ボクシングで培った精神力で女子レーサーナンバー1を目指す伊勢崎32期・藤本梨恵選手。
ハングリー精神でストイックに自分と向き合い戦い続ける彼女にお話を聞きました。
インタビュー / 内野久照
内野:飯塚オートへ入る前に勝ち運を求めてドライブに行った記事を見ました。
藤本:はい!今回は福岡県篠栗町の南蔵院と福岡県浮羽町の浮羽稲荷神社に行ってきました。御朱印ガール(飯塚オートリポーターAKIちゃん)を誘って祈願してきました。勝負事なので勝ち運を求めてパワースポットにはよく行きますよ。
内野:これまで勝負にこだわってこられたと思います。ボクシング時代の事から聞かせて下さい。
藤本:はい。ボクシングの前からお話しすると中学・高校と6年間はバスケットボールに青春を捧げました。
高校は日本女子体育大学付属二階堂高等学校バスケ部のキャプテンでした。土屋太鳳ちゃんの出身高です。太鳳ちゃんは後輩ですよ(笑)
キャプテンをやって人を動かすというか人をやる気にさせるというのは難しかったです。
その時思った事はチーム競技より個人競技の方が自分には向いていると思いました。
内野:バスケからボクシングですか?
藤本:バスケットを引退して次は何をしようかなと考えました。また何かに打ち込みたいなと思っていました。
18歳から始めてもトップを目指せる物は何か?そしてプロ選手になれる競技という事でボクシングを選びました。
自らプロになりたいですとボクシングジムを尋ねました。
年に3回程の試合を行っていました。
リングネームは『藤本りえ』で、愛称は『りえ坊』。入場曲はジャネットジャクソン『ALL FOR YOU』でした。
1ラウンド2分の4ラウンド制や東洋の試合は10ラウンド制で戦っていました。生きるか死ぬかという気持ちで試合に挑むので気持ちは常に入っていました。
18歳からはボクシングに人生を捧げていましたね。世界チャンピオンになる目標を掲げそれに向かって毎日トレーニングに励みました。
試合が決まると対戦相手のビデオを見て研究します。恨みがある訳じゃないけど恨むみたいな感じになってぶっ倒すという気持ちになりますね。
リングに上がる前・試合の入場前は吐き気も出て凄く緊張したのを覚えています。
その時代はまだ女子ボクシングはマイナー競技でしたが最年少女子プロボクサーとしてデビューする事となりましたのでデビュー戦は話題にして頂きました。
内野:ボクシングで大変だった事は?
藤本:ボクシングではもちろん減量が厳しかった。
58kgから50.8 kgまで落とします。約1ヶ月の間です。
走るのと食事制限をします。試合の直前に水抜きをします。方法はサウナです。やり過ぎると脱水状態になります。
直前にやらず早めに水抜きをすると、体自体が小さくなってしまいます。体を小さくせず大きいままで体重を落とす事は難しく厳しかったです。
計量をパスすると沢山食べるのですが胃も小さくなっているので急激に体重を戻す・増やす事は出来なかったです。他の人の中には5kg増える人もいました。
内野:プロボクサーの現状はどうだったのですか?
藤本:年に3回の試合だけでは食べて行けないです。
ファイトマネーも金額的に多い訳ではなかったです。18時からボクシングジムでのトレーニングがあるので16時17時ころまで毎日アルバイトをしていました。
アルバイトでリフレッシュ出来るようにあえて幾つも掛け持ちしました。
ボクシングの試合をする為にチケットも売らないといけないので売る為に人脈作りもしました。おかげで沢山の方に応援して頂きました。
皆さんの応援のおかげもあって日本チャンピオンに2回なりました。フライ級とバンタム級です。女子東洋太平洋スーパーフライ級王者にもなれました。
内野:どんなタイプのボクサーでしたか?
藤本:ガードをしない訳ではないけど打たれたら打ち返すといった感じでいつも壮絶な打ち合いになっていました。
殴られた時は『このやろー!やってやるー!』という気持ちになるし毎回『くっそー』って思いますよ(笑)
殴り合いなので怪我が絶えなかった。鼻は折れるし眼底骨折した事もありました。
試合が終われば顔は凸凹になりましたよ。
内野:ボクシングを引退されてからは?
藤本:ボクシングを引退してからは生きる希望を失ってしまった。6ヶ月間は抜け殻になりました。まさしく『あしたのジョー』状態です。病んでいたのかもしれません。
周囲から次は何するのと聞かれることが多く逃げるようになりました。あの時は人を避けて生きていました。
そんな中次に打ち込める事を探しました。女子ラグビーや競輪も考えましたが29歳から始めて長くやれる事、選手寿命を考えてマシンスポーツだなと思いオートレースを受検しました。
個人競技は自分次第。やればそれだけ返って来る。やらなければ結果に繋がらない。
自分が頑張れば頑張った分結果に繋がるから個人競技が面白いと思いました。
自分は年齢的にも上だったしバイク経験者でも無かったので受かった時は本当に嬉しかった。生きる希望が見えました。
32期同期は女子が5人いたけど益(益春菜元選手・川口32期)と岡谷(岡谷美由紀選手・浜松32期)、私藤本は年齢が近かったので3人でよく居ましたね。仲良かったです。
利沙(片野利沙選手・川口32期)と岸(岸萌水元選手・浜松32期)はいつも2人で居ましたので2グループになってたかな...
