未来の近畿を先頭で引っ張る|寺崎 浩平選手
2025年09月01日
ついにGIのタイトルを獲得した寺崎浩平選手(福井・117期)。
これまで近畿勢の先頭で積み重ねてきたその走りが、今回ついに報われました。
決勝で番手を回ると決まった時の想いは。そして今後の目標は。様々なお話をうかがいました。
—オールスター競輪(GI)優勝おめでとうございます。
寺崎:ありがとうございます。
—優勝直後は実感がないというようなお話もされていましたが、1週間経っていかがですか。
寺崎:優勝の実感は湧きました。でも今はもう先を見据えています。地元での共同通信社杯(GII)もありますしレースは続くので、それに向けてしっかりトレーニングをしなきゃな、と取り組んでいるところです。
—優勝してから、周りからの祝福はいかがでしたか。
寺崎:たくさんの人におめでとうって言ってもらえて嬉しいですし、ちゃんと近畿でやってきたことが認められた嬉しさもありました。
自分がやってきたことが間違いじゃなかった、っていうことを実感しました。
—今回のオールスターに関してはファン投票15位でした。年々順位も上がって、今回はオリオン賞からのスタートでした。ファンからの評価はどう感じていらっしゃいましたか。
寺崎:やっぱりそれは嬉しかったです。ただ更に上を目指して、もっとファンに認められるような走りをしていきたいと感じましたね。
—今回、最初の2走は大きな着が続き、3走目からは1着を並べました。何か開催中に修正できた部分があったのでしょうか。
寺崎:もともと僕はナイターが得意じゃないんです。それでちょっと函館への移動の疲れもあって、最初の2走は思ったような走りができなかったんですけど、3走目からはその部分が整ってきました。あとは最初の2走と違って3走目はそこで負けちゃうと勝ち上がれない番組だったので、そういう意味でも3走目は気持ちが更に入りました。
—となると状態自体は入る前から問題はなかったんですね。
寺崎:はい、仕上がりとしてはすごく良かったと思います。
—準決勝を終えて近畿勢が4人勝ち上がりを決めました。改めて並びはどのように決まったんでしょうか。
寺崎:準決勝を勝ち上がった時に脇本さん(脇本雄太選手・福井94期)が「番手を回れ」って言ってくださって。その後古性さん(古性優作選手・大阪100期)も同じことを言ってくださいました。話す前は自分が前で頑張るという気持ちだったんですけど、そういう風に言ってもらえたことで番手を回ろうっていう気持ちになりました。
—仮に脇本選手から番手を回れと言われなかった場合、自分から「番手を回らせてください」ということを言うつもりはなかったんでしょうか。
寺崎:はい、それはなかったです。実は高松宮記念杯競輪(GI)の時も脇本さんが番手を回れって言ってくださったんですけど、その時は断ったんです。
—おお、その時もそういうお話があったのですね。ではその時は断って今回は受け入れたという判断には、どのような気持ちの違いがあったのでしょうか。
寺崎:うーん...これはなんと言ったらいいのか凄く難しいのですが、前回の時と脇本さんの真剣度合いというか、脇本さんの圧というかなんというか、そういうものが違う気がしましたね。今回言われるのが2回目で、「今回はお前が獲る番だぞ」という感じが、脇本さんから伝わってきたのもありました。今まで決勝でやってきたことが認められたなって僕は思いましたし、そのチャンスをものにしたいと感じたんです。
—寺崎選手自身の中では、近畿は脇本選手や古性選手をはじめ層が厚い中で、どこかで「そろそろ自分もGIを」という気持ちはありましたか。
寺崎:やっぱりGIを獲りたいという気持ちはずっとありましたし、自分の後ろにつく人が一番強いので、そこを振り切らなきゃって思いもありました。
その中で自分のレースをして、いざ勝てるかってなるとすごく難しいですし、葛藤もあったりはしました。
—やはり理想としては自力で戦っての優勝という感じではあったのですね。
寺崎:そうですね。理想は自力で勝ちたいですし、勝っていけるような選手にならないといけないと思っています。
—ただ今回はそういう経緯があっての番手戦となったわけですね。番手回りが決まってからの精神状態はどうでしたか。
寺崎:思ったよりもすんなりとリラックスできていましたね。先頭でやるときの方が失敗できないというか、後ろに脇本さんや古性さんが付いているので、自分のミスで失敗できない緊張感があります。今回は意外と冷静でした。もちろん違う緊張感はありましたけど、もう腹を括ったという感じです。
—その決勝戦は古性選手がS取りをしました。近畿勢の作戦としては、前からのプランだったんですか。
寺崎:前のパターンもあったのですが、元々は中団になる予定だったんです。でもどの並びでも脇本さんが先手を取って仕掛ける作戦ではあったので、僕はそれを落ち着いて見ていました。
—結果的に前が取れてからの脇本選手のツッパリ先行となりました。後ろに付いていてどう感じましたか。
寺崎:もう赤板から感じたことないようなスピードでした。独特のピッチでどんどん踏み上がっていく感じで、どこまで踏み上がっていくんだろうと思いましたね。
—今までにない経験だったのですね。
寺崎:はい。練習を一緒にして後ろに付かせてもらうこともあるのですが、その時とレースとでは全然違いました。本当にすごいピッチだなと。
