古性 優作選手
2024年12月02日
弥彦競輪場で行われたG1寛仁親王牌・世界選手権記念で連覇を果たした古性優作選手(大阪・100期)。
今年前半戦は苦しむ時期もありましたが、これでオールスターに続いて今年のG1は2勝目。
古性選手が今目指す場所とは。そしていつまでもストイックでいられる理由は。様々なお話を伺いました。
ナッツ:寛仁親王牌の優勝おめでとうございます。
古性:ありがとうございます。
ナッツ:お気持ちはいかがですか。
古性:寺崎君(寺崎浩平選手・福井117期)も脇本さん(脇本雄太選手・福井94期)も頑張ってくれました。
ちょっとラインとして機能できなかったので複雑でしたけど、結果を残せてよかったなと思います。
ナッツ:連覇というところに関してはいかがですか。
古性:全く興味ないですね。
今回に関しては2人が頑張ってくれたという、それだけですね。
ナッツ:今回は共同通信社杯競輪から1ヶ月ほど空きましたが状態面はいかがでしたか。
古性:共同通信社杯の後は腰痛でちょっと欠場させてもらったんですけど、トレーニングもしっかりできて、その時よりはいいなと思いました。
ただトレーニングをしっかりできた分、ちょっと疲労が抜けきらずに入ってしまったかなという感じですね。
ナッツ:古性選手は普段、疲労をためて開催に入るということが多いのでしょうか。
古性:基本はG1以外には疲労をためて入ってますね。
やっぱりG1を目がけてやってるんで、G1で良いパフォーマンスをするには1日を無駄にせずにトレーニングしてから入らないとと思っています。
他をピークに持ってくると、次のG1がしんどくなっちゃうんで。
ナッツ:では今回は調整も入れつつだったのですね。
古性:そうですね。しっかり調整していって、という感じだったのですが、今回はちょっと失敗したなって思います。
ナッツ:ではレースを振り返っていきます。
まずは初日の特別選抜予選。北井佑季選手(神奈川119期)に対してジャン過ぎに仕掛けていくシーンがありましたが、あの辺りはどう考えていましたか。
古性:先行が北井さんだったので、後方になるよりはしっかりと前に踏んで勝負したいなって感じでしたね。
ナッツ:あそこは北井選手を叩きに行ったのでしょうか。
古性:基本的には自分が持つペースで踏んでいって、出切ることができれば勝負できるなって感じでしたが、北井さんのダッシュもすごかったですし追い上げる形になりました。
ナッツ:その後、バックあたりで北井選手の番手から縦に踏み込んだのかなと感じるシーンがあったのですが、あのあたりはいかがでしたか。
古性:しっかり南さん(南修二選手・大阪88期)とも決めたかったんで思いっきり踏み込んでいったんですけど、北井さんがすごい踏み直しでした。
スピードがすぐに合っちゃったなって感じでしたね。
ナッツ:もうそこは冷静に1度立て直してっていうような感じだったのですね。
古性:そうですね。1回踏んでやめたので、その分南さんが苦しくなったかなとは思います。
ナッツ:古性選手自身はしっかりと抜け出しての1着となりましたが、一走しての脚の感じはいかがでしたか。
古性:重たかったっすね。
ナッツ:まだまだ状態としては、という感じだったんですね。
そして、2日目のローズカップは近畿が3人揃いました。作戦としてはいかがでしたか。
古性:前の方からレースしたいって感じだったんで、前取ってから勝負したんですけど、ちょっと難しい判断になったなと思います。
ナッツ:眞杉匠選手(栃木113期)が、寺崎選手に対して突っぱらせないような出方になりましたが、基本的には突っ張りも作戦のうちではあったんですね。
古性:そうですね。突っ張りもありましたね。
ナッツ:結果的に一度引いてから寺崎選手も仕掛けていきました。ただ、そこは合わされて道中は古性選手にとっては最後方という位置になりましたがいかがでしたか。
古性:キツかったですね。
ナッツ:ただ、その後脇本選手がものすごい捲りを放ちました。あの辺りはついていていかがでしたか。
古性:もう本当にすごい強いなって思いましたね。寺崎くんも脇本さんもすごい強かったです。
ナッツ:3日目は再び自力になりました。
自力ある選手も揃っていた中でしたがどう考えていましたか。
古性:特には考えてなかったんですけど、本当に全部瞬時の判断でレースしたなって感じです。
