2021年11月に落車をし怪我で休養。その後、妊娠出産と続き長期離脱をしていた吉川麻季選手。2年4ヶ月ほどの休みから今年の3月に復帰。そして、9月にはデビュー初優勝を飾りました!怪我を乗り越え、ママさんレーサーになり、念願の初優勝!振り返って頂きました。
(取材日:2024年10月6日)
AKI:初優勝おめでとうございます!初優勝を決めてお気持ちいかがですか?
吉川:ありがとうございます!気持ちはあんまり変わらないですね。終わってもすぐまた始まるので。この前、オートレース船橋でトークショーイベントをして優勝した実感はだいぶ湧いたんですけど、ハンデが重くなってからレースは勝てんし対応していかんといけないので嬉しいというのは一瞬でした。スタートも遅いし次のこと考えんと厳しいですよね、やっぱり。優勝した時も嬉しいよりもホッとしたという方が大きかったですね。優勝戦前はいろんな選手に「今日しかないぞ!」とプレッシャーもかけられて(笑)なのでホッとしたが1番でしたね。
AKI:優勝からすぐに次へ切り替えてという感じだったんですね。
吉川:そうですね。優勝したあと少し余韻に浸れましたがその次のミッドでは勝てないし、逃げで優勝出来たけど捌きとなるとまだまだで覚えていかないといけんし、なんせスタートが遅いのですぐに次を考えてという感じでした。消音マフラーにも慣れんとなのに対応能力が低すぎて。捌きもだけど整備も覚えんといけんしやらないといけないことが沢山ありすぎます。
AKI:ただ、その逃げもしっかりとした逃げでした。優勝戦の節を振り返ると車の状態はいかがでしたか?
吉川:エンジンを扱ったのは電気位置くらい。初日から乗った感じは良かったです。なので、逆にいじらん方がいいかもしれんと思ってあまり扱いませんでした。タイヤも良かったのが大きいですね。ただ、結果は良かったんですが今後のレースを見据えたらやらなきゃいけんかったですね。あとは、フレームを圭一郎さん(浜松32期:鈴木圭一郎選手、吉川麻季選手の旦那様)にもらっていて。凄く乗りやすかったです。前検日が雨で晴れの練習ができてなかったんですが初日から一着が取れて「これ、フレームがいいんだ!」となりました。圭一郎さんには「変なフレームでレースしてたのが逆に鍛錬になってたんやろうね。」と言われました(笑)この鈍感なところも反省して次に活かしたいところですね。
AKI:プレッシャーがある中、良い状態で臨めた優勝戦、緊張はしましたか?
吉川:緊張はなかったんですよね。ロッカーでは緊張しすぎくらいだったんですが試走行ったら吹っ切れちゃって。「もうしょうがない、やるしかない!」と思えました。周りがプレッシャーをかけてくれたのが逆に良かったのかもしれません。なので、スタートラインに立つ時も緊張はありませんでした。
AKI:スタートタイミング0.04でしたが振り返っていかがですか?
吉川:ね!びっくりしました!!けど、今はほとんど遠征がないから飯塚の時計に慣れているというか、ここっていうのがだいぶ分かっていたんだと思います。なので、別にギリギリを狙ったつもりじゃなくて、まだいけるな~であのタイミングになってたという感じ。なので、普通に切って後から見たらあのタイミングで。怖い怖い!という感じでした(笑)
AKI:ただ、しっかり入ってますし、そこからの見事な逃げでした!
吉川:あの節は全てが良いようになっとったなぁという感じでしたね。6周回逃げれると思ってなかったので力も入らず楽に逃げてたんですけど、3周目くらいで抜かれないから意識しちゃって。「まだ来んぞ、優勝あるかも!?」とか思ってきちゃって4周目以降から力が入ってしまいました。滑らしたりしちゃいました。リプレイ見たら最後は久門さん(飯塚26期:久門徹選手)も来ててびっくり!危なかったです。
AKI:初のウイニングラン、表彰式はいかがでしたか?