養成所は地獄でした。
常に不安でした。遅かったし出来なかったので卒業出来ないのではないかと不安だらけでした。
教官に『お前たちがダメだったら次の女子採用に影響が出るからな』というような事も言われました。
私はここで終わらせる訳にはいかないと思い気持ちを入れ卒業に向かいました。
内野:伊勢崎所属となりましたね。
藤本:当時あこがれの選手がいないというかオートレースの選手を知らなかったので貢さん(高橋貢選手・伊勢崎22期)チャンピオン・絶対王者がいる伊勢崎を希望しました。
家からは川口が近かったんですが、ボクシングジムもチャンピオンがいるジムは空気が違うし皆の周りの意識が高いです。
だからそういう環境でやりたいたいなと思いました。
内野:デビュー戦は?
藤本:デビュー戦はぶっちぎりの8着でした。試走が出なさ過ぎてレースに参加する事も出来ず一人で走っていた感じでした。ダメ過ぎて悔しい所まで感情が到達していなかったです。情けない気持ちで一杯でした。
女子選手デビューという事もあり何人もの記者さんから取材を受けましたが何を話して良いか分からなかった。その後成績は伸びず周りが大丈夫だろうか?クビにならないかと心配もしてくれました。
内野:ここまで幾つもの苦労があったのですね?
藤本:今、こうして頑張れるのは周りの先輩たちのおかげです。
色々とアドバイスを練習時はもちろんレース後にも的確に教えてくれました。
私は器用ではないので折れない心を持ち続けました。気持ちだけは折れないようにしてきました。簡単に結果は出せないのでこれからもコツコツやって行く事だと思っています。
練習の回数は人より行きました。同期が次行かないのであればもう1本自分は行くように心がけています。
今は新人の子もどんどん入ってきて自分も良い刺激になっています。
内野:体力面はどうですか?
藤本:オートレースで気を付けている事は体幹を鍛える事と太らない事ですね。
食事制限とランニングです。バランスを整える器具も使っています。
内野:ボクシングとオートレースの違いは?
藤本:ボクシングよりオートレースの方が感情のアップダウンが無いですね。
オートレースでは緊張しないと言うと何か悪く取られるかもしれないですが2分間のレースで一喜一憂している暇はないという事です。
すぐ次の事を考えないといけない。良くてもダメでも明日のレースの事を考えて行く。
落ち込んでいる暇などなくすぐ切り替えないといけません。
内野:ロッカーではゆっくり休めないですね?
藤本:息抜く暇はありません。まだまだひよっ子ですから...。
内野:初優勝のお話を聞かせて下さい。
藤本:初優勝は伊勢崎の雨でした。20m前での優勝でした。
展開も作れて天気も味方してくれて優勝する事が出来ました。
内野:印象に残っているレースは?
藤本:凄く印象に残っているレースは年末のスーパースターフェスタです。晴れでの8周戦でした。準決勝戦からハンデが下がりましたが結果を残す事が出来て優勝戦に出場する事が出来ました。エンジンが良ければ自分も大舞台で戦えるんだと手応えを感じたシリーズでもありました。自信に繋がりました。
ただ年明けからハンデが重化し苦しいレースが続きました。
これまで逃げていただけで人を捌いていなかったので10m前のハンデ位置で苦労しました。成績を残せたのは逃げて結果を出しただけで捌いていないという事でした。
ハンデが重化すれば捌きを磨かないとレースに参加できないです。
10m前の選手はスタートも早いし捌きもあるので20m前の位置とはレースがまったく変わってしまいました。捌く難しさを痛感した位置でした。
内野:今年2019年はこれまでいかがですか?
藤本:以前までは波が大きくて良かったり悪かったりと差が激しかったけど、前よりもエンジンを崩す事無く整備も少しずつ分かってきました。これも私を見離さなかった周りの先輩のおかげです。コツコツとやって来た事がここ一年くらいようやく結果が出てきたかなと思っています。
内野:もう一度優勝を?
藤本:もう一度優勝したい気持ちはもちろんありますが...。
今、優勝してハンデが重化・下がった状態でまた同じように苦労するのではなく20m前だけどこの位置で確実に前を捌くという事を課題にしています。
逃げて勝つのは勿論ですが前に人がいる状況であっても3人4人が居ても捌いて先頭に立つ事です。前に出たい。捌ける様になりたいです。
『人を抜く人を捌く』が今の課題です。
内野:恒例になっています。同期32期を家族に例えて頂きます。
藤本:家族ですか...
