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浅井 康太選手

2024年08月01日

6月に行われた高松宮記念杯競輪(GI)の初日に通算500勝を達成した浅井康太選手(三重90期)。輪界の哲学者とも言われる浅井選手の考え方やレースに対する姿勢など、様々なお話を伺いました。

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ナッツ:まずは通算500勝おめでとうございます。

浅井:ありがとうございます。

ナッツ:少しお時間経ちましたが、今のお気持ちはいかがでしょうか。

浅井:やっぱりJKAの表彰規程に定められている500勝を達成できたっていうことは嬉しく思いますし、もちろんファンの皆様、そして自分を支えてくれた練習グループや先輩方にも感謝しているところですね。

ナッツ:18年11か月の月日を経ての500勝というのはいかがでしょうか。

浅井:やっぱり最初の頃はすごく弱くてかなり苦労したんですけども、先輩方や師匠に厳しく育てられて今の自分があるし、やっぱり厳しく育てられたことで強くなれたなっていう認識はすごくしてます。良い環境に連れていってもらえたって感じですね。結果がよければやっぱり良い環境っていうところなんで、そういうところに導いてもらえた。だから今も良い環境で上位で走れたり生活できたりっていうところに繋がってるかなとはすごく思いますね。

ナッツ:なるほど。その良い環境っていうのは、決して甘やかされるわけじゃなく、厳しくされている環境があってこそっていうところなんですね。

浅井:僕はそう感じましたし、やっぱり今の近代的な子にはそれは通用しない。パワハラとかいろんなところで出てきてしまうんですけれども、やっぱり強くなろうっていう気持ちでどういう風に動いていくかとかが今の子は考えながらやることが大事かなって思います。そこを強制するわけじゃなくて、各自が頑張って強くなってもらえたら、僕もそこに導かれて、逆にしっかりとついていかないといけないっていう認識ができるんで、若い子にこれから育てられる自分でもあるのかなとは感じるところもありますね。

ナッツ:やっぱりそのあたりの考え方の柔軟さというか...本当に色々なことを考えてらっしゃるっていうところが、浅井選手の1番の魅力だなと個人的には思っています。

浅井:それはやっぱり考えてなくて色々苦労もしたし、今でも苦労もしてるしってところなんです。人生なんてね、いいことってほんの数回しかない。だから、苦労して苦労して、苦労することで学んだなっていうところで、いいことが本当にたまにあればいいかなって感じで生活してるんです。

ナッツ:そういう考え方っていうのは、幼少の頃からだったのですか。それともこの世界に入ってなんでしょうか。

浅井:そこは選手になって、やっぱり考え出せるようになって、発想力とかいろんなことを経験することで、ですね。突き詰めたら次のものが出てきたって感じですかね。アイデアが豊富になってるっていう状況になってしまったので。自分は人との感覚ってすごくズレがあるところはあるんです。でもそれは人とズレてるんじゃなくて、まだ世に出てないものを探してるなっていう感じですね。
例えば企業の社長さんなんて、ないものを作ろうってしてるじゃないですか。ってことは今あるものは過去のものなんで、過去のことを気にするよりも、新しいものを見つけていきたいと思ってますね。それを見つけるためには、一緒のことをやり続けることで何か出てくる可能性もあれば、逆に人に聞いたり人を頼ったりとかもできると思うんですけど、でもやっぱり自分で色々と認識しながら継続してやっていくってことを続けているんです。
500勝を達成したから新しいものをやるっていうよりも、今までの積み重ねたものをまたより一層磨き上げるではないんですけど、そういう風にしっかり突き詰めていければ、また新しいものが見えてくるかなっていうところで考えてはいますね。