吉川:あれはとても嬉しいし、実感が沸きますね。オートレース歴は長くないんですが、養成所の試験を受ける前に1年間くらい飯塚オートに通い詰めていて。あのウイニングランも見ていましたし、走路を自分が走って内から見る景色を見て「自分優勝したんだ!」と思いましたね。オートレース人生で優勝できると思ってなかったです。圭一郎さんにもできると思ってなかったと言われたんですが、優勝した後のウイニングランや表彰式の景色は見てほしいと言われていました。あれを体験すると「また優勝したいな」と思うので頑張れると。あの景色や体験は凄く良かったです。ここまで事故も起こしてたので「復帰して良いのかなぁ」と思う時期もあったし、練習参加も長かったし、一緒に走る方に迷惑かけたくないという思いが強くて。復帰してからも8着続きで、親もこのままクビになるかもと思ってたくらいなので、1着とった日には親もびっくりしてました。もちろん自分も優勝したい気持ちはあるけど、オートレースの世界の厳しさは分かってるつもりだったのでまさか優勝してウイニングラン、表彰式が出来るなんて思ってもいませんでした。しかも地元でってのがまた嬉しかったですね。
AKI:圭一郎さんも優勝できないと言いながら喜んでたんじゃないですか?
吉川:喜ぶ...あの人喜んでたんですかね?(笑)ポーカーフェイスで分からないですけど「本当に優勝すると思わなかった!」って感じで特に何もないです。むしろ私がフレームとかのお礼にサングラス買ってあげました。そんな感じです(笑)
AKI:事故の話も上がりましたが、その後お子さんも出来て長期休養になりましたよね。
吉川:そうなんです。周りの方も心配してくれていて、ママさんレーサーも飯塚にはいないし実例がないからどうなるのかな?と思ってたんですけど、案外子供が生まれてから特に変わらなかったですね。ただ、体力がないからそこを戻すのがキツくて、レースも6周回が大変でした。10ヶ月お腹に子供がいる時は力を入れないように生活していたのがオートレースはお腹とかに力を入れないといけなくて。なので、練習参加のうちにトレーニングに行って、今は体力が戻ってきました。なので、岡谷さん(浜松32期:岡谷美由紀選手、吉川選手同様にママさんレーサーで復帰後優勝も飾っています。)が凄すぎて!岡谷さんの存在はとても大きかったですね。岡谷さんの優勝を見て「ママでも優勝できるんや!!」って思って凄く刺激をもらいました。私も頑張ろうと。岡谷さんとは連絡を取り合ったり、岡谷さんに会いに行ったりしました。その時に堂免ちゃん(飯塚33期:堂免沙弥元選手)も一緒にご飯食べたり。人間性が好きなので、憧れみたいな感じですね。岡谷さんも復帰して優勝して"私も頑張らないかん!"と思ました。岡谷さんの存在は大きいですね。優勝した時も「母は強しだね!」と連絡頂きました(笑)優勝もですがそういう言葉だったり周りの方が喜んでくれたのが嬉しかったですね。
AKI:ママさんレーサー躍動!続きますね!
吉川:嬉しいですね、そう思ってもらえるのは。岡谷さんのおかげですね。JKAには特に何も言ってはないんですが遠征が入っていなくて配慮をしてもらってるなと思っています。ただ、今後は遠征も増やしていきたいなと思います。そこは、圭一郎さんとなるべく斡旋が被らないように調整しながら、あとは親ですね。どうしても裏開催走っちゃうとかぶってしまうので、とにかく周りに協力してやらせてもらってます。子供預けてきてる分"頑張ろう!"と思えます。頑張らないと!という気持ちを持ってレース場に入れています。本当に周りに感謝ですね。
AKI:子供さんはオートレースのことは分かってきてるんですか?
吉川:最近分かってきたみたいですね。圭一郎さんが帰ってこない時は「けいちゃんブンブン?」と言うようになりました。おらんくなったらブンブンに行ってるって分かるようになってきたみたいです。けど、この前友達が泊まりきた時に友達が帰ったあと「ブンブン?」って言ってたのでいなくなったら"ブンブン"になっちゃうみたいです(笑)圭一郎さんも子供のことしっかり見てくれて、仕事がない時は2人で出かけたり、私も自由の時間を作ってもらったりしてそれぞれ楽しんでます。圭一郎さんが子供連れてカラオケ行ったりゲーセン行ったりイベント連れて行ったりしてるみたい(笑)安心して預けれますし良い関係なのかもしれない。子供産んでからほんとあっという間でかけぬけてます。とても楽しいです!
