北井 佑季選手
2024年07月25日
岸和田で行われた高松宮記念杯競輪(GI)で見事GI初制覇を果たした北井佑季選手(神奈川119期)。GI初出場から僅か1年4か月でのタイトル獲得となりました。
決勝戦で走りながら感じた意外な気持ちとは。沢山のお話を伺いました。
ナッツ:まずは高松宮記念杯競輪でのGI初制覇、おめでとうございます。
北井:ありがとうございます。
ナッツ:少しお時間経ちましたが、改めてお気持ちはいかがでしょうか。
北井:まず優勝できてよかったなと思いますし、そこを目標としてやっていたので嬉しいです。あとは自分の力だけで取れたわけではないんですけど、本当に色んな人から祝福の声を頂けてありがたかったです。
ナッツ:やはり祝福の声は過去1番多かったですか。
北井:そうですね。その中でも本当に応援してくれてたのは師匠(高木隆弘選手・神奈川64期)だと思いますし、やっぱり1番僕に優勝してほしかったはずです。
それ以外にも同県の選手なども沢山応援してくれたので嬉しかったです。
ナッツ:終わって師匠からはどういう声をかけられましたか。
北井:「本当に良かったね~」っていう風に言ってくれましたね。
ナッツ:優勝した直後と少し時間が経ってからの気持ちの変化はありますか。
北井:特にあるわけではないのですが、まずGI制覇を目標としてやっていたので1個取れたということは嬉しかったです。GIタイトルを1個取ったという責任というのもありますし、来年はSS班になるというか、なってしまうので、そういう意味でも、残りの半年はより注目される立場だなと、もう本当に終わった直後から思っています。
ナッツ:去年の2月に初めてGIの全日本選抜に出場されてから、本当に僅か1年ちょっとでのGI制覇でした。最初にGIに出た時には、こうして約1年後に優勝するビジョンはご自身の中ではあったのでしょうか。
北井:今年の全日本選抜(GI)での決勝で3着を取った時に、「取れそうで取れないな。その3着からなかなか2着、1着っていうのは遠いな」っていう風に思ってはいたんですけど、本当にチャンスがあるタイミングで今年中にGIは取りたいなと思っていたので、その辺りで今年は取れるかもしれないなと思いました。
ナッツ:その全日本選抜(GI)もそうなのですが、特に今年に入って一気に勢いが加速したように感じるのですが、北井選手自身は今年になって変えられたことはありましたか。
北井:特に大きく変えたっていうのは本当に全然ないんです。デビューしてからずっと練習のメニューややり方も同じで、本当に日々の積み重ねで少しずつって風になっていったのかなと思います。あとは周りの方から言っていただけることも多いんですけど、グレードレースも走れるようになってきて、そこでもずっと基本的には先行1本でやっていて、そういう走りで結果を残せるっていうのを見てもらえるようになってきて、より注目してもらえたと思います。なので僕個人としては、なにかをきっかけに急に良くなったとかいう感覚ではなく、徐々に徐々に...という感じですね。
ナッツ:ではそのGIについてお話を伺いたいのですが、GIを迎えるにあたっての状態面はいかがでしたか。
北井:状態面は自分自身の中では万全な状態で臨めました。今までになくというか...なんて言うんですかね、それも特別なことは何もやってないんですけど、感覚的にやっぱり大きいレースを経験として積んでいく中で、GIは6日制ですしやっぱり長いので、気持ちの持って行き方であったり体調面も多少なりとも違ってくるので、大きなレースを経験するにつれて少しずつそのあたりを学んでいって、今回はいけるかなっていう風な感覚で臨みました。
ナッツ:ではもう今回はあとは取るだけだ、っていうくらいの状態ではあったと。
北井:そうですね。前回の2月のGIの時は、その時なりの万全ではあったんです。
でもそれで結果3着ってことは、2着になるのに、そして優勝するのには、まだ1つ、2つ何かが足りないので、そこはなんだろうっていう風に突き詰めて考えていったので、高松宮記念杯(GI)には自分自身の中で納得いく状態で臨めた感じです。
ナッツ:そのGIでは2走して1着こそなかったのですが、しっかりとバックを奪っての2着2本でした。実際走った感触としてはいかがでしたか。
北井:悪くはなかったですね。確かに1着はなかったんですけど、GIで勝ち上がりも結構厳しい中でも自分のレースというか、思い切ったレースをした結果勝ち上がれていったのが良かったです。それがしっかり決勝に繋がったのかなっていう風に思います。
ナッツ:その後青龍賞では南関4車の先頭となりました。すごいメンバーの中でもしっかりと主導権を奪っていきました。並びも注目された中でしたが、北井選手としてはいかがでしたか。
北井:もう僕自身は先頭に行きたいっていう気持ちを伝えてあとは後ろの皆さんが決めた感じなので、自分のやるべきことをやりました。
ナッツ:そこから繋がったのかなと感じたのは準決勝戦でした。並びとしては松井宏佑選手(神奈川113期)の番手でした。ここに関してはどういった経緯がありましたか。
