斎藤修の重賞ピックアップ

【コラム】師弟コンビでNARグランプリ同時受賞

 NARグランプリ2021の表彰馬・表彰者が発表された。表彰馬では、2歳最優秀牝馬と牡馬が北海道所属馬だった以外は、やはりというべきか南関東所属馬が受賞。一方で、表彰者のほうはさまざまな地区から選ばれた。
 なかでも祝福すべき選出は、打越勇児調教師の最優秀勝利回数調教師賞と、所属する宮川実騎手の最優秀勝率騎手賞、高知の師弟コンビの同時受賞だ。打越調教師は2年ぶり3度目の受賞だが、宮川騎手は初受賞となった。
 ただなんとも残念なのは、コロナ感染拡大の影響で、昨年に続いて表彰式典が行われないこと。宮川騎手はもちろんのこと、優秀新人騎手賞の飛田愛斗騎手(佐賀)、優秀女性騎手賞の佐々木世麗騎手(兵庫)などが実際に表彰されるところやインタビューなどは見たかったし、多くのファンにも見てほしかった。
 
 NARグランプリの表彰では、2008年までは調教師と騎手は総合的に最優秀調教師賞、最優秀騎手賞という表彰しかなく、勝利回数、賞金、勝率が部門別に表彰されるようになったのは09年から。それ以降、昨年までの13年で、最優秀勝利回数調教師賞は高知の調教師がじつに8回も受賞している(田中守調教師1回、雑賀正光調教師4回、打越調教師3回)。
 最優秀勝率騎手賞も高知の赤岡修次騎手が5回受賞しており、今回の宮川騎手で高知所属騎手はのべ6回目の受賞となった。
 ここ10年、高知競馬が右肩上がりで売上を伸ばしてきたことを象徴しているかのような活躍といえよう。
 
 打越勇児調教師の父・打越初男氏は、騎手として高知競馬では初めて地方通算2000勝を達成し、調教師としても活躍。しかし2011年に60歳の若さで亡くなられた。打越勇児調教師は、父の厩舎を引き継ぐかたちで2012年に調教師となった。2年目の13年には早くも110勝を挙げると、以降は年間100勝を下回ることがなく、18年には197勝で初の全国トップ。19年には202まで勝利を伸ばして2年連続での全国1位。20年はわずか1勝差で2位だったが、21年はキャリアハイとなる206勝で、前述のとおり最優秀勝利回数調教師賞3度目の受賞となった。
 
 宮川実騎手は、1999年に打越初男厩舎からデビュー。2007年には初の年間100勝超となる117勝で高知リーディング2位まで躍進。翌08年には139まで勝利数を伸ばし、デビューから10年足らずで高知リーディングの上位に定着した。しかし09年5月2日、レース中の落馬事故で顔面を複雑骨折、左目を失った。
 それでも何度かの手術を経て、約1年後の10年5月29日には奇跡的に復帰。11年に打越初男調教師が亡くなられたあとは別の厩舎に移ったが、12年の打越勇児厩舎開業とともに所属となった。
 
 高知競馬は08年度に1日平均の売上が約4000万円にまで落ち込み、その後は回復傾向にあったが、まだまだ厳しい時代。打越勇児厩舎は、開業したばかりの12年12月5日、船橋・クイーン賞(JpnIII)にアドマイヤインディで遠征。宮川実騎手を背に14頭立て12番人気で3着という好走は、ちょっとした感動だった。
 
 宮川騎手は、翌13年6月1日に地方競馬通算1000勝を達成。そして今年1月9日には、さらなる大台の地方通算2000勝に到達した。
 
 いまこの師弟コンビには、期待の有力3歳馬がいる。昨年、デビューから圧倒的な強さで4連勝という快進撃を見せた牝馬のマリンスカイだ。2着につけた着差は、8馬身、9馬身、8馬身、8馬身というもの。高知所属馬として初めて全日本2歳優駿(JpnI)にも出走。スタート直後、他馬にぶつけられる不利もあって13着と残念な結果となったが、明けて3歳の高知の三冠路線のみならず、全国区での活躍も期待したい。

斎藤修の重賞ピックアップ
NAR『ウェブハロン』、『優駿』、週刊『競馬ブック』、『競馬総合チャンネル』などで地方競馬を中心に記事を執筆。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』『地方競馬中継』解説。ドバイ・香港・シンガポール・アメリカなどの競馬にも足を運ぶ。1964年生まれ。
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