ナッツ:そういう浅井選手のような考え方ができる選手って、実際それだけいるんだろうな、と感じます。

浅井:やっぱり勉強のできる賢さって世の中にはいらないと思うんです。世間一般なら賢いっていう認識が、勉強ができるとか、良い大学出てるとかですけどそうじゃなくて、やっぱり人生経験して、どういう風にやればうまく突き進めるのかとか色々考えられるんで。
それに対応能力があれば、もしくは対応能力がつけば賢い人間なんじゃないかなとは思ったりもするし、やっぱり失敗が経験になってるかなってとこですね、僕の場合は。

ナッツ:失敗を経験にっていう、よく聞く言葉ではありますけど、実際にそれを本当に実践に移せているかどうか、考えられているかどうかっていうところで差が出てきたりっていうことなんですね。

浅井:そうだと思います。だからやっぱりそういう風なところで、ナショナルチームでもしっかり考えられてると思いますよね。あとは上位陣の古性君(古性優作選手・大阪100期)にしても、清水君(清水裕友選手・山口105期)にしても、そういうところがすごい強いんだなって思えます。

ナッツ:やはり上位に行く選手っていうのは、そのあたりしっかり考えて、試行錯誤して突き詰めてっていうような感じなんですね。

浅井:そうですね。だからやっぱり歳を取ったから体力が衰えたっていう認識じゃなくて、新しいもので新しい刺激を身体や脳に入れることで何かまた生み出せればと。そしてチャンスがあればタイトルとかも狙えるんじゃないかなと思いますし、僕も40歳といってもまだまだ成長できる部分もあるかなとは考えています。

ナッツ:そんな中500勝を達成したレースに関してもお話を伺いたいと思います。
高松宮記念杯(GI)の1走目で藤井侑吾選手(愛知115期)に前を任せるレースでした。
相手は清水選手だったり伊藤旭選手(熊本117期)など強敵もいましたが、レース前のイメージとしてはどうでしたか。

浅井:基本的にイメージは500勝するぞ、っていう気持ちじゃなくて、やっぱりラインで決めようっていうところでしたね。しっかり自分の仕事をして勝ち上がりたいなっていうところと、逆にうまく決まらなかったら自分はどういう風に対応するのかっていうレースのことしか考えてなかったので。あとはやっぱりお客さんに買ってもらってる分、1着を取ることがメインになってくるので、500勝のことは頭にはなかったんですよね。

ナッツ:その気持ちで走ったその結果が500勝だったっていうような感じだったのですね。
そのレースでは、前の縺れもありましたが、ジャン過ぎのタイミングで藤井選手が仕掛けていきました。

浅井:はい、もう素晴らしいタイミングで行ってしっかりと駆けてくれました。もうあとは自分も仕事をして中部勢でワンツースリーが決まったっていうところで本当に嬉しかったです。昔からラインを組んでる富生さん(山口富生選手・岐阜68期)が3番手を固めてくれて、前の侑吾と3人で一緒に連携して、やっぱり新旧の仲間が前後にいてくれる状況で自分も達成できたんで、本当にありがたいし嬉しいしホッとしている状況っていうところですかね。

ナッツ:ゴール後には藤井選手にポンポンってするシーンもありましたもんね。

浅井:そうですね。まずはラインのことを考えて走る。それこそみんな前のことしか考えないとかあるんですけど、後ろも考えながら走るのってすごく難しくて。
こういうところで富生さんと決まったっていうところは良かったし、本当に侑吾は良いレースをしてくれたし、全体として良いレースが出来ましたね。

ナッツ:引き上げてからの周りの選手の反応はいかがでしたか。

浅井:おめでとうって言ってもらって、普段そんなに喋るわけではない、ガールズの太田美穂さん(三重112期)や當銘直美さん(愛知114期)がおめでとうございますって、紙袋に包んだコーヒー持ってきてくれて嬉しかったですね。普段本当に特に関わりはないんですけど、なんか優しいなと思って、ありがとうねって言って。やっぱりそういう風なことをしてくれることでこっちの対応も変わるし、これからもっと頑張ってほしいなっていう気持ちも芽生えるし、自分も頑張らないとっていう風に思えるしっていうところで嬉しかったですね。
あとは他の人も色々な方々からよかったなって言われたりもしたし、お祝いの言葉は沢山頂きました。

