山本 咲希到 騎手(北海道)
2015年10月05日
若手の活躍が目立つホッカイドウ競馬。今年デビューしたのは山本咲希到(さきと)騎手(18)です。
騎手になったきっかけを教えてください。
奈良県の大和高田市出身で、小学4年の時、祖父母に京都競馬場に連れて行ってもらいました。2006年の菊花賞、ソングオブウインドが勝った年です。三冠がかかっていたメイショウサムソン(4着)の石橋騎手が最後まで追っていたところや、アドマイヤメインの大逃げ、ドリームパスポートの追い込み、レースとして全ておもしろく、騎手になりたいと思いました。小学校は空手、中学に入ってからは陸上部に所属しながら乗馬クラブに通っていました。陸上部は足腰を鍛え、体力をつけるため。夏休みは陸上の朝練をしてから、バスで1時間かけて乗馬クラブに行ってました。中学時代に通った乗馬クラブと、中学卒業後に寮生活しながら1年通った東関東馬事高等学院では、乗馬の基本をみっちり教わりました。
咲希到という名前は、漢字一文字一文字に意味があっていい名前ですね。
父が、レーサーになりたかったそうで「サーキット」から名付けられました。親は全く競馬は見ないのですが、何も言わず応援してくれました。
地方競馬教養センター時代はいかがでしたか。
中学の時にJRAの試験を受けていましたが、次の年には中央や地方関係なく騎手になりたかったので、両方受けて地方に受かりました。2年間、厳しかったけどジョッキーにさせていただきましたし、楽しかったです。馬乗りとしてはもちろんですが、精神面で鍛えられました。忍耐がつきましたね。同期とも仲が良かったです。
北海道に来たのは、2歳戦や馴致は、技術が身につき馬乗りとしてうまくなれる、と聞いたからです。教官にも薦められました。最初は同期に負けない、と思いましたが、競馬場が違うと流れも雰囲気も違うし、それよりは阿部龍さんや石川倭さんなど、道営で若手騎手が活躍しているのでこちらの方が気になります。
名騎手だった松本隆宏調教師のもとに、ついに新人所属騎手が!という思いでした。
言われましたね。宮崎さん(光行騎手)もいますし、勝負服をもらったので、言われなくてもその思いは感じます。宮崎さんは移籍してきたので、せっかく最初の弟子になるから勝負服は着せていただけるなら、と先生にお願いしました。最近道営では、米川昇先生(石川倭騎手)、村上正和先生(水野翔騎手)、と昔騎手だった先生の勝負服が復刻しているんですよね。
2年の夏からの実習はいかがでしたか。
全く違います。馬が違う。大変だと思うことはなく、楽しかったです。もっと騎手になりたい、と思いました。攻め馬に乗せていただいた馬がレースで結果を残してくれたり。厩舎はこの時、ヤマノミラクル(北海優駿)やステファニーラン(リリーC、フローラルC)、キタノイットウセイなどが活躍しましたからね。
実は実習に入ってすぐ足首を骨折して、9月の1カ月くらい馬に乗れなかったんです。それもあって、冬季は松本先生と同期の、川崎の田邊陽一先生のところにお世話になりました。南関東にも限定騎乗で行きたいな、と思いました。
松本先生や宮崎騎手は、何か教えてくれますか。
基本的には言わないけれど、聞けば教えてくれます。宮崎さんも聞けば教えてくれる。大事なのは「馬づくり」と言われます。他の厩舎に強い馬がいても、乗るにはハードルが高い。厩舎で強い馬をつくれば、騎手が2人いてもまわってくることがある。だから攻め馬が大事、と。ほかの先輩方、厩務員さんなど、みなさんによくしてもらっています。五十嵐(冬樹)さんは乗り役としての態度や、競馬場以外の心構えを教えてくれますね。道営の人たちはみんな温かいです。
初騎乗(4月22日8Rナナイロ、7着)について教えてください。
あっという間に終わってしまいました。緊張はしなかったのですが、内にささって、矯正するのに必死でした。レースってこんなに疲れるのか、と思いました。今考えればあんなハイペース、間違った騎乗だったと思うのですが。祖父母が応援に来てくれました。
初勝利(5月6日10R、クインズパール号)については。ゴールデンウィーク中でした。
追い切りも乗せてもらって内心期待していたのですが、特別戦(減量特典なし)ですし。(大外をまわって)ロスの多い競馬だったので、馬が強かったからです。思い出に残る馬ですね。(内外離れていたので)勝ったかはわからなかったけれど、戻ったらおめでとう、と言われました。人の多さは全く気にならなかったです。2勝目は勝ったのがわかりました。宮崎さん(シセイカイカ)が来ていましたが、来るな!と思いました(笑)。負けたくないです。
それと、ディーズメヌエット(8月13日1R)。同着でしたが自厩舎で勝った馬で、宮崎さんが、僕を自厩舎で勝たせるために薦めてくれたんです。能検も乗せてもらいました。能検は広い意味で勉強になりますね。
負けず嫌いなのですね。騎手としてデビューして4カ月が過ぎ、いかがですか。
馬を動かすのって、こんなに難しいのか、と思っています。ゲートは難しいですね。「ゲートうまくなれ」とよく宮崎さんに言われます。宮崎さんは、馬を動かすこと、御すこと、おさめること、展開、全てがうまく、そして大舞台に強いですよね。
大事にしているのは、宮崎さんの言葉を借りれば「動物の気持ちをくみ取る」ということです。馬は機械じゃない。感情があって能力もそれぞれ違うから、その子に合わせた引き出しをどう引いていくか。1つでも多く勝ち星を積み重ねていきたいです。
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※インタビュー / 小久保友香(写真:小久保友香、小久保巌義)