大西 貴晃選手
2024年11月06日
GIII初優勝を見事地元で決めた大西貴晃選手(大分101期)。
決勝では同門の阿部将大選手(大分117期)との連係から栄冠を掴み取りました。
どんな想いで今シリーズを戦ったのか。そして今後の目標は。色々なお話を伺いました。
ナッツ:まずは地元GIII初優勝おめでとうございます。
大西:ありがとうございます。
ナッツ:少し時間が経ちましたが、今のお気持ちはいかがですか。
大西:やっぱり、みんなからのお祝いメッセージが来るので嬉しいですね。
ナッツ:反響としては今までで1番ですか。
大西:はい、多かったですね。LINEだけじゃなくてインスタでも沢山お祝いしてもらって、今まではそういうのがなかったですね。
ナッツ:優勝した、という実感がそれで湧いてきたような。
大西:それこそゴールした時はもう全然優勝したのかわからなくて。1周してちょうどモニター見た時に亮馬さん(坂本亮馬選手・福岡90期)が僕の手を挙げてくれたんですよね。
そこでやっと「あ、優勝したんだ」っていう感じだったんです。それからこうして沢山祝ってもらえたので嬉しいです。
ナッツ:あのゴールの瞬間は私も実況しててどちらかわからずに言い切れなかったのが悔しいんです。笑
ゴール直後に園田匠選手(福岡87期)が小川勇介選手(福岡90期)のことをポンポンって叩いてたんですよ。それで、もしかして小川さんが優勝したのかって。
大西:あー、あとでレース見たら確かに叩いてましたね。笑
ナッツ:大西選手自身もモニターを見ないとちょっとわからないくらいだったのですね。
大西:そうですね。もうがむしゃらでしたし、勇介さんがやっぱり最後の最後伸びてきてたので、「これ、食われたんじゃねえかな」っていうのもありました。
ナッツ:そこを凌いでのS級での初優勝が地元での優勝で、更にそれがGIII初優勝というところはいかがですか。
大西:やっぱり嬉しい気持ちが大きかったですね。GIIIも地元もS級も、ってもう色々なことが重なったので。
ナッツ:大西選手はこの前の7月の別府記念(GIII)の時にも準決勝までは勝ち進んだんですよね。そこから約2ヶ月で今回のこのGIIIに臨むにあたっての想いはいかがでしたか。
大西:地元GIIIが2回目だったので、チャンスをもらえたなっていうのもあって気持ちは入れていきました。そして前検日の時に1回目の地元GIIIの時よりリラックスして入れましたね。
ナッツ:1回経験するのと2回目ではやはり全然その辺りが違ったんですね。
もうその時点でいけるぞっていう気持ちがあったのですか。
大西:そうですね。状態面は正直初日走ってみて、という感じではありました。
やっぱりレースと練習は全然違うんですよね。練習の時はあんまり仕上がってはなかったんで、いつもより前検日の前の日までもがいたりはして、やれることはやった感じで入ったんです。そして決勝に乗るにあたって、優勝できるかはわからなかったんですけど、3日目の準決勝で自分で持ち出して1着来れたのは、だいぶ大きかったなとは感じます。
ナッツ:ではその辺りも含めてレースを振り返っていきたいんですが、初日は岩谷拓磨選手(福岡115期)の番手で、後ろは師匠である菅原晃選手(大分85期)との連係でした。振り返っていかがですか。
大西:拓磨の気持ちが強くてホームで行ってくれたことによって3人で決まりましたね。
僕は抜けるなとは思って余裕見ながら最後交わしに行ったんですけど、菅原さんからは「お前、俺が内に来たら閉めたな」って言われました。笑
ナッツ:そんなやり取りをされたのですね。笑
やはり大西選手からしたら岩谷選手のダッシュには気を付けて、というようなイメージでしたか。
大西:そうですね。そこをしっかり付いていければ僕も自力があるんで大丈夫かなっていう感じでした。
ナッツ:そして2日目なんですが、ここは厳しい展開になりましたね。梶原海斗選手(福岡123期)との連係でしたがいかがでしたか。
大西:「あれ?何するんだろう」と思って。ここは引いちゃダメなのにって思いながら引いてたんで、僕は援護しつつ位置を確保しようとしていたのですが、そこもまだ見送ってるような感じだったんでびっくりしましたね。最終ホームで自分で捲りに行っても良かったんですけど、梶原の番手に行く、ということを言ってる以上はまだ我慢した方がいいかなと思って我慢した感じです。結局離れてしまいましたが、ゴール前で合流できて良かったですね。
