方も素晴らしいですね。

いやいや、それを今まで自分も全然できてなかったですし今も出来ているわけじゃないんです。
でもそういうことを自分も教えていただいて、ああ、そういう風にちょっと自分もやっていきたいなと思って生きています。

−今の松谷選手のその言葉を聞いて私も感銘を受けました。こうしてまた"感"がどんどん伝染していくのも素敵ですね。そして師匠である佐々木龍也さんがそういう考え方や気持ちを持ってるっていうのもすごいですよね。

本当にすごいですよね。なかなかそういう観点で物事を見られないですよね。
年取ると若い子に体力だったり練習量だったりタイムだったり、色々と勝てるものはないんだから、考え方で差をつけないとダメだとか、若い子とは今までの経験の差が違うんだから、それをいかに活かして勝つか。そして何で差を埋めるかをしっかり考えなさいと。
体力だったりスピードだったりそれは絶対叶わないんだから。でもギャンブルだから勝てるところは絶対にあるんだから、しっかりそこを感じろっていう風に言われたり。
自分もそれを聞いて確かに、と思ってまたやる気が出て、それがモチベーションになってるかもしれないですね。

−そんな松谷選手の今の目標としてはどういったところに。

G1では表彰台に上がっていないので、まずは3着に入って、そこからまた新たな目標を決めたいなと思っているんです。
自分はG1を獲るという選手ではないので。今は決勝5着が最高順位なので、一つでも上を目指して、なおかつ決勝に常に乗れるような選手にはなりたいなとは思ってます。

−現在の賞金ランキングとしては13位で上位につけていますが、グランプリに対する意識はどうですか。

いやいや全然ないですよ。そんな選手じゃないですよ。笑
おこがましくて。まあでも一つずつ、自分なんて華やかな選手じゃないんで、気づいたらちょっとずつ上がってるなぐらいの選手なんで。

−いぶし銀というか渋いというかそういう感じですかね。

そうですそうです。ちょっとずつ、あれ?あいつ気づいたらなんかいるなぐらいの感じでいきますよ。
しぶとく「送りバント」しますよ。笑

−おお!さすが元プロ野球選手ならではの言葉ですね。笑 まず目標としてはまずはG1の表彰台ということですね。

そうですね。
G1表彰台にやっぱり入ってみたいですね。
そこからまた見えてくるものがあるのかなって思います。

−通算勝利数で言うと今291勝というところで300勝も近づいてますが、そのあたりの意識はどうですか。

そこも全く意識はしていないですね。
本当にもう一戦一戦集中してって感じで。師匠にも、40歳を超えたら半年契約だと言われているので、しっかり頑張っていかないと。

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−一走一走っていうような意識ですね。

そうですね。
もう若い時みたいに簡単に取り戻せることはないので、少しでも上にしがみついていこうかなと思ってます。
気づいたらいるなぐらいにしといてください。

−でも絶対に必要な存在というか、影でしっかりと神奈川勢を支えている存在というところで貴重なお話を伺えました。

神奈川の若手をしっかりリラックスさせて、レースで頑張れるようにしていきたいですね。

−では最後にオッズパークの読者の皆様に一言いただいてもよろしいでしょうか。

本当に一戦一戦集中して、少しでも車券に貢献できるように頑張るので、応援よろしくお願いします。

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※インタビュー / ナッツ山本(なっつやまもと)
公営競技の実況に憧れ、一念発起し脱サラ。2022年別府競輪と飯塚オートレースの実況でデビューを果たすことになった期待の新星。
まだデビューから間もないが、競輪中継の司会も経験し徐々に活躍の場を広げつつある。星の観測と手品が趣味。

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※写真提供:株式会社スポーツニッポン新聞社

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