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加瀬 加奈子選手

2024年10月04日

今年は5月に小倉、7月に地元の弥彦で優勝を飾るなど活躍を続けている加瀬加奈子選手(新潟102期)。ガールズケイリンを長年けん引してきたトップ選手が、今はどういう気持ちでレースを走っているのかお話を伺いました。

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山口みのり:まずは今年の成績を振り返っていきます。5月には加瀬選手の誕生日に優勝を決めましたね。

加瀬加奈子選手:はい、小倉ですね。

山口:決勝戦は優勝は意識されていましたか?

加瀬:いえ。出産をしてからは無事にゴールすることを一番に考えて走っています。復帰をする時に家族と話し合って「無事ゴールをすること=優勝」という共通認識でいます。だから基本の戦法は先行、その結果で着が良かったらラッキーという気持ちで走っています。
こう言うとお客さんに怒られるかもしれませんが、勝つためにも先行が有利だと思ってやっています。最近は私が先行体制に入ると、上を仕掛けてくる子もいるのでその時は2番手から組み立てます。
小倉のときは太田美穂ちゃん(太田美穂選手・三重112期)が仕掛けてきたので「よし!」と思って飛びついて差せました。
弥彦では吉村早耶香ちゃん(吉村早耶香選手・静岡112期)が仕掛けてきたので、それを追いかける形の優勝でした。だから「自分で先行してはもう勝てなくなったのかな」という悲しみはありますね。

山口:そんなことはないのでは?弥彦は予選2では逃げ切りでした。

加瀬:予選ではまだいけるのかなと思っているんですけど、決勝は脚が違うと感じることもあります。55点くらいの選手が2~3人いて、私が前で先行体制に入っていても更に仕掛けられてしまうと厳しくなりますね。

山口:そこから追って、追い込んでというレースもありますね。

加瀬:そうですね。最近はそういうレースもありますね。私は基本的に自力の練習しかしていないんです。自分で600mを駆けるとかそういう練習がメインなので、前に人がいたら追いかける気持ちがあるから良い目標になって前の選手を結果として追い込めるんでしょうね。

山口:前に人がいて嫌だなという気持ちよりも、よし抜いてやろうという感じなんですね。

加瀬:はい。「待ってくれー!」から「追いついた、よし!」って感じです。

山口:そうなんですね(笑)
小倉では高橋梨香選手(埼玉106期)が持つガールズケイリンの最年長優勝記録を更新しました。2024年8月には高橋選手が大垣で優勝して更新と、お二人で更新を続けています。高橋選手についてはどう感じていますか?

加瀬:高橋梨香さんはトライアスロンでは超一流の方です。私もトライアスロンをしていましたが、同じ舞台には立てないくらい上で、世界とも戦っていた方だったので面識はありませんでした。だから「そりゃ強いよな」と思います(笑)
トライアスロンは競技タイムが2時間半くらいの世界です。そこから3分半でレースが終わるガールズケイリンに転向しました。しかもトライアスロンは自分でお金を払ってレースに参加していたのに、ガールズケイリンは7着でも賞金がもらえます。本当に良い職業です。

山口:ここまでお話を伺って、以前にインタビューをさせていただいた時(2020年6月)は産休から復帰されてまもない時でしたが、そこから4年経っても同じ思いでレースを走っているんだなと思いました。

加瀬:そうですね。基本は無事に、という感じです。

山口:でもこの4年で結果も出していますよね。優勝もですがGIの出場、更には1着もありました。

加瀬:はい。でもそれが良いことでは必ずしもないんです。ガールズケイリンは男子のように級班が分かれていないから若い子たちがどんどん出てくるけど、40歳を超えて出産をした私も同じようにあっせんされ一緒にレースを走ります。
人間なので体力的なことを比べると、絶対若い子の方が強いし元気です。大袈裟ですが20歳と80歳が一緒によーいドンと走ったら、20歳が勝つに決まってます。だからガールズケリインでも「44歳の私が先行して逃げ切るのはおかしいよ」と思っちゃうんですよ。若い子に「あんたたちもっと頑張んなさい」と言いたいです。

山口:後輩の選手達との付き合い方はいかがですか?

加瀬:打鐘から全力で仕掛けて、例え7着だったとしても私は「それでいい」と言っています。「力はいずれ付いてくるから」と。

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山口:先行で挑んでくる選手ということですね。

加瀬:はい。今年の新人で言うと山口の磯村光舞(いそむら・ひらり)ちゃん(磯村光舞選手・山口126期)に言いました。弥彦で私が前にいて残り1周では思い切り仕掛けてきていました。「それで良い、いずれ着はついてくるから。後ろでゴチャゴチャして7番手になっているよりは仕掛ける方が力がつく」とアドバイスしました。

山口:以前、刈込奈那選手(千葉120期)にインタビューしたときに「加瀬選手を目標にしていたので、アドバイスをもらえるのがありがたい。レース以外の生活面でも一緒に過ごしていた」と伺いました。