ナッツ:最終バックは展開的に内に包まれて結構苦しいところじゃないのかなと見えましたが、あのあたりはいかがでしたか。
古性:いや~正直負けパターンに入っちゃったなって感じでしたね。
なんとかコースが開いたので良かったです。
ナッツ:3走して脚の状態は初日と比較していかがだったのでしょうか。
古性:もう重かったっすね。基本的に僕はもう開催中に回復することはなくて、入ってきた状態で勝負することになるタイプなんです。
ナッツ:じゃあもう今回は4日間ずっと重い状態だったのですね。
古性:そうですね。悪かったら悪いなりに組み立てでカバーしたいなって感じはありました。
ナッツ:前回お話伺った時には、オールスターの際には準決から決勝の間でローラーに乗ってインナーの使い方で良くなったということを仰っていましたが、今回は状態面の変化を感じることはなかったのですね。
古性:はい。もうバンクも寒くなってすごく重たくなりましたし、オールスターの乗り方では結構厳しい感じはありましたね。
ナッツ:そして決勝戦。近畿にとってはローズカップと同じメンバーということになりましたが、作戦としてはやはり2日目の分まで突っ張るという形でしたか。
古性:そうですね。2日目の失敗もありましたし、寺崎くんと、確実に突っ張れる方法を2人でちょっと話してという感じでしたね。
ナッツ:その突っ張りのアドバイスをしっかりと寺崎選手は実行できたということですか。
古性:ちょっとローズカップの時とは相手の出方が違かったんで、寺崎くんも突っ張りやすかったかなと思いますけど2日目の時よりは良かったかなと思いますね。
ナッツ:仮に2日目の眞杉さんのような感じで押さえに来たとしても、ちゃんと突っ張れるような方法みたいなアドバイスをされてたっていうことですね。
古性:そうですね。その辺りはもしそういう感じで来ていたとしても対応できたと思います。
ナッツ:結果として、寺崎選手は突っ張り切りましたが、郡司浩平選手(神奈川99期)も早めの仕掛けで脇本選手と絡むシーンもありました。あの辺りの判断はいかがでしたか。
古性:新山君(新山響平選手・青森107期)も隙がなかったですし、郡司君が来た時にもし4車あれば張って止めることもできたんですけど、3車だったので、そこを開けて脇本さんが踏むコースがなくなるっていう怖さもありました。なので僕はもうしっかりととにかく内を締めて、あとは脇本さんの判断でと思いましたね。
ナッツ:ただ、その脇本選手が内に差し込んでしまったところがありました。そこでの古性選手の判断ですよね。
古性:そうですね。郡司君があの辺りはすごく上手でしたね。
もし脇本さんがあのまま縦に踏んじゃうと、もうそのまま決まっちゃうって郡司君も思っただろうし、僕もそう思ってましたね。
仮に僕が郡司君でも、脇本さんが縦に出ないようにする為にはああするかなって感じでした。
ナッツ:自分でもそう思うからこそ、あの場面を見て脇本選手は厳しいなっていうのがわかったのですね。
古性:寺崎君もあんだけ長い距離行ってますし、スピードがだんだん落ちてくるところで脇本さんが内に差しちゃったんで、車輪が抜けるのが多分これは時間がかかるなと思いました。そこで切り替えの判断をさせてもらったって感じですね。
ナッツ:その後は捲ってきた佐々木悠葵選手(群馬115期)を牽制するシーンもありましたが、あの辺りはいかがでしたか。
古性:しっかりと2コーナーから僕が外を踏めたらよかったんですけど、僕もジャンで追い上げていたので脚を削られていました。
ちょっときついなって感じで、佐々木君が来たのがわかったんで止められたらと思ったんですけど。
ナッツ:そしてその後郡司選手がブロックしたところ、前輪を引っこ抜いてインコースに進路を切り替えた部分の判断としてはいかがだったんでしょうか。
古性:本当にもう佐々木君と郡司君の間を割って勝負するしかないなって思ってました。
自転車をそこに差し込んでいたので郡司くんが外に持っていった時に、前輪を引っこ抜いてから内に行くっていう判断をしたんですけど、自分でも内に行くのは予想も全くしてなかったし、本当に体が勝手に動いたなって感じですね。
ナッツ:あのままだったら、前輪が払われて古性選手も危ない感じのシーンでしたよね。