ナッツ:その500勝を達成される前のダービー(GI)ではゴール後の落車もありましたが、実際は結構大きな影響があったんでしょうか。

浅井:ほぼ歩けなかった状態で無理やり歩いてたんです。かなり厳しかったのですがやっぱりそういう部分は見せたらダメだったんで走ったっていうところなんですけど、そういうところでちょっと影響が出て、今はそこまで調子が良くないなっていうところですね。

ナッツ:浅井選手の中で、500勝にリーチをかけてからの1か月はプレッシャーだったり、緊張感というのはあったんでしょうか。

浅井:いや、特にそれはないですね。500勝だからっていうところの意識ってのは、ほぼ0でした。やっぱり自分と向き合って、自分が負けても自分の調子がいいっていう時には、負けてダメだなって思うんじゃなくて負けても自分の調子はこうだから良いなっていう認識にしたりもするんです。自分の調子が悪くても1着って取れる時あるんです。そんな時は逆にちょっと気持ちを戻さなあかんなって、上がってる気持ちを落としたりもするんです。
だから1着を取ることでどうのこうのっていうのは本当にずっと考えてなくて、勝っても負けても、自分の調子の気持ちとかどういう風にするのかっていうところで、平常心に落としたりとかあげたりとか色々するんで、そういうところで、1着に対してのこだわりはなく、自分がしっかり出来ていれば1着が勝手に取れると思っています。

ナッツ:もう着はもうあくまで結果というか。やっぱりそのあたりも本当に浅井選手はもう何事に対しても、全てを理論立てて対処しているイメージがあるんですよね。

浅井:それぐらいしないとやっぱり体力面でも負けるとこもあれば、力では負けるとこもあるんで、それなら頭動かすことを考えることで対応していけば隙間に入れるんです。
ただ、そういうところで考えることが大事とは言うんですけど、考えて練習してもあんまり意味がないんで、考え方でどういう風な差をつけるかっていうのって、物事の認識の捉え方とかいろんなことがあるんで、そういうところで使い方を変えれば変わるだろうなっていう風に思えるんです。
だからわざわざ言葉を英語に変えてみたりスペイン語に変えたらどうなるのかとか色々試してみて。日本語ではこういう風に使うけど海外やったら全然違うんだなとかってなっていたりもするので、言葉のニュアンスを変えることによって取り組み方も変わったりしてくるんですよね。だから言葉の使い方ってすごい大事だなとか思ったりもするけど、やっぱりそれを練習の後輩とかにはうまく伝えられないですね。こっちも「おい頑張れよ」ってなって。イライラじゃないけど、もっとやれよみたいな。本当はうまく伝えないといけないんですけど、でもそれは後々の話っていうところなんで。

ナッツ:個人的に溝口葵選手(三重117期)が浅井選手のもとで練習をするようになってから強くなったなっていう印象が強く残っています。やはりあれは浅井選手のマインドだったり考え方とかっていうのを理解して取り組んだからこそ、というのがあるんでしょうか。

浅井:そうですね。まず彼は真面目っていうところですね。誰に対しても言われたことには、はいって言える人間なので、たまたま僕と出会って最初にトレーニングして、これはこうだよ、1回やってみってなったらその1発目か2発目に急にチャレンジの決勝に乗れたんですよね。だからそれがたまたまハマったという感じなのかもしれないですけど、溝口的にはこの人ならってなったのかもしれないし、教えてもらいたいってなったのかもしれないし、そこはわからないですけど、そこからしっかりとやり続けられたってことですね。
僕も元々は本当にクビになりかけるぐらい74~75点の選手だったんで、それで自分の今の理論をやり出した感じで。自分自身は人が100回、200回やることを1万回ぐらいやるぐらいの感じでずっとやり続けられるんですよね。
そしたら次のものが出てくるっていう感覚になるんで。だから土台が100%になったら次のものが出てくるっていう状態になるんです。溝口も1個のことを言われてずっとやってるので、それが僕と似とるところだなと思います。やっぱり土台作りをしっかりとできてるから、今の溝口があるんじゃないかなっていうところも感じます。
自分が経験してきたことでやっぱり照らし合わせると、確かにそこが大事だなと。