加瀬:そうですね。刈込は風呂でもすごい見てくるんです(笑)そこは見ないでくれよ、と思うんですけどね。

山口:加瀬選手の動向ということですか?(笑)

加瀬:そうです。増田せっちゃん(増田夕華選手・岐阜118期)もよく私のこと見てるんです。あ、そうだ。冬にハプニングがあったんですよ。追加で荷物が宅配では届かないと言われ輪行バッグで参加しました。荷物を極力少なくするために、下着は洗って乾燥させて履いていたら、同期の増茂(増茂るるこ選手・東京102期)は「加瀬さん同じ下着で汚くない!?」とハッキリ言ってきたのに、増田せっちゃんは尊敬のまなざしで見てくれてたので、そこは見ないでくれよと思いました(笑)
「1枚を綺麗に洗って履いてるわ!」と増茂には言いましたけど、ちゃんとわかってくれていたかな......と心配になりました(笑)

山口:いろんな視線を感じるんですね(笑)

加瀬:彼女たちの師匠が「尊敬する選手の生活面もしっかり見て来いよ」って言ってるのかなと思っているんです。

山口:なるほど、自分とは生活面からどう違うのか、ですか。

加瀬:そうですね。例えば食堂のおばちゃんに挨拶しているかどうか、とかも見ているのかなと。私は挨拶は基本だと思うので誰でもするようにしています。

山口:加瀬選手は変わっていないかもしれませんが、視線を感じることで意識しますよね。そうやって慕ってくれている選手がいるというのはいかがですか?

加瀬:私を慕ってくれているかはわかりませんが、でも若い子が活躍してくれないとガールズケイリンが長く続かないです。以前の女子競輪は選手が少なくなって終わってしまいました。一人一人が大切だと思います。

山口:加瀬選手はお弟子さんもいます。男子の選手を弟子にとるというのはどういう経緯があったんでしょうか?

加瀬:本人たちが希望した選手に弟子入りに行くという仕組みなんです。121期の3人は私が産休中にずっと一緒に練習していた子たちなんですよ。「諸橋さん(諸橋愛選手・新潟79期)とか鈴木庸之さん(鈴木庸之選手・新潟92期)とか男子の選手に弟子入りにいきなよ」って言ったら「あんまり話したことがないから」って言われました。彼らはアマチュアで毎日練習してる。私は産休だからずっと練習している(笑)だからだと思います。
今は彼らには全くアドバイスはできません。私も私のレースがあるし、そもそも男子のレースはガールズとは全く違うのでわからないから、今は野放しです。

山口:でもそれぞれ「加瀬選手の弟子」ということでいろんな方から戦法の面では期待されている部分も大きい気がします。加瀬選手は戦法についても全く言わないんですね。

加瀬:はい。記者さんから「お弟子さんS級上がりましたね」とかそういうことくらいですね。滝本幸正(滝本幸正選手・新潟121期)は今期からS級で、苦戦してますが頑張っていますね。治田知也(治田知也選手・新潟121期)と小榑佑弥(小榑佑弥選手・新潟121期)もその背中を追って強くなって欲しいけど、でも上に行くことだけが重要ではないです。仕事として競輪を頑張れば良いと思っています。

山口:今の目標は、先ほど仰っていたように無事に走り切ることですか?

加瀬:そうですね。まずは娘が優先です。もし娘に何かなったらレースを欠場しないといけません。娘のために無事に走って早く帰る。「家に帰るまでが遠足」ではないけど「家に帰るまでが仕事」と思っています。

山口:以前伺った時は、その日に帰れないミッドナイトや遠征のレースは欠場していたと仰っていましたが、今は娘さんも大きくなって、参加はできていますか?

加瀬:はい。ミッドナイトも参加していますが、毎月のように入っているのでそれはちょっと負担です。ガールズ選手でも全くミッドナイトのあっせんがない選手もいるみたいなんですよ。

山口:そうなんですね。

加瀬:ある選手はここ数年で3回くらいしかミッドナイトを走ってないと聞いたんです。私は毎月あるから、その辺りはちょっと考慮してくれると助かります。要望はあげているんですけどね。

山口:お母さん選手もたくさんいますもんね。先日、同期の大和久保美選手(青森102期)も復帰されていましたね。

加瀬:8月の青森で一緒なので大和と話せるのが楽しみです。2人目の子を出産して復帰するのは本当にすごいと思います。

山口:昨年からGIが新設されました。1期生としてデビューした加瀬選手は近年の流れはどう感じますか?