ナッツ:やっぱり最終ホームで9番手になっていたあたりは想定外だったのですね。
大西:突っ張るという感じで話はしてたので、ジャンでは引かれるとは思ってなかったですね。
ナッツ:そしてその後、準決勝でも梶原選手と一緒になりましたね。
まず並びなんですが、梶原選手と同県の大坪功一選手(福岡81期)もいる番組でした。どういう話がありましたか。
大西:まずは2日目のレースのこともあったので、海斗には「もうああいうレースじゃ僕は付けないぞ」っていう話はしてたんです。それも行くって言ってて行かなかった部分もあるし、地元の記念だったので、そこら辺はちょっと強気で言ったんです。
それで、僕がハコを主張するのもどうなのかなっていうのもありましたし、福岡の間に入るのもおかしいので、3番手で勉強しますっていう話をしていたんですよ。
ナッツ:え、最初は3番手という話をしていたのですね。
大西:そうなんです。でも僕は大坪さんも何度か連係があって、大坪さんも結構熱い人なんで「ハコ行かんでいいんか」みたいな感じでめちゃくちゃ推されて、「こんな時ねえぞ、いいんか」って結構言われたんで、「じゃあ行かせてもらっていいですか」という感じで結局3人まとまったっていう感じなんです。
ナッツ:素敵な話ですね。大西さんの中では福岡と別で単騎で自力っていう可能性はなかったんでしょうか。
大西:やっぱり単騎だと"九州は1つ"って言っているのが崩れるし、色々とその辺りも考えてですね。
あとは僕も今は自力って言っても、自在でも戦う感じでこうやってハコに付いたりすることもあるので、もうそこはマークに変わるなら変わっていくような動きをした方がいいし、長い目で見るなら、3番手でもいいかなという気持ちだったんです。
ナッツ:そうだったのですね。大坪選手も、普段大西選手が前で頑張ってるから任せるっていうコメントがあったんですが、そのあたりはやはり気持ちとしては嬉しかったですか。
大西:そうですね。やっぱりそうやって回らせてもらってるのは嬉しいですね。特選選手がハコに行くべきでしょっていう話もあると思いますし、S級では特に点数で決まる部分もあるので。
ナッツ:その並びの中で梶原選手は2次予選の反省を踏まえて、もう1度大西選手がつく以上は頑張るっていうような話ではあったんですか。
大西:そうですね。あとは大坪さんまで付いているということで、頑張りますと言っていたので任せました。
ナッツ:実際のレースでは突っ張られるレースになりました。7番手から、ジャン4コーナー付近から梶原選手が仕掛けてという感じでしたね。作戦としてはいかがだったんでしょうか。
大西:本当はもう前を取っての全突っ張りだったんですよ。でも星野(星野洋輝選手・福島115期)のSが速かったですね。そして杉森さん(杉森輝大選手・茨城103期)が内枠だったんで、初手が後ろ攻めになるのも想定内ではあったんですよ。
でも早めに行けば杉森さんも中団を回りたいから切りに行くよ、っていう話をしていて。ただ、結局杉森さんも切らなくて誘導も残っていたので全てがハイペースになってしまいましたね。海斗もちょうど杉森さんが踏んだ時に1回ちょっと踏みやめたんですよね。そこで無理くり行けば、海斗も先行できたかもしれないですね。
ナッツ:なかなか作戦通りにいかずに想定外の流れになっていたのですね。
大西:そうですね。ただ海斗のやる気は凄かったですね。その後なんとか仕掛けていって、これはちょっと一緒に行けるかなって思ったところに、星野のブロックがありました。
そこはもうやられたら止まるやろうなと思って、ちょっと先に外に持ち出してたんで準備は出来ていましたが、あそこまで持って行くとは思っていなかったですね。
ナッツ:結果的に星野選手は失格になるブロックでしたもんね。ただ、よく大西選手もあそこでこけなかったですね。
大西:僕も車輪が潰れたかなと思ったんです。1回ちょっとカシャンって当たって。でも、踏んでる感覚はまだ車輪が生きていたんです。
だから行けるとこまで行って、3着まで入れるかなと思って最後まで踏み切ったんです。後ろの状況はもう見えてなくて、縦に踏んだ時から、もう必死でしたね。
ナッツ:そしてしっかり押し切って決勝戦に勝ち進みました。
九州は6車となりましたが並びとしてはいかがでしたか。ファンの中ではもしかしたら大分の自力2人が分かれるんじゃないか、みたいな意見もありました。