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ナッツ:ずーっと続けられるってのは没頭してるって感じなんですかね。

浅井:そうですね。もうずっとそれをやり続けられるっていうか次の段階に行くのに対して、これをこうしたらこうだよって言うとそれをやり出して、またずっと一緒のことをやるんですよね溝口は。でも最初に教えた簡単な部分と、今とかちょっと前ぐらいに教えてる部分を照らし合わせると、あの時のあれが今のこれに繋がって、こうなるからこうなんですねっていう風に、それが結局はコンディショニングとか自分の調子を見るとか、感覚っていう風になってくるんです。それが今出来ているから強くなってきたと思います。
逆に溝口は落車が少ないんで、今後やっぱりS級に上がった時に落車や怪我に強くないといけないんですよね。やっぱりそれを経験することで自分の今の感覚まで戻せるのかとか、自分が戻った時にどういう風にするのかっていうところに対して、しっかり経験したことと向き合えるかどうかが今後の課題にはなるとは思うんです。
だからそういうところで別に溝口だけじゃなくて全ての人において、やっぱり1つのことができる、もしくはやり続けられるってのはすごく大事なことだなってのは認識しています。よく言いますもんね、社会でも1つのことができない人間はなんもできんわ、みたいこと。やっぱり昔の人が作った言葉っていうのを理解もできてきて、経験がそういう風に勉強になってきて言葉も覚えられるというところですね。
僕はそういう風に変換も出来ているので、そこまでになれれば良い選手とかにはなれるんじゃないかなとは思うんですけど。二兎を追う者は一兎をも得ず、って言葉があるじゃないですか。僕は思うんですけど、あれって突き詰めることが1個できる人間なら五兎でも追えそうなんですよね。

ナッツ:なるほど。中途半端になってるからそういう風になるだけで、やり遂げればいいわけですもんね。

浅井:そういうことですよね。一兎をも得ないのは1つのことを中途半端にしていくからだと思うんです。1個のことができれば、2個も3個もね、4個も5個も何個でもできるって話なんです。だから自転車じゃなくても他のスポーツにしてもいいし、トレーニングを自転車だけじゃなくて色々なスポーツやったりとか、それもトレーニングと思うんで、考え方をいかに柔軟に変えていけるか、考えられるかっていうところですね。

ナッツ:やっぱり浅井選手のその考え方は凄いですね。かなり深いです。

浅井:まあでもそういう風なことを言ってばっかやったらいるだけで嫌われもんになりますけどね。笑

ナッツ:浅井選手のコラムなどを見ていると、嫌われることもあるけど、そうだとしても言っていかないと、というお話をよく見る気がします。

浅井:嫌われてももう仕方ないじゃないですか。でも僕、人を嫌わないですよ、全く。

ナッツ:浅井選手自身が誰かを嫌うことはないんですね。

浅井:そう、陰口とかも全く言わないですよ。そうなってしまうと、自分が負け犬の遠吠えと一緒で本当に負けた気になったりすることなんで。言わん人間になることが1番の成長でもあるかもしれません。

ナッツ:確かにそうですね。そのあたりも意識して日々過ごしている感じなんですね。

浅井:ムズムズする時もありますが、やっぱりそこをどういう風に自分で気持ちを対処するかってのもトレーニングだし、それができないと言ってしまうっていうのは、やっぱりトレーニングできてないって話になるので。裏では言わずに、表で人には伝えます。

