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小野 楓馬 騎手(北海道)

2019年10月07日

2019年に門別競馬場でデビューした小野楓馬(おのふうま)騎手は、両親が日高の牧場スタッフという"馬産地競馬"ならではの出自。ヤングジョッキーズシリーズ(YJS)トライアルラウンド門別当日(8月21日)にはその第2戦を含む1日5勝、翌週29日のリリーカップでは、デビューからわずか4カ月で重賞初制覇を果たすなど、1年目からめざましい活躍を見せています。

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ご両親が牧場にお勤めとのことで、名前にも「馬」がついていますが、小さいころから馬には興味があったのでしょうか。

小さいころは父が勤めていた牧場の社宅に住んでいて、玄関を出たら目の前に牧場があるような環境でした。名前は両親が一緒に考えて、母が「楓」という字を使いたかったそうなんですけど、「馬」の字も自然とついたんでしょうね。この牧場で育った馬が将来競馬場を走るということは子どもながらに理解していましたし、小学1年生くらいのときから、テレビでディープインパクトや武豊さんを観て「強いんだなあ」と思っていました。その頃、家の近所にあったカントリー牧場で生まれたウオッカがダービーを勝ち、なおさら親近感が湧いてきましたよね。

騎手を目指したのも自然な流れだったんでしょうか。

もともと体が小さくて、両親から「ジョッキーになったら?」と勧められた影響もあって、4〜5歳の頃から「大きくなったら騎手になる」と周囲に言い回っていました。小学生のころから三木田乗馬学校というところでポニーに乗っていて、馬に乗る楽しさは感じていたんですけど、本当に決意を固めたのは中学生になって進路を考え始めたときですね。小さい頃から言ってきたせいで周りからも「騎手になるんでしょ?」っていう雰囲気が固まっていて、今さら後に引けなかったのもあるんですけど(笑)。

最初は中央を目指していたんですけど、高2のはじめに母の知り合いから「小野望先生が騎手を欲しがっている」という話を聞いて、ホッカイドウ競馬に目が向くようになりました。ちょうど門別競馬場で子どもたちのポニーレースがあって、ゴールした馬を捕まえるバイトで行ったときにレースを観たんですけど、「地元から近くて、歓迎も応援もしてもらえるなら、ここで騎手になるのもいいな」とシンプルに思いましたね。

教養センター時代大変だったことを教えてください。

ホロシリ乗馬クラブや静内農業高校の馬術部でも経験があったので、乗馬に関しては未経験の子よりは余裕があったつもりでしたけど、だんだん技術が追いつかれるにつれて焦りを感じたことですね。自分がケガをして2週間くらい馬に乗れなかったときに、他の子たちはどんどん訓練を進めて巧くなっていきましたからね。そのぶん、自分ももっと頑張らなければと思えたのはプラスでしたし、同期とはお互い助け合って、一緒に高め合っていけるような関係でした。

デビュー当初はどうだったのでしょう。

デビュー戦(4月17日門別3R・ジェイドリームで2着)は田中淳司先生がいい馬を用意してくださったんですけど、馬に遊ばれてゴール前に差し返されてしまい、改めて自分の力不足に気づかされました。最初のころは緊張もしましたけど、周りからの歓声も届いていましたし、テレビで見ていた騎手の方々と一緒にレースをしているというのは新鮮な感覚で、そのとき騎手になった実感がわいてきましたね。

師匠の小野望調教師からはどのような指導を受けているのでしょう。

基本的に馬のリズムに合わせ、馬の気持ちを尊重することを教えていただいています。レース前には「この馬がこういうレースをするだろう」とか、レース後も「こうすればこうなるからこういう結果になる」と、1年目の自分でもイメージしやすいように馬のことやレースのことを教えてくださるのは本当にありがたいですね。自分が馬の上にいるだけでは気づかないような視点をいつも与えてくださっています。

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1年目から当初の目標としていた30勝をクリア。8月にはプリモジョーカーとのコンビでリリーカップを制し、重賞も勝利しました。

キッカケを与えてくださった関係者の皆さんと馬に感謝というか、本当にいい経験をさせてもらっているということを実感しています。1年目から重賞に乗せてもらえるということ自体なかなかないことだと思いますし、馬が走ってくれたおかげというのはもちろん大きいですが、ひとつ重賞を勝たせてもらったおかげで、気持ちの面でも少しゆとりを持ってレースに臨めることができるようになった気がします。