加瀬:素晴らしいとは思います。ただオールガールズクラシック(GI)とかはGI以外のトーナメントがA~Cに分かれますよね。それをするなら級班を分けた方が良いのではと思っています。男子みたいにA級3班からスタートして「A級2班で戦ってみたい」というところから、「次はS級へ」とどんどん上を目指せる貪欲さが出てくると思うんです。
女子にはそれがないので、デビューしていきなり男子でいうS級S班の選手と戦わないといけません。下位の選手たちからしたら、それは厳しいよと私は思います。同期で400勝している選手もいれば、10勝もできずに引退する選手もいる。勝ち星をあげるというのはプロ選手のやりがいを感じる大切なことだと思うし、勝てたらどんどん次へと自信とやる気にも繋がります。勝てないで終わる選手を見るとモヤモヤしますね。

山口:級班を分けることで、それが緩和される可能性は大きいんでしょうか。

加瀬:実際に男子は、50代の選手で、ずっとA級3班で走っていても何百勝と上げている選手がいます。その舞台では勝利ができるというのは大切だと思います。

山口:今の話を伺っていると、これまでも定期的に要望を言っているんですね。

加瀬:そうですね。言うようにはしています。

山口:1期からずっと見てきて、良くなった部分はどういうところですか?

加瀬:施設が綺麗になってきているのは嬉しいです。後はガールズの集合時間が遅くなったのは本当にありがたいです。今までは「この時間までに競輪場へ入る」という時間がガールズが早くて、男子は遅かったんです。それがこの夏から逆になりガールズの方が遅くなりました。齊藤由紀ちゃん(齊藤由紀選手・愛知110期)も「ありがたい」と言っていたのを記事で見ました。

山口:今までは集合時間が早いと、遠征なら前の日に移動しないと間に合わない、子供を身内や保育園に預けられないからレースにいけないという時もあったように聞きます。その変更はお母さん選手には良い変化ですね。

加瀬:はい。すごくありがたいです。

山口:ありがとうございます。では少しレースのお話も伺います。先ほどは基本戦法は先行と仰っていましたが、Sからの先行が多いですか?

加瀬:そうですね。大師匠に「基本は前を取ってからの先行」と言われていました。「前を取って自分のタイミングで仕掛けるのが加瀬にとって良い戦法なんじゃないか」と言われてから意識して走っています。そこで私よりも先に仕掛けてくる選手がいたら、それはうまく流れを見ていきたいです。

山口:挑んでくる選手がいる方が燃えますか?

加瀬:そうですね。もし私がもっと若い選手だとして、加瀬加奈子と戦うとしたら「あんなおばさんに勝たせたくないな」と思う気がします。「あのおばさんが逃げ切って1着とるのは嫌だな」と。もし若い子の立場なら私はそう思っちゃうから、「思い切っていけば自分は7着になるかもしれないけど、そのかわりに加瀬さんも潰してやる」くらいの考えで打鐘でおさえにいくのが、私は当たり前と思っちゃいます。

山口:全員が加瀬選手に挑んできて欲しいくらい?

加瀬:そうです。そうじゃないとだめじゃない?と思っちゃいます。例えば私の後ろをマークして、私を利用して差してやろうと思っている19歳の子だとしたら、私は疑問に思う。
でもその子にもファンがいるし、お金もかかっている。それはそれで良いのかもしれませんけどね。私自身がそういう走りが嫌なだけです。
可愛くて人気の選手だけが良い訳ではないと思うんです。じゃあ整形して可愛くなったら弱くても良いのか?そうじゃないよねってなっちゃいます。

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山口:プロとして走りで魅せて欲しいというのも一ファンとしての思いです。

加瀬:可愛い子が打鐘から先行して逃げ切ったら「マジですごいね」となると思うんです。そんなレースも見てみたいけど、そうじゃないことが多い。逆に先行してる子が批判を受けたりしているのを見るのは悲しいです。

山口:では加瀬選手が注目している選手はどなたですか?

加瀬:まず刈込は真っ先に思い浮かびます。後は東京の石井貴子(石井貴子選手・東京104期)。太田美穂ちゃんも良い走りですよね。人をあてにしないで自力で勝つ選手が私は好きです。女子オールスター競輪の佐藤水菜(佐藤水菜選手・神奈川114期)も、あの大舞台で先行して他をねじ伏せるのは良いなと思いました。そういう走りを貫く選手は好きですね。

山口:ありがとうございます。それでは最後にオッズパーク会員の皆様へメッセージをお願いします。

加瀬:私は基本は先行で戦っています。8月の富山では宇野どん(宇野紅音選手・岐阜124期「いつも宇野どんと呼んでいる」そうです)にたたかれて引いちゃいました。ファンの方には「並ばれて引くのかよ」と思われるかもしれないけど、危険な走りをするよりは無事にゴールをすることが優勝だと思っています。基本は自力で戦うけど、なによりも無事にゴールを目指して走っています。ファンの皆さんもそれをふまえて車券を買っていただけると助かります。

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※インタビュー / 山口みのり
三重県松阪市出身。フリーアナウンサー/ナレーター。
各競輪場で中継司会やリポーター、イベント司会などを担当。

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※写真提供:公益財団法人 JKA

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