大西:僕と将大はそれこそ同門なので、もうそこは絶対並ぶ、という風に決めていました。あとは福岡勢の中でも久留米の2人は5-6番手を固める、と言ってくれましたし、園田さんは勇介さんに任せる、という感じだったので、あとはもう僕と勇介さんの話だけだったんですよね。もし勇介さんがハコに行くって言うなら、そこは僕ももう譲れないので勝負するしかないなと思っていました。ただ、勇介さんが「地元やし行っていい」という感じで言ってくれたんです。
ナッツ:そんな経緯があったのですね。
九州がしっかりまとまったことにより大西選手からすると1番チャンスのある位置になりましたね。その辺りの責任感はいかがでしたか。
大西:並びが決まった時点で将大が先頭なので、みんな死に駆けするって思ってましたよね。
でも僕は1番車でもSが速くはないので、前取れなかった時は誘導切って、ブーメランしてから自分の行けるタイミングで行けっていう話は将大にしよったんです。そしたら僕も将大を残せるしっていう。今回も結構我慢してあのタイミングで行った感じだったんで、もっと早かったら多分小川さんに差されていましたね。番手捲りになると尚更勇介さんの方がチャンスが出てくる、という話も自力2人でしてたんです。
ナッツ:地元2人でしっかりその辺りは話されていたのですね。
小川選手もやっぱり差し脚がありますもんね。オッズを見ても、大西選手の頭の次に小川選手が差すところも結構人気になってました。
大西:いや~なってましたもんね。笑 そのあたりもしっかり見てました。
ナッツ:その中で九州勢としての作戦としては、やはりまずは前を取っての突っ張りっていうのが基本だったんですか。
大西:そうですね。それで行こうって言う話をしていて、僕がスタート遅かったのですが将大が自分で取り行って、ああいう風になったんでよかったです。
ナッツ:あとは選手紹介の時から、単騎で戦う山本伸一選手(奈良101期)の動きが怪しかったんですが気になっていましたか。
大西:みんな言ってましたね。もうジカで来るんなら来てくれた方が飛ばしやすいけど、どうなんだろうなっていう話を小川さんとしていましたね。最悪僕のところに1回来て、カンナ削り気味にしてくるんじゃないかなっていう感じもありましたね。もし、そうなったら僕が1発持っていって線を外してカンナ削りされんようにはします、っていうのも顔見せ後に2人で話してました。
ナッツ:結果的には九州ラインが前を取って突っ張っていく中で、ジャン過ぎに7番手から山本選手は良いスピードでカマしてくる形になりました。あのあたりはいかがでしたか。
大西:将大もちょうど踏み出した時だったので、僕はもう安心してましたし2回ぐらい張ったんですよね。でもそこまでに将大がかかりきってなかったんで、前に出させてもらったっていう感じになりました。
ナッツ:やはり阿部選手自身も7月の記念の時と比べると状態面としてはイマイチというお話があったのですが、大西選手から見てもそれは感じていましたか。
大西:そうですね。それこそ4日間走っていて、ジャンからホームの先行ならいつも残るところを差されていたり、タイムとか見る限りでは7月の記念の時の方が仕上がってたなっていうのは感じましたね。やっぱり練習を一緒にしていても、あの時の方がやっぱ強かったなっていうのはあったので。でもお互い地元のGIIIだったんで、2人でお互い「2人とも仕上がっちょんよ!」って言って高め合ってましたね。笑
ナッツ:その高め合いめちゃくちゃ良いですね。笑
阿部選手も万全でない中でもしっかりと仕掛けて行き、大西選手は2コーナーからタテに踏みました。その後は杉森選手も良いまくりで迫っていましたがあの辺りの仕掛けは見えていましたか。
大西:杉森さんが来てるのは見えてましたね。これは乗り越えられたらまずいと思いながら、もうそこはもうとにかく踏んで、という感じでしたね。
ナッツ:その後直線で小川選手との一騎討ちでした。直線で脚は残ってましたか。
大西:4コーナーぐらいで、1回サドルに座れてないというか、1回落ちた感じがあったんで、もう1回座り直して踏んでいった感じですね。
ナッツ:もう本当に最後の気力を振り絞ってっていう。
大西:そうですね、あんまりタイム出てないんだろうなと思っていたのですが、結構出てたのが逆にびっくりでした。
ナッツ:優勝した後阿部選手とはどういったお話をされましたか。
大西:「ありがとう、頑張ったな」っていう話をして、将大からは「大西さん、前取ってくださいよ~」って言われましたね。笑