—その脇本選手の気持ちに応えてバックでは自力に転じました。そこからゴールにかけてはどんな気持ちで走りましたか。
寺崎:残り2周から全然緩むところがなかったので脚はきつかったですし、直線も物凄く長く感じました。
ゴールした瞬間はホッとしたのが一番強かったです。GIを獲れた、というよりもホッとですね。近畿の番手を任されてそこでしっかり決められた安心感もありました。
—脇本選手とゴール後、肩を組むシーンもありました。その時はどんな言葉を。
寺崎:いや~もう覚えてないですね。笑 でもとにかく僕が脇本さんに「ありがとうございます!」ってのを、めちゃくちゃ伝えました。
敢闘門で古性さんからもおめでとう、と言ってもらえましたし、南さん(南修二選手・大阪88期)も含めてのワンツースリーで、近畿としてベストな走りができたと思います。
—表彰式の時では函館のファンから寺崎コールも起きていました。その光景を目にしてどうでしたか。
寺崎:すごく嬉しいですし、こんなに応援してもらえるんだ、って本当に嬉しかったです。
—それはやっぱり今まで寺崎選手が近畿の先頭で頑張ってきたからこそだと思います。
寺崎:今までの自分の頑張りを認めてもらえたんだなと感じましたね。
—その後は近畿勢での胴上げもありました。いかがでしたか。
寺崎:いつも僕は胴上げする側なので初めてでしたね。笑
こんなに上がるんだって思いました。体感的には思った以上にかなり高く上がった気がしてちょっと怖かったですね。
—寺崎選手といえば昨年はGIの決勝では大きな着が続いていた中で、今年に入ってはGIの表彰台にも乗っていました。どんなところに目標を置いていたんでしょうか。
寺崎:やはりGIを獲得することが目標でしたね。昨年末くらいから良い流れのまま今年に入って結果もついてきて自信もありましたし、GIの制覇を狙っていました。
毎回獲るぞ、という気持ちで臨んでいましたね。
—その中での制覇ですが、意外にもGIIIの制覇がないんですね。初めてのグレード優勝がGIというのはいかがですか。
寺崎:今までGIIIや記念を獲ったこともなかったですし、自分としてもまずは記念を獲りたいという気持ちだったので、それよりも先にGIを勝つことができてびっくりしています。あと今回獲れなかったら、もう二度と獲れないだろうという気持ちでもいました。このワンチャンスをものに出来て本当に良かったなと思います。
—そのチャンスが来た時にものに出来る自信はあったんですよね。
寺崎:はい、普段からしっかり練習をしている自負はありましたし、脇本さんや古性さんからも練習でめちゃくちゃ強いと言われていました。
練習の力を出せていないとずっと言われてきていて、まだ全部は出せてないですが、今は8割ぐらいまで出せるようになったのも大きいですね。
—あとは寺崎選手は約2年前に競技を引退されました。それから競輪への向き合い方はなにか変わりましたか。
寺崎:めちゃめちゃ変わりました。セッティングやフォーム、乗り方まで全部変えました。その中で去年ぐらいから自分の中で「これだ」というのが見つかったんです。
やっぱり「競輪」は捲りだけでも先行だけでも勝てないですし、そこをうまくミックスしながら、位置を取る時は取らないといけないし、やっぱり古性さんのように何でもできるようにならないと、今の競輪は厳しいと思うのでそのあたりを意識するようになりました。
—今後はタイトルホルダーとしてファンから見られます。
寺崎:タイトルホルダーだからと言って、僕がやることは何も変わらないですね。一戦一戦、目の前のレースでしっかりと内容が伴った良いレースをして、結果を出せるようにすることです。次は自力でもGIを獲りたいですし、挑戦者というのは変わらないので、自分がしっかりとレースをしていればまたチャンスが巡ってくると思うので、その時にまたそのチャンスを掴めるようにしていきたいです。
—グランプリ出場も決まりましたがいかがですか。
寺崎:まだ全然そこに関しては何も考えていません。
まずは地元のビッグレースもありますし、今後もGIは続くので、まずはしっかりと目の前のレースに集中します。
—今後近畿勢の中ではどのような存在を目指したいですか。
寺崎:やっぱり近畿といえば脇本選手と古性選手なので、その間に割って入る存在になりたいですし、近畿を先頭で引っ張っていける選手になりたいです。
—今後も期待しています。では最後に、オッズパーク会員の皆様へメッセージをお願いします。
寺崎:オールスターは皆さんの投票のおかげで、オリオン賞に乗せていただきありがとうございます。そのおかげで優勝まですることができました。
本当にありがとうございました。今後も応援よろしくお願いします。
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※インタビュー / ナッツ山本(なっつやまもと)
公営競技の実況に憧れ、一念発起し脱サラ。2022年別府競輪と飯塚オートレースの実況でデビューを果たすことになった期待の新星。
まだデビューから間もないが、競輪中継の司会も経験し徐々に活躍の場を広げつつある。星の観測と手品が趣味。
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※写真提供:株式会社スポーツニッポン新聞社
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