北井:松井さんとは以前に後ろに付かせてもらったことも1回ありますし、去年の高松宮記念杯(GI)では、僕が先頭で後ろが松井さんというのもありました。
松井さんは力がある選手ですし、僕自身としては、自分が前でも松井さんの後ろについてもどちらが前でも納得いくレースができるっていう風に思っていたので、並びを話す段階でお互いどういう風な気持ちを持ってるかっていうのをお話ししたんです。そうしたら松井さんが僕の前で頑張りたいっていう風なことを言ってくれました。
「去年は僕が前だったんで、今年は僕が前行かせてもらっていいですか」っていう風に松井さんの強い気持ちを感じたので、そこでこういう並びになったんです。
ナッツ:それもやはり今までの北井選手の走りがあるからこその並びですよね。
北井:深くは話してないんですけど、そういう風に思ってくれてるのかなと感じる、気持ちのこもった走りだったと思います。
ナッツ:そして決勝戦なんですが、ここも並びが注目される中で、郡司浩平選手(神奈川99期)の番手の戦いになりました。
北井:はい、ここも松井さんの時と同じような感じでした。今まで郡司さんの後ろはなかったんですが、2月の全日本選抜(GI)で郡司さんが優勝して僕が3着だった後、どこかで一緒に練習した時に、「次、機会があれば前任せてもらっていいですか」っていう風に言ってもらいました。その時は本当に機会があればっていう風な話で終わったんですけど、決勝の番組が出て、神奈川3車だったんで話しました。和田さん(和田真久留選手・神奈川99期)は自分は3番手っていう風に先に言ってたので、僕と郡司さんの話だったんです。
僕が前でも全然良かったというか、その気持ちはあったのですが、郡司さんがもう松井さんと同じような感じで、今回は自分が前で走りたいって言ってくださって、本当に郡司さんは力のある選手ですし、任せても自分自身で納得いくレースできるなっていう風に思ったので番手を回ることにしました。
ナッツ:神奈川勢の決勝の車番は悪かったんですが前受けからのスタートということになりました。レース前のイメージとしてはいかがだったんでしょうか。
北井:作戦としては初手の位置を選べる車番ではなかったので、取れた位置からしっかり仕掛けどころ逃さずに仕掛けに行くっていう話ではありました。もう僕自身としては、郡司さんの後ろを回ると決めた以上はどういう風なレースになっても納得できると思っていたのでお任せしていました。実際郡司さんはもう脇本さん(脇本雄太選手・福井94期)がカマシに来た段階では出られないくらいのスピードで踏み上げていってくれました。
ナッツ:もう本当に郡司選手の気持ちが伝わる走りでしたが、その気持ちに応えて1コーナー付近からタテに踏みましたね。
北井:準決勝の松井さんもそうだったのですが、後ろに付いていて、背中から熱いものを感じましたし、やっぱり先頭は先頭の選手の仕事があって、3番手は3番手の仕事、それぞれ任された場所の仕事っていうのがあると思うのですが、本当に郡司さんは主導権をとって、仕掛けられるべきところで、相手に来させちゃいけないっていうところで踏んでいてさすがでした。気持ちの入っている走りだったなっていう風に思います。ただ、僕が飲み込まれては意味がないですし、他の選手も見えていて、和田さんも3番手にいたのでちょっと張り気味に、そこからはしっかり自分の悔いのないようにと思って踏んでいきました。
ナッツ:先頭に立ってからゴールまでの間は気持ちとしては長いなあ、と感じなかったですか。
北井:なんていうんですかね...GIの決勝の舞台でああいう風に半周ちょっとでしたが、風を切っていけるタイミングってなかなか多くはないと思うので、緊張感もありましたけど、「この時間がもっと長く続いてくれればいいのにな」っていう風に思いながら走っていましたね。笑
ナッツ:え!あの中でそんなことを。笑 何も考えられずがむしゃらにっていうよりは、割とこう気持ち的に余裕もあったっていう感じなんですね。
北井:そうですね。この経験をあと何回できるんだろうって考えた時に、このタイミングでこういう経験はなかなかできないので、悔いのないようにもう踏み切ろうっていう風に必死ではあったんですけど、終わらないでくれ、という風な思いでも走ってましたね。
ナッツ:その中でゴール線のところで落車をしてしまったのですが、タイミング的にはご自身で、「勝った!」って思った時だったのでしょうか。
北井:ゴールのところで横に和田さんも見えていましたし、内側から選手が来ているのも見えていたので、正直自分の着はわかんなかったんです。わからないまま、でもガシャンってなった感じだったんです。
ナッツ:となると、優勝したのがわかったのはどのタイミングだったんでしょうか。
北井:最初審議が出て自分も転んでたので、自分が審議対象なのかがわからなかったんです。
そして決定の放送があって、古性さん(古性優作選手・大阪100期)が審議になってたので、3着は最初出なかったんですよね。でも1着2着は最初に出たので、この段階で自分が1着なんだなっていうのはわかりました。
ナッツ:担架で運ばれている時にお客さんの声は聞こえていましたか。