ナッツ:その冗談っぽいやり取りが良いですね。その後の表彰式は、雨でバンク内からステージの方に変更になりました。お客さんが結構近かったですが、ファンの声援はいかがでしたか。
大西:やっぱりあれだけ人が集まってくれると走っていても嬉しいですね。
そして最後も表彰式でいっぱい残ってくれてたので。
ナッツ:地元支部での胴上げもありましたね。
大西:あれは予想外だったんですけど、胴上げしに来た他の選手もみんな笑顔だったんで、僕はそれはそれでやっぱり嬉しかったです。
ナッツ:私はもう実況の時に大西選手の優勝ということで泣いていたのですが、大西選手は涙は流すシーンはなかったですよね。笑
大西:そうですね。涙を流しちゃいけんと思いながらも、もう目元は結構ゆるゆるでしたよ。笑
ナッツ:ゆるゆるだったんですか。笑
表彰式でもしかしたら泣くかなとか思ってたんですけど。
大西:本当に結構我慢してました。
ナッツ:そして改めて阿部選手は同門という関係ですが、大西選手にとってどういう存在なんでしょうか。
大西:やっぱりS級に上がってきてすぐ記念を取って、しかも1回だけじゃなくもう4回も取りました。僕としてはそこは置いていかれたなっていうのもありましたし、それで僕も頑張んないといけないっていうのは結構強かったですね。
ナッツ:普段の練習からもやっぱりよく一緒にされてるんでしょうか。
大西:前は結構していたんですけど、将大が子ども生まれて全然会わなかった時もあったんですよね。でも競輪場には入ってたんで、僕も入った時は一緒に練習することはあります。
ナッツ:あとは大西選手は自力で、特に捲りが強力なイメージがありますけど、最近人の後ろも増えてきて、今後そのあたりの戦い方のビジョンはありますか。
大西:今回のように番組さんが人の後ろを回らせてくれることもあるので、そこはもう自力だけよりも、自力自在に後ろを回る時は仕事するし、前がいなかったら前でしっかり戦うという感じです。
ナッツ:その中で、大西選手は今後大分や九州という枠の中でどういった存在になっていきたいですか。
大西:今はもう僕は先行は出来ないので、後ろに回った時はちゃんと仕事するっていうのもありますし前で戦う時は、捲りでも先輩たちをちゃんと連れていけるように頑張るっていうだけですね。
ナッツ:今後の大西選手の選手としての目標はいかがでしょうか。
大西:選手になってからは、やっぱりS級や記念で優勝することがやっと1人前の競輪選手かなっていうのは思っていました。そして選手になったからには、やっぱりGIに出たいっていうのがあったんで、これからはずっとGIに出れるようになりたいですね。
今年の小岩さん(小岩大介選手・大分90期)みたいにずっと出られる選手にはなりたいなと思います。今までの大分の選手も大塚さん(大塚健一郎選手・大分82期)や菅原さんのようにGIに出ることが多かったんで、こうやってまた大分の選手がGIにいっぱい出てくれれば意識もみんな高くなるかなってのもありますね。
ナッツ:大分は若手も結構出てきてますもんね。
大西:そうですね。一応来期から甲斐くん(甲斐俊祐選手・大分121期)と空吾(長松空吾選手・大分123期)がS級なのでそこら辺も楽しみですね。あとは、これから競輪祭(GI)などの大きな舞台を走る以上は、今まで以上に練習せんといけんなってのもあるしそういう気持ちを強くしてますね。
ナッツ:では最後にオッズパーク会員の皆様へ一言メッセージをお願いします。
大西:今後も自力自在に戦って、大分の先輩達のように名前を覚えてもらえるように走っていきたいです。これからも応援よろしくお願いします。
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※インタビュー / ナッツ山本(なっつやまもと)
公営競技の実況に憧れ、一念発起し脱サラ。2022年別府競輪と飯塚オートレースの実況でデビューを果たすことになった期待の新星。
まだデビューから間もないが、競輪中継の司会も経験し徐々に活躍の場を広げつつある。星の観測と手品が趣味。
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※写真提供:株式会社スポーツニッポン新聞社
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