AKI:女子レーサーの中でもママさんレーサー2例目となって、女子選手の環境がどんどん良くなると良いですよね。
吉川:そうなんですよね。やっぱり大きなことだし離れることも考えてしまうと思うんです。ただ、自分は出産で辞めることは考えませんでした。スタート事故した時はすぐ辞めることを考えていました。スタート後の降り癖が直らなくて、直したくても器用にできなくて。それで初めて人を落として不成立まで起こしてしまって。ファンの方や施行者にも迷惑かけちゃって色々考えていたんです。けど、子供産むときは考えてなくって。むしろ辞めたいと思わなかったんです。「この子に誇れるのはオートレースなのかもしれん。」と思うようになりました。子供ができてもスタート事故のことで復帰をやめることを考えることはあったんですがここで辞めたら逃げになると思ったんです。「逃げることは簡単だし、結婚して子供産んで辞めます。」とありがちなことだと思うんですが自分は辞めたくなかった。この子に誇れるものはオートレースなのかもと覚悟を決めてからはブレることはなかったです。
AKI:選手を続けて初優勝まで決めて振り返るとどうですか?
吉川:初めて選手を辞めなくて良かったと思いました。続けてたらチャンスはあるんだなと。それを手にできるとは正直思ってはいなかったけど、チャンスは掴めるんだなぁと感じました。自分はいつも良いように物事を考えれるタイプじゃなくてすぐ先のこと考えちゃうから、ハンデもまだまだもらってるしとか、終わってもすぐ始まっちゃうと思っちゃうんです。けど、今回のことは岡谷さんのおかげで"ママさんレーサーでも優勝できる"と示してくれて自分も刺激をもらって頑張ろうと思えたので、自分の初優勝で子供を産んでも選手は続けれるし頑張ろうと思ってもらえたら良いなと思っています。結婚して子供産んで復帰してという流れを考えやすい環境にできたらいいと思っています。岡谷さんもバイク競技はされてない中、競技素人でも復帰して優勝できるんだよというのを下の子たちにも分かってもらえたら良いなと思います。結婚してる選手というのも割合は少ないと思うし、まだ仕事をやりやすくできると思うんです。この業界で女子選手がもっとやりやすい環境を作っていけたらと考えてます。
AKI:色々な思いを持って今があるということですが、レースについてはどうですか?
吉川:スタート事故のことをずっと忘れることはなかったですし、毎晩思い出してすみませんと思っています。それが今もスタートが上手く切れない要因ですね。尾を引いてます。今は気持ち的にはだいぶ良くはなりましたが練習参加が始まった時はずっと引っかかってましたし、周りも「吉川大丈夫か?」と思ってたと思います。少しずつは良くなっていると思いますがまだまだムラですし、もっと買いやすい選手になりたいです。なので、課題はスタート、捌きと山積みなんですが前を向いて頑張っていこうと思っています。ハンデも下がって厳しいしみんな凄いです。頑張ります。
AKI:目標は考えてますか?
吉川:最重ハンデの10m前までいきたいんです。そこに関して圭一郎さんが厳しいんですよ。圭一郎さんは2級車で10m前まで行ってるから「10mは絶対いくもの、10m前からが勝負」と思ってるんです。なので私はまだスタートラインにも立てていないんですよ(泣)なので、頑張って10mまでいかないと。厳しいですが目標は口に出したほうが良いと言うんで言っていきたいです。
AKI:最後にオッズパーク会員の皆様にメッセージをお願いします。
吉川:いつも試走が出てスタート遅れてしまってご迷惑をおかけしてすみません。もっと車券に貢献できる選手になれるよう頑張るのでこれからも見ていただけると嬉しいです。
(写真は飯塚オートSNSより)
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