ナッツ:言うとするならちゃんと直接伝えると。

浅井:そういうことですね。その人にとっては、ちょっと痛いところをストレートにちゃんと言う、伝えるわけですよね。だから、それをありがたいと思うかどうかもその人の考え方のところもあるでしょうしね。そこを素直に受け止められる人でいるかどうかですよね。

ナッツ:中部で言うと、先程も話はありましたが、若手の中で藤井選手が急激に力をつけてきたなっていう印象もあるんですが、浅井選手から見ていかがですか。

浅井:元々の先行力はあったのであとはスピードですよね。ダッシュがどうかっていうところは付いていて思ってたんですけど、去年の宇都宮記念(GIII)の時に新山(新山響平選手・青森107期)との対戦で、あの時侑吾と連携したんです。あの時に新山を叩き切るところがあって、そこではもう強くなったっていうかね、いいレースをするなという認識だし、それこそ向き合い方がすごいなと思いましたよね。侑吾は。

ナッツ:向き合い方ですか。どういった部分に感じましたか。

浅井:意欲っていうのが強いですよね。やっぱり意志や意欲が強い人間は勉強でも机にちゃんと手を置いて鉛筆でちゃんと書く。でも意欲がなかったら、背もたれにもたれて脚を組んで、めんどくさいな、みたいな感じの態度をする。だから、意志があるっていうのは良い姿勢を保つ大前提のことなんですよね。意志が強くて先行する気持ちを持っていると、良い位置で走れたり良いフォームで走れたりするので伸びてくる。
イライラやってると結局は伸びないっていうのはそういうことで、変な位置で漕いでいるから自転車も進まないし、体力を使いすぎて消耗するってなってくるんでそういう向き合い方ですよね。上位の人って意志や意欲がやっぱり強いじゃないですか。練習がめんどくさいなっていう人はほとんどいない。だからそういうところで侑吾は意志や意欲が強いから、やっぱり今後はもっと伸びるんじゃないかなって思ってます。
そういうところで中部を引っ張っていってもらえる存在になってくれば、僕らは付いているだけで良くなるので。もちろん僕もしっかりとしがみついていきたいですね。あとは侑吾と同級生ぐらいの遼平(谷口遼平選手・三重103期)は強いんで頑張ってほしいし、伊藤裕貴(伊藤裕貴選手・三重100期)にも期待はしてますね。
やっぱりそういうところで若手が中部を盛り上げていってほしいなと感じていますね。そうなると僕らも自分たちが頑張って、若手に付いていかないと、こいつらに引っ張ってもらってしがみついていかないと、という感覚になってくるんで。そういうところでしっかりと連携もしていきたいなとは思います。

ナッツ:なるほど。その意欲や向き合い方っていうところがほんとに大きなポイントということで。あとは浅井選手は今年ガールズの伊藤優里選手(三重126期)をお弟子さんに取ったことがすごくインパクトがあって、伊藤選手は浅井選手に自ら志願したというお話も聞いたのですが。

浅井:まずは伊藤稔真(伊藤稔真選手・三重111期)からお願いできませんか、って言われたんですよね。
そして優里も、グランプリ目指してるんです、同じ景色が見たいんです、という風に言ってきたんです。それから色々話して、僕に付くことで周りに何か言われたり、中にはめんどくさいこともあるよという話もしたんです。でもそれでも頑張りたいって言うから、良いよと言ってあげたんです。
実際はまだまだ力がない部分もあるし向き合えてない部分もあるんで、これから負けを経験して、どういう風に行動しないといけないかも分かってくると思います。何も経験してない人間に頑張れよなんて言っても意味がないんでまずは経験ですよね。自分で理解して経験して、やりたいです、こういう風にしたいです、こういう風な練習したいですってのがわかってくると思うし、逆に女子の強い選手の練習方法を聞いてくるかもしれないですし。今はそこまで指導というか、あれをやってこれをやって、とはそこまで言ってない感じですね。