古性:そうですね、一緒に持って行かれてやばいかなと思ったんですけど内に行けて良かったですね。
ナッツ:やはりあの辺りもベースとなってるのはBMXの経験が大きいのでしょうか。
古性:いや、引っこ抜く技術ってBMXじゃないんですよね。BMXは固定ギアじゃないですし、BMXは立ってバックを踏むっていう作業をしても前に進んじゃうんです。
これは本当にピストで身につけた技術ですね。BMXとは全く別ですね。
ナッツ:え、そうなんですね。逆に言うと、それは古性選手でなくてもピストの練習で身につけることもできなくはないはずってことですよね。
古性:はい、誰でもできると思いますよ、練習すれば。笑
ナッツ:古性選手もそういう練習を積み重ねてきたってことなんですね。
古性:そうですね。練習もしましたし、考えもしました。
ナッツ:やっぱりそこはしっかりと思考も働かせて、色々チャレンジもしてっていう積み重ねなのですね。
古性:本当にG1の2センターって集中力がすごい高まる場面なんですね。そこで無意識の状態でああいうことができたのは良かったなと思いますね。
ナッツ:あとは今開催の前に、後藤大輝選手(福岡121期)だったり菊池岳仁選手(長野117期)が古性選手と練習されたという記事も拝見しました。
後藤選手に関しては古性選手が声を掛けたということでしたがどういった経緯だったんでしょうか。
古性:オールスターの時に部屋に遊びに来てくれたりとかしてたんですよね。 その時に合宿とかをしたいな、という話はしてたんです。
それで本当にやっぱりすごく意識が高い選手なんで。岳仁も大輝も。それで本当に来てくれて一緒に練習した感じですね。
ナッツ:古性選手も2人のレースを見ていて良いレースをするなと思っていたのですか。
古性:もちろんそうですね。僕も練習を一緒にしたかったっていう気持ちもあるので。
ナッツ:その辺りは自分のことだけでなくて、地域関係なく競輪界全体のことも考えてるようにも見えます。
古性:いや~もうなんですかね。岳仁からもですし、大輝からもそうですけど、僕はその2人のいいところをパクりたいと思って練習してるんで。笑
向こうが刺激を受けるよりも、僕の方が刺激もらったなって感じはしますね。
ナッツ:そこは逆なのですね。笑
古性:ですね。僕のために来てくれた感じです。笑
ナッツ:古性選手ほどのトップの選手でも、若手から学ぶところがあるのですね。
古性:めちゃくちゃありますね。
もう若くてあれだけ強いので、やっぱり練習の姿勢だったりとかも素晴らしいですし。あとは何を考えて練習してるか、どういうフォームしてるか、ペダリングしてるか、重心がどこにあってもがいてるのかとか、色々なことを吸収しながらって感じですね。
ナッツ:そこまで、古性選手がストイックでいれる理由っていうのは何があるのですか。
古性:なんですかね。本当にこう、シンプルに強くなりたいだけですね。
ナッツ:古性選手の中でも、しんどいなという気持ちだったり、休みたいなとか思う時ってのはあったりするものなのですか。
古性:頭にはありますけど、タイトル取る為に強くなりたいという感じではなくて、本当に一競輪選手としてもっと強くなりたいっていう感覚なんです。だからG1を獲っても本当に全く満足することないです。強くなる為に、って考えたらやっぱりみんなと一緒に練習して少しでもいいところを自分が吸収できるようにって思っていますね。
ナッツ:そのお話を聞いていると、今目標に掲げてらっしゃるダブルグランドスラムを達成されたとしても、もっと強くなりたいっていう意識が古性選手の中ではずっと継続していきそうな感じがしますね。
古性:どうですかね。とにかく今は目標はそこに置いてるんですけど、それを達成してしまうとどうなるかわかんないですね。
でもそれを達成したらまた次の目標が出てくると思うし、達成しそうやったらまた次トリプルグランドスラムとか多分言ってると思うんで。
基本的には達成する前に次の目標を立てたいタイプなんで僕は。満足はしたくないですね。
ナッツ:もう本当に競輪選手としてタイトルだけでなく、人としても競輪選手としても一流に、という感じなんですね。
古性:そうですね。何かを成し遂げるっていうよりかは本当に強くなりたいっていう思いだけですね。
ナッツ:いや、本当にどこまで上を目指すのか...天井がどこにあるのかわからないですね。
