山崎 芳仁選手
2024年10月24日
今回は去る8月17日、平塚競輪場で行われました<第67回オールスター競輪(GI)>にて通算500勝を達成された山崎芳仁選手(福島88期)にお話をうかがいました。大舞台で果たした大きな節目の他に、大ギア志向へのきっかけなどもお聞きしました。
大村篤史:通算500勝の達成おめでとうございます!
山崎:ありがとうございます!500勝というのは大きな節目でなかなか出来ることではないと思うと、大きな怪我もなくやってこれたこと。何よりずっと支えてくれた家族への感謝、そして競走で一緒に走ったラインのおかげです。
大村:去年22勝を上げ、年初から今年中に大きな節目が期待されました。
山崎:自分自身はまったく意識していなかったですね。いつも目の前の一戦に向き合ってきましたし、一勝々々の積み重ねですね。
大村:当日に連携した佐々木悠葵選手(群馬115期)はどうでしたか。
山崎:佐々木君の走りは以前は外だけでなくて内へ行ったりもしてましたが、ここ最近は縦に踏んだ脚が目立っていた印象でした。自分の500勝については・・・どうかな?レース前に話してなかったんで彼も意識はしてなかったんじゃないかな。
大村:当日のレースはまず後方から阿部将大選手(大分117期)がレースを動かしました。
山崎:佐々木君の作戦は初手は前か中団からレースを始めて、(別線が)斬ったところを叩いて早めの捲りかカマシで仕掛ける。そんな話でした。
阿部君が斬った後に岩本君(岩本俊介選手・千葉94期)が来て小川君(小川真太郎選手・徳島107期)が追い上げて中団がもつれてましたね。佐々木君はバックを踏んですぐ仕掛けてくれたんですが踏み出しが強烈で自分はクチが空きました。
(最終)1コーナーで追い付いたときに伊藤君(伊藤旭選手・熊本117期)がインコースにいて車輪が掛かってました。軽く締めこんだんですがバックでもう一度見ると内をさらに上がってきました。その時に自分の前輪が佐々木君の後輪に差しこんだのでこのままだと外へ持っていかれちゃうので一度引っこ抜いて立て直して外を追込みました。
大村:見事500勝!そしてワンツーフィニッシュでした。
山崎:勝てたのはたまたまです。番手を守って二人で決められたことがなによりだし、最高です。
大村:ゴール後に右手でアピールしていましたね。
山崎:スタンドのファンから「山崎おめでとう!500勝おめでとう!」と声をかけてもらいました。これは大きな舞台で競輪場に来てくれて自分から買ってくれたお客様への礼儀といいますか、声援へのアクションとして応えました。
大村:今回の節目はGIでの達成ですが、これまでの節目の1着を振り返っても好メンバーでの対戦でした。
山崎:そうですね。節目の一戦で強い人たちと当たって勝てたのは思い返せばデカいのかなと思います。
大村:話は変わるのですが、山崎選手といえば大ギア(4倍超ギア)時代の先駆者です。ここからは当時のエピソードをうかがいます。まずは実戦に投入したきっかけは?
山崎:練習で重いギアを使うのはいろんな人がしていたと思うんですが、自分の場合は(きっかけは)単純に練習でギアを掛けてたときに後半のスピードが落ちなかったんです。このスピードを維持できるなら本番でもギアを掛けたまま逃げてもいいんじゃないか?使いこなせるならばやらない手はないんじゃないか?練習で使っているうちにそう考えるようになりました。
大村:ペダリングの違いや工夫されたことはなんですか?
山崎:3.54/57といった軽いギアは脚だけで回せるんですが、重いギアだと体重移動が必要になるのでそれを支えるしっかりした体幹が必要になりますね。
大村:踏みこなすための体づくりは?
山崎:あの時は新たに体を大きくしようとは思わなかったですね。軽いギアの回転数を維持して重いギアを回すイメージを作る。重心移動に意識を向けてペダルを踏み込めるように、脚力だけでなく体重でギアを回すようにしていきました。
大村:ヤンググランプリを当時の大ギア3.71で制した若手選手がさらに4倍の壁を超えてきた、超大ギアで押切るのはセンセーショナルだったと想像します。
山崎:函館のふるさとダービー、熊本の全日本選抜(GI)、ビッグレースで勝てましたからインパクトはあったでしょうね。
大村:そこから競輪界が大ギア志向に舵を切りました。それをどんな風に見ていましたか?
山崎:使えるんだったらみんな使いこなそうと考えるだろうし・・・。けど思ったよりも(4倍ギアを)使う人が増えたな、当たり前になっていったなと感じていました。
大村:2015年からギア倍数の上限規制がかかりました。事前に規制への流れといいますか予兆というのはありましたか?また規制はどのように受け止めましたか?
山崎:当時は指定されたギアの範囲でこれからもやっていくんだとだけしか思ってませんでしたね。自分たちは常に決められたルールの中で走っていくだけなので、規制というかルール変更には試行錯誤して、新たな挑戦へのきっかけにしましたね。
大村:規制直後は選手の皆さんは色々な取り組みをなさっていました。特にセッティングの面で変更があったと記憶しています。
山崎:自分の場合、4倍超のギアのときはシートの角度を5°半から6°で乗っていたんですけどそれだとスカスカしてしまうのでシート角を4°半から5°に寝かせてギアに対する当たりを出す。体重をかけるために前乗りにしていたものをギアを軽くさせた分だけ調整しました。
大村:ギア規制後では最初の特別競輪(静岡競輪場・全日本選抜(GI))を制して時代の変化に対応された後は戦法も自力から自在寄りへそして番手戦へと変化していますね。
山崎:88期の同期の仲間たちと当初から切磋琢磨しGIでも戦って、それから時間が経って後輩たちが出てきて番手で走るのも徐々になれてきました。
大村:番手戦が増えるにあたって気を払ったことは?