ナッツ:一度優里選手とお話した時には、絶対に先行で勝ちたいっていう気持ちをずっと言っていて気持ちの強い選手だなっていう風に感じました。

浅井:気持ちは強いですね。先行したらいいよっていうのは言ってます。
先行は脚力をつける為であって、先行して負けても、脚力強化のためにやった先行ならいいんですよ。将来番手が回ってきた時に脚力があれば、バックからまくったり、もしくは最後に3コーナーや4コーナーから差して優勝できるんで、それがグランプリの時やったら最高なんですよ。その1回、2回の為の脚力を作っとけばタイトルが取れるんです。
グランプリを取れる脚が出来たのなら、そこからずっと取りっぱなしかもしれないですよね。まずはそういう風な1番のチャンスの時に取れる脚を作って、そのレベルまで行ったんだったら、ずっとそのレベルで今後は生活もできるし、レースもできるしっていうところで、まずは先行しろと言ってるんですよね。今、勝ちにこだわったとしても、脚力がなくてチャンスの時に差せなかったら2着でグランプリ取れんやんってなるんで、そうじゃないよっていうとこなんですよね、最終的に。

ナッツ:まずは脚力が大事ということなんですね。お弟子さんの稔真選手とも一緒に練習することもありますか?

浅井:最近はもう自由にやらせてる感じですね。やっぱり元々僕が先行しろよっていうことに対しても厳しすぎたんで、やっぱり嫌気がさした部分もあるんですよね。
逆に稔真に教えてもらったというかそういう教え方は違うんだなっていうのも理解しました。だから今の子っていうのは、こういう風にちゃんと理論を教えてあげたりとか、こうなったらこうなるから、こうでこうなるからっていう結果まで教えてあげることで成長するのかなっていう風には学んだんです。だからそういう風にちゃんとした説明ができるようになってきました。
弟子に成長させてもらったなっていう認識は自分の中ではあるので、お互いがわからないところ、意思疎通ができないところは、そういうところで意思疎通ができて、成長させてもらってるなとか、成長できてるなっていうのをお互いが感じるのはすごい大事かなとは思います。本当に大事にしてあげたいなとは今すごく思いますよね。

ナッツ:浅井選手はもう常に何かしらの物事をすべて成長につなげている印象がありますね。

浅井:時間もったいないですもん、成長に繋げないと。20年したら60歳ですよ。しんどいです。笑 もうやってないかもしれない。それなら今できることを全てやる方がいいと思うし、そういう風なところですぐに行動できる人間が、成長するとか、良くなるとか、成功するって言うけど、やっぱり若い子に言っても絶対わかんないんですよね。
こういう風に年取ってきて、そういう風なのはわかるんだなと感じますね。やっぱり思い立ったらすぐ行動ってのはやりたいなって思うし、やりたいことをやる。自由にやるっていうのもすごい大事なことだというのもわかったし、強制させることが人を成長させないようにしてしまう、制御してしまうっていうところも理解しましたね。人間としてももうちょっと成長したいなって部分は僕的にはまだまだありますよね。

ナッツ:あとはファンからすると、やはり浅井選手には再びビッグのタイトルを期待している方も多いと思うのですが、そのあたりはいかがですか。

浅井:もちろんずっと思い続けてるし、デビューしてからもずっと思い続けてきてることですね。やっぱりそこを目指して、今の自分の考えなり行動なりがあると思うんです。だからそこを目指すことで、ファンの人に喜んでもらえて、一緒に自分も喜べるし、というところでファンの人を大事にしていきたいっていうのはありますね。
頑張れるきっかけでもあるし、頑張らないといけないっていう使命感でもあるし、そういうところを持ってやっていきたいなっていうところ、やってきてるっていうとこですよね。逆に最近だったらSNSも普及してきて色々な声も聞けるじゃないですか。アンチがあったりとか、応援もあったりとかで。でも僕はアンチの人が自分のことを好きになってくれるようにやっていきたいなと思うんですよね。難しいことかもしれないですけど、これってこうだったんだとか理解してもらえることって1番難しいことなんで、そういうのも大事なんじゃないかなと思います。もちろんね、僕のことを嫌いな方もいっぱいいますけど、やっぱりわかってほしいなって部分はすごい持ってる。自分のことを好きって言ってくれる人だったら、多分何やってもずっと好きでいてくれると思うんですよ。そこはもちろん大事にするし、それ以上のものを結果として出して一緒に喜びたいって思います。
でもやっぱりそういう難しいところにアプローチするのも大事かなと思います。