父親はやっしーでしょう。(松本やすし選手・伊勢崎32期)解っているでしょう(笑)
母親は私ですね(笑)
養成所で父さん母さんと呼ばれていましたから。もちろんふざけてですよ。
姉は岡谷美由紀ちゃん。仕事も出来るし頼れる存在です。
兄は吉原です。(吉原恭佑選手・伊勢崎32期)地元の同期なので凄く頼りにしています。
弟は長田です。(長田恭徳選手・山陽32期)弟っぽいし子供っぽいというと怒られるかな...。
妹は岸萌水元選手。生粋の甘え上手です。
ペットは利沙でしょう。完全に利沙。32期のマスコットです。
内野:自分の性格を一言でいうと?
藤本:お調子者かな...違うかな...何か自分が今良く分からないですが...
う〜ん!人を気にしすぎる所があるかな。人の目を気にしてしまいますね。良く言えば気が利くのかな?自分をもう少し持ちたいかなと思います。
人を楽しませるというのはやっしーの教えです。私は私で良いでしょう!と思えるようになりたい。
内野:ルーティーンはありますか?
藤本:一杯あり過ぎて困っています。
内野:必ずレース場に持って行く物は?
藤本:クッションタイプのマッサージ機です。もうおばちゃんなので背中が痛くなるのです。体が持ちませんのでマッサージ機は必需品です。
内野:好きなレース場は?
もちろん伊勢崎ナイターです。走りやすいしエンジンを合わせやすい。
大好きな場所です。地元が大好きファンも大好きです。
内野:苦手なレース場は?
山陽オートが苦手です。走る機会が少ないので合わせにくいです。
内野:レースではどこでスイッチが入りますか?
藤本:ピットの中で係の人が『フライング・周回誤認のない様に。宜しくお願いします。発走です。』と声がかかり選手8名が立って『宜しくお願いします。』言って階段を上がって行く時にスイッチが入りますね。
『よしっ!』と気持ちが入ります。
内野:大事にしている言葉?
藤本:『負けない』です。相手にもそうだけど自分に負けたくない。自分に負けない事が一番大事な事だと思うから!
内野:休みの日の過ごし方は?趣味は?
藤本:今は行けていないけど何かと言えば釣りと神社巡りと温泉です。
内野:賞金は何に使っていますか?何か買いましたか?
藤本:賞金は貯金しています。
内野:料理はしますか?
藤本:実家ですけど普通にご飯は作ります。
和食中心ですが基本何でも作りますよ。
あっ!得意料理ではないですが私が釣った活き造りは美味しいですよ(笑)
釣りが好きなので自分で釣って自分でさばきます。
自分で釣った魚が一番美味しいです。これまで肉派だったのですが釣りをするようになって魚が好きになりましたね。
内野:果物は何が好きですか?
藤本:ぶどうが好きです。皮ごと食べられる物が好きです。コストコの『グリーンシードレスグレープ』が大好きです。
内野:野菜だと何が好きですか?
藤本:ヤングコーンです。食感が好きですね。
最近は血糖値が上がるのが嫌なので血糖値GI値を意識してかぼちゃと人参は食べなくなりました。
内野:藤本選手にとってファンとは?
藤本:まぁ暖かいですよね。数少ない私のファンの方が名前入りのタオルを掲げて応援してくださっています。いつも目に入ってきます。
内野:これから女子選手がもっと増えると思いますが?
藤本:女子選手が増える事は良い事です。レースで女子戦があるけどメンバーがほぼ同じなので、これから女子レーサーが増えれば女子戦がもっと出来るので良いですよね。色んなメンバーでやれたら盛り上がりますね。
その為にも私自身も頑張りたいと思っています。
内野:年末の女子戦『スーパースターガールズ王座決定戦』について
藤本:もちろん女子王座・女子ナンバー1に輝きたいけどそれだけに集中して失敗して残りの4日間を無駄にはしたくない。女子同士だと気持ちが入りすぎるので事故なく気持ちを抑えて参加したいです。
内野:藤本選手にとってオートレースとは?
藤本:オートレースは今の私の生きる希望というと大袈裟かもしれませんが今のやりたい事ですかね!オートレーサーになれて本当に良かったです。
内野:オッズパークを御覧の皆様へメッセージをお願いします。
藤本:試走が出るタイプではなく、試走が出ている時はエンジンが出ている状態なので期待して下さい。
MCうっちぃ!こと内野久照 オートレース歴16年。好きな選手は浦田信輔選手。現在飯塚オートでMC、山陽オートで実況を行っています。年間約180日間選手ロッカーに潜入し取材もこなすMCです。オートレースを盛り上げたくFBでは飯塚オート盛り上げ隊、Twitterではオートレース盛り上げ隊にてロッカーフォトや選手情報配信しております。 最近では場外車券売り場にてオートレースの解説予想を披露し自腹車券勝負に挑んでいます。オートレース大好き九州男児が展開する魂の大胆予想にご期待下さい。