山崎:もともと自力一本でやっていたころから前と車間を切って走るのが得意だったんですが、番手戦となるとしっかり付いて位置を守ることが大事なので前との距離を詰めて走るのが当初は難しかったですね。普段の街道練習では前と半車輪ほど離して走るんですけど、それを前の後輪ギリギリまでタイヤを近づけて走る練習をしました。車間を空けないように空かないように走る練習に時間を割きました。
大村:大ギア時代にも作戦上の番手回り、北日本地区同士での連携はありましたが本格的な番手戦はいつごろからですか?
山崎:始めて他地区の選手に付いたのが41才でした。同期の小埜正義(小埜正義選手・千葉88期)の後ろを回りました。たまたま二人が決勝に乗って(注:2021年1月4日久留米FI決勝)、単騎同士の番組になりました。お互いに「(地区が)近いけどどうしますか?」って話になり、小埜は自分でやりたいと。その時の自分は他地区に付いたことはなかったんですが小埜は同期でなんだか他地区の選手と思えないというか・・・。
大村:同期のよしみ、絆ですね!
山崎:そうですね。なので同期になら付けてみようというのが最初でした。
但、一度でも他地区の後ろを回ったからには自分自身の中で『完全な自力とは言えなくなったな』という自覚が生まれました。同時にこれからは自力自在に走る、正攻法だけでない戦い方をやってみようと思いました。
大村:さきほど街道練習の話が出ましたが、山崎選手の練習スタイルは二勤一休。二日間を追い込んで一日休息のサイクルと記事で読みました。今でも同様でしょうか。
山崎:今はまばらになってしまいましたね。年齢とともに若いころのようにとことん追い込めなくなりました。そのまま2日練習して1日休むサイクルだとただの練習不足になってしまうから、今は4日続けたり一週間続けて練習してます。自分の体調に合わせて練習日程を考えています。
大村:現在、トレーニングで取り組んでいることは?
山崎:心拍を上げていく練習に重点を置いてるかな、高回転で下りをモガいたり軽いギアで登ったり。
大村:ウエイトトレーニングよりも実際に自転車に乗って行うのですか?
山崎:自分も過去にウエイトトレーニングはやったんですけど、どうにも体がロックしてしまうんですね。踏み方と合っていないようで効果がでなかったです。自分の身体、体調を見ながら取り組んでいます。
大村:練習と競走の合間のお休みの日や山崎選手のプライベートの時間の過ごし方はいかがですか?
山崎:趣味は昔からゴルフですね。家族や兄弟とごくごく親しい者で回ります。完全にリフレッシュの時間なので選手同士でってのはないなぁ。
大村:昨今のスピードレース化が著しい中、レースで気を付けていることは?
山崎:今は若手選手みんなスピードがあるし、競走の変化として自分たちのデビューしたころに比べてモガく距離が長くなりました。それでも番手戦であっても自分でやるときでも兎に角離れないことですね。
大村:今年はご子息(山崎歩夢選手・福島125期)がデビューされました。ご子息だけでなく若手選手の多くが山崎選手へ憧れを抱いているかと思います。ルーキーへ向けたメッセージはありますか?
山崎:そうですね。これから辛い時期があるかもしれませんが常に上を目指してトレーニングとケアを忘れずにGIの頂点を目指して頑張ってほしいです。
大村:今回500勝を達成されて9月は立川FIにて501勝目を上げました。次なる節目へ踏み出しました。そしてファンの関心はやっぱりグランドスラム!今後の目標は・・・?
山崎:自分では意識していないんですが、ダービー(GI)を走ると周りからちらほら話が出ます。そうなると意識せざるをえないですね。とはいえ常にGIをめざして練習をしています。なので目標も長くGI戦線にいる体づくりをしていくことです。
さっきの新人へのメッセージと重なりますが、競走がつづく中で不安に駆られることがあっても自分を奮い立たせ挑みたいです。若手は当然ですが強いので彼らのスピードに追いていかれないように、フィジカルとメンタル合わせて『まだやれるぞ!』ってところを見せたいですね。
大村:最後にオッズパーク会員の皆様と全国の山崎芳仁ファンへ向けたメッセージをお願いします。
山崎:いつも応援ありがとうございます。ファンの皆さまのおかげもあって大きな節目500勝が達成できたんだと思います。これからも上位をめざして、GI優勝をめざして日々の努力につとめますのでこれからも応援をよろしくお願いします!
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※インタビュー / 大村篤史(おおむらあつし)
2012年4月から小倉競輪場を中心にレース実況を担当。
名前と同様の"熱い"実況スタイルでレースのダイナミズムを伝えることが信条。
2022年7月からは小倉ミッドナイト競輪CS中継の二代目メインMCとしても出演中。
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※写真提供:株式会社スポーツニッポン新聞社
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