古性:はい。自分でもわからないですね。
ナッツ:そして、まずはそのダブルグランドスラムが目標ということに関連して、次走はまだ獲得出来ていない競輪祭が控えています。
競輪祭は過去2回決勝に進出されていますが、競輪祭に対するイメージはいかがでしょうか。
古性:小倉でドームというところで、スピードが1個上がるんですけど、その1個上がるところに僕はちょっと対応できてない部分はありますね。
ナッツ:同じドームでも前橋は古性選手は得意なイメージはあるんですがまた違うのですね。
古性:前橋はコーナーで加速していける感覚があるんですよ。小倉はちょっとそれが薄くてなかなか難しいなって感じです。
ナッツ:あとは競輪祭はグランプリに向けての1ヶ月前っていうのもあって、調整面もそこをピークに持っていくのは難しいんじゃないかなとも感じるのですが、その辺りはいかがですか。
古性:そうですね。競輪祭終わってから1回落とすっていう感覚もあんまりないんで。競輪祭は競輪祭に向けて仕上げて、競輪祭より少し上積みがある状態でグランプリに入れたらいいかなと思います。
ナッツ:今はまずは競輪祭に向かって調整をする段階なんですね。
古性:はい。今は自分の決めたトレーニングメニューを淡々とこなすだけって感じですね。
ナッツ:こんな話をするのも失礼かもしれないですが、最短では再来年にはダブルグランドスラムを達成できます。
古性選手の中では、ダブルグランドスラムをいつ頃達成したい、というような具体的な期間の目標はあったりするんですか。
古性:それは特にないんですけど、今本当に満足できてないんです。
自分が強くなったなって思うことは多分一生ないと思うんですけど、自然とそういう風になれるように頑張りたいなって感じです。
ナッツ:それを強い古性選手が言ったら、他の選手はお手上げのような感じもしますね。
古性:でも本当に今はG1を優勝してもF1を優勝したような感覚なので。
ナッツ:え、G1の優勝がF1優勝と同じくらいの感覚なんですか。
古性:はい。自分の中で大きいところに目標を置いてるんで、本当に満足感っていうのは今は全くないですね。
ナッツ:見据える場所が違いすぎて、G1が当たりではないですけど、もう本当にそういう感覚なんですね。
一喜一憂するような感じでもないっていうような。
古性:そうですね。G1獲ったぞ、っていう感じでもないですね、今は。
一喜一憂も一切ないですね。
ナッツ:すごいですね。本当にストイックですね。
古性:でもG1優勝しても力の差は感じてるので。勝ち上がりのレースでもそうですしほとんど僕より強いと思います。
ナッツ:力の差というのは自力ということですか。
古性:そうですね。見てる人にはなかなか伝わらないかなと思うんですけど、僕はそういう風に感じてるので満足感みたいなのはないって感じですね。
脚力をもっとあげていきたいですね。
ナッツ:あとは競輪祭後にはグランプリも控えています。そこに向けてはいかがでしょうか。
古性:寒くなってきたら、だんだんグランプリの時期やなって感じになってきますね。そろそろ始まるなって感じはします。
ナッツ:グランプリはまた違う特別感はあるんですか。
古性:そうですね。本当に一般の人も見るようなレースですし、普段競輪に興味ない人も見るレースなので一段階も二段階も違うかなって感じはするので頑張りたいですね。
ナッツ:ありがとうございます。今後のご活躍にも期待しています。
では最後にオッズパーク読者の皆様へ一言お願いします。
古性:これからも応援してもらえるように頑張ります。
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※インタビュー / ナッツ山本(なっつやまもと)
公営競技の実況に憧れ、一念発起し脱サラ。2022年別府競輪と飯塚オートレースの実況でデビューを果たすことになった期待の新星。
まだデビューから間もないが、競輪中継の司会も経験し徐々に活躍の場を広げつつある。星の観測と手品が趣味。
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※写真提供:株式会社スポーツニッポン新聞社
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