ナッツ:こういう風にアンチの人と1対1で浅井さんとお話すれば理解はしてもらえるんでしょうけど、そういうわけにもいかないですもんね。

浅井:そうなんですよね。じゃあどういう風にするのか。走りで見せるのか、喋りで見せるのか、じゃあ何で見せるのかってなってくる。でも1番最初に来るのは基本的にはレース内容、結果。そういうところでしっかりと結果を出してGIタイトルとかやグランプリに繋げていきたいなってのは今でも思ってます。

ナッツ:いや本当に結果だけを見てやっぱり色々言う人もいると思うんですけど、 やっぱり実際に浅井選手がこういうことを考えてこういう走りをしているっていうのが少しでも伝わると、また変わってくるんでしょうけどね。

浅井:うん、なかなかそこが難しいですよね。普通に喋ったら僕楽しいと思うんですけど。笑

ナッツ:浅井選手のパッと見の印象と、実際話すと印象が違うなっていうのは、私は今日思いました。笑

浅井:喋って一緒に飲んだらもっと違いますよ。笑
でもやっぱりファンからするとそう見えるのかなってのはありますよね。あとは検車場とかでも怖い顔してるねみたいな感じで言われるけど、そこでヘラヘラするのはありえへんやろって思うんですよ。

ナッツ:やっぱりそこは戦いの場ですもんね。

浅井:そうなんですよ。3日間、4日間、ずっと考えてしっかりレースに向き合うためにね、雑念が入らない為に携帯のないそういう環境を作ってくれとるのに、向き合ってないのが不思議やなと思うんですよね。やっぱそれがコンディショニング調整になってくるんで。
ってちょっと話がずれちゃいましたね。笑

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ナッツ:いえいえ、これも貴重なお話として聞かせていただきました。
では浅井選手の今後の目標としてはどういった部分においてますでしょうか。

浅井:もちろんよく選手が言う一走一走頑張ってファンの皆さんの期待や車券に貢献したいと思うってのは普通なことで、やっぱりそれは本当に思ってることなんです。
でもそれに加えて、自分の今後ってなってくると、歳を重ねるにつれて体力がなくなっていくとかってみんな言いますけど、今まで中部を少しでも引っ張ってきた自分っていうのは捨てて、やっぱり今後の若い子たちに引っ張ってもらってっていう切り替えの時期なのかなって思うんです。人生の切り替えというか、そういうところもしっかりやっていきながら競輪に向き合って、考えながら考えながら強くなれるように全力をあげていきたいなと思いますね。

ナッツ:沢山のお話をありがとうございます。では最後にオッズパークの会員の皆様に一言お願いします。

浅井:今、強い選手が沢山いますし、若手も活躍してきたので今後も競輪を楽しんでいただいて、その中にちょっとでも僕の存在を認識してもらって、強い選手と一緒に走る時は穴も開けたいと思うし、しっかりと1着を狙っていくので応援よろしくお願いします。

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※インタビュー / ナッツ山本(なっつやまもと)
公営競技の実況に憧れ、一念発起し脱サラ。2022年別府競輪と飯塚オートレースの実況でデビューを果たすことになった期待の新星。
まだデビューから間もないが、競輪中継の司会も経験し徐々に活躍の場を広げつつある。星の観測と手品が趣味。

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※写真提供:株式会社スポーツニッポン新聞社

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