北井:はい、何度も僕のコールをしていただいたんです。それが嬉しかったですね。
怪我も擦過傷のみで大したことなかったので良かったです。表彰式でも、皆さんの応援の声や喜んでいただいた声も聞けましたし、もう本当にそういう風に応援してもらえてありがたいなっていう風に思いました。
ナッツ:先ほどもお話ありましたが、やはり北井選手は師匠である高木選手と二人三脚で戦ってきた印象が強いです。改めてどんな存在なんでしょうか。
北井:もう本当に自転車に全然乗れない一番最初の時から、0から教えてくれた人なので、師匠がいなければこうしてタイトルももちろん取れなかったですし、そもそも競輪選手になれていなかったと思うので、なかなか簡単には言えないのですが、師匠のおかげでしかないなって感じます。
ナッツ:やっぱり北井選手は練習量がものすごいっていうのは多く聞くのですが、その辺りもやはり師匠から教えてもらって、なんでしょうか。
北井:そうですね。やっぱり若い頃から競輪選手をやっている人も多い中で経験の少ない自分が勝って行く為には、やっぱりまずは練習量が大事というのも思ってましたし、師匠にも教わりました。自分としては当たり前の感覚なんです。サッカー選手の時も練習量は多かったと思います。
ナッツ:そんな中だとなかなか休む時間もないんじゃないですか。
北井:オフはないんです。こういうインタビューをしていただいた時にオフの過ごし方は、とか言われるんですけど本当にオフがないので答えられないんです。笑
もう自分自身の中でしっかり、今はやっぱりそこに打ち込んでやりたいっていう風な気持ちを家族にも伝えていますし今は頑張っていきたいですね。
ナッツ:今回GIを1つ取って、北井選手のこれからのモチベーションは何でしょうか。
北井:僕自身の中ではまだ1個というか、これからもGIを走れるチャンスがあるので、1個から2個、2個から3個って増やしていきたいですし、最終的には競輪選手になった時の1番の自分の中での目標はグランプリで逃げ切りたいっていうところなんです。
なので、やっとこう、グランプリで逃げ切れるチャンスを得られた段階で、まだこれからだと思っています。やっぱりグランプリで逃げ切るってのはなかなか簡単には出来ないと思うのでそこを目指していきたいです。
ナッツ:そして8月には地元で迎えるオールスター(GI)もあります。
GI制覇の前に行われたファン投票でも9位という結果でしたが、それに関してはいかがですか。
北井:もう本当にそれはファンが走りを見てきてくれての評価なので率直に嬉しいですね。
ナッツ:あとはご自身の中で、今後強化していきたい部分はありますか。
北井:やっぱりこういう風にタイトルが取れたことで、僕自身が今まで他の選手に対して何がなんでもと思って立ち向かっていったのと同じように、今後は自分自身も少なからずそういう風に思われることも出てくると思うので、そういう相手にも常に自分が挑戦者っていう気持ちを忘れずにいきたいですし、自分の先行での走りにより磨きをかけて勝っていくっていうのが大事なのかなと思っています。
ナッツ:すごく冷静に分析されている感じがしますね。
北井選手は普段の印象だったり、受け答えなどを見ていても冷静沈着なイメージがあるのですが、ご自身の中ではメンタル面に関してはいかがですか。
北井:確かに喜怒哀楽は激しくはないですね。でもそれはトレーニングをしているわけではなくて、性格によるものだと思います。あとはインタビューなどは多くの人がご覧になりますし、僕自身自分がすごく言葉足らずだと思うんです。笑
だから誤解されないようにというか、少ないボキャブラリーの中で思っていることが少しでも伝わるように、考えて考えて話してるのでそういう感じになっちゃいますね。
ナッツ:その北井選手の真面目さがしっかりと皆様には伝わっていると思います。
では最後にオッズパーク会員の皆様へメッセージをお願いします。
北井:本当にいつも応援ありがとうございます。
本当にファンの皆さんの期待や応援あっての高松宮記念杯(GI)の優勝だと思います。
僕自身の中でも取りたいと思ってましたが、僕に取って欲しいと思ってる人が多くいるというのも感じていました。そういう日頃からの応援がありがたいなって思って走っているので、今後注目されるとは思うのですが、変わらずにというか、責任感を持って走っていくので今後も応援よろしくお願いいたします。
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※インタビュー / ナッツ山本(なっつやまもと)
公営競技の実況に憧れ、一念発起し脱サラ。2022年別府競輪と飯塚オートレースの実況でデビューを果たすことになった期待の新星。
まだデビューから間もないが、競輪中継の司会も経験し徐々に活躍の場を広げつつある。星の観測と手品が趣味。
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※写真提供:株式会社スポーツニッポン新聞社
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