プリモジョーカーのグランド牧場の伊藤社長は、自分が所属していた柔道の少年団で会長をなさっていて、社長のお子さんともよく一緒に練習していたんです。実績のある馬だったので、乗せていただけるという話を聞いたときはさすがにビックリしましたが、変に緊張とかプレッシャーとかを考えたりせず、角川(秀樹)先生から要求されたことを当たり前に実行して、馬の力を信じてさえいれば、少なくとも馬の能力を出し切ることはできるとすぐ切り替えたつもりです。

レースでは内目の枠から果敢に逃げました。

先生からは「最初はハナを取るつもりで出していって、自分よりも速い馬がいたら2番手でも仕方ないね」という話を聞いていましたが、この週はインコースが特に軽かったので、「行けるならハナへ行ってやろう」というつもりで乗っていました。ゲートを出てから自然といいハミがかりで行けたので、コーナーに入っても馬の邪魔をせず、気持ちだけは抜かさないようにすることをいちばんに意識していましたね。直線はとにかくしっかり追うことだけを考えていたんですけど、最初聞こえていたムチの音や足音がだんだん聞こえなくなってきたときは内心とても驚きましたし、馬に対して「お前すごいんだな」っていう思いを抱えながらゴールまで乗っていました。検量室で出迎えてくれた小野先生もすごく喜んでくれましたし、ほかのジョッキーからも「おめでとう」と声をかけられて、やっと緊張がほぐれて喜びを噛みしめられましたね。

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プリモジョーカーでリリーカップを制し重賞初制覇

地元で行われたヤングジョッキーズシリーズでは第2戦を勝利。この日は5勝を挙げる活躍でした。

2戦目で騎乗したレルシュタープは転入初戦で、中央では馬なりでもハナに立つような競馬をしていたので、無理しなくても逃げられるかなと思っていましたが、2番手の馬が引っかかってきたので、流れは速かったですよね。道中はなるべくリラックスさせることに専念し、勝負どころで抑えていた手綱を放して「気持ちよく行ってもいいよ」と合図を出して最後は馬の力を信じたら、直線ではこちらの叱咤にもしっかり応えてくれました。

それまでの4勝は、人気になるような馬も多かったですからね。そういう馬を任せてもらえるのは本当にありがたく思いますし、だからこそ気をさらに引き締めて、期待に応えていくしかないと。ちょうど当日、同期の福原杏(浦和)もYJSに乗りに来ていて、「昨日ようやく楓馬に勝ち星で追いついたんだ」という話を聞いていたので、「自分も負けてられないぞ」と余計に燃えました(笑)。

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YJSトライアルラウンド門別第2戦を制して、1日に5勝

次のトライアルラウンドは11月19日の川崎です。

門別で1回勝たせてもらって、いい位置にいさせてもらえる以上、ファイナルに残れるようにしたいですよね。川崎は最後のトライアルラウンドなので、あと何ポイント必要か計算しやすいのはありがたいです。左回りのレースはおそらく初めてになりますが、いい経験をさせてもらいながら、冷静に、ひとつでも上の着順を目指したいと思います。去年は(山本)咲希到さんと落合(玄太)さんがファイナルに進出されたので、自分もそれに続きたいです。

今シーズンもあと2か月を切りました。今後の目標と課題を教えてください。

当初の目標だった30勝は達成できましたが、これからも目の前の勝利を1つ1つ積み重ねていき、今度は50勝を目指したいですね。去年落合さんが1年目から57勝(門別のみ。ほか1勝)を挙げられたので、「もっと上がある」と考えられるのは、自分にとって恵まれた環境だと思います。まだ臨機応変さが足りないというか、レース中に慌てて、中途半端な位置取りになることもあるのが課題ですね。あとはやっぱりスタートですかね。ゲートの中で同じ体勢を取っても出たり出なかったり、「どうして今回は出なかったんだろう」とか試行錯誤しています。やっぱり考えて乗るのはいちばん大事だなと思います。

では、最後に、オッズパーク会員の方へメッセージをお願いします。

これからも馬主さんや厩舎スタッフの方、そしてファンの方に、見ていて面白いと思ってもらえるような、魅力ある騎乗を心がけたいです。乗せていただけることを当たり前だと思わず、謙虚に、ひとクラひとクラしっかりレースに臨みたいですね。

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※インタビュー・写真 / 山下広貴

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