南郷 家全 騎手(岩手)
2014年06月04日
南郷家全騎手というとデビュー20年目を迎える"ベテラン"なのだが、他地区で騎乗する姿を見ることはあまりなかった。それが今年1月、一念発起して高知競馬で期間限定騎乗し、約2カ月で7勝を挙げる活躍を見せた。今回はそのあたりのお話を聞いてみよう。
今回はどうして高知競馬で乗ってみようということになったんですか? そこから始めましょうか。
高知では打越(勇児)調教師が受け入れてくれたのですが、打越師と自分が所属している菅原勲調教師が親しいんですよね。それで菅原調教師が高知行きを勧めてくれたんです。
調教師になったのが"同期"なんだよね(共に2012年の調教師デビュー)。それで仲がいいと聞きました。
そう。それで、高知は昔は希望を出せばたいてい通ったんですが、最近は期間限定の行き先として人気があって簡単に入れてもらえない。今回行った時もすでに3人かな? 期間限定騎乗している騎手がいて、普通なら断られるのですが、菅原調教師と打越調教師がやりとりして話を付けてくれた。二人のおかげで実現した遠征でしたね。
全日本新人王争覇戦には出場してないから、高知は初めてでしたよね。乗ってみてどうでしたか?
レースの流れとかコースの傾向とかが全く違うから、月並みな言い方ですが凄く勉強になりました。
自分も現地で南郷騎手のレースぶりを見ていましたが、正直言って"苦心してるなあ"と感じました。
レースの流れが違うのは、それは競馬場によって全然違うのは分かっていたからある程度想像して行ったけれど、それでも厳しかった。コースの傾向も、高知競馬場は内の方が深くて重いからできる限り内に入らないよう、内に押し込められないように進まないといけない。その辺が分かるまではなかなか思うような戦いができませんでした。
高知では激しい競り合いの中で揉まれるシーンが多かった
南郷騎手は岩手ではスタートが結構早い方なんだけど、高知だと早くない......というか遅いくらいになる。それも実際に見てちょっと驚きました。
高知では「スタートでレースが決まる」ってみんな言っていましたね。全体的に勝負付けが早い展開になりがちだから、良いスタートを決めて良い位置を獲らないと勝てない。だからスタートダッシュと競り合いが激しい。
道中の流れとか勝負所の動きとかもずいぶん違っていましたよね。
岩手だと「ここではまだ......」という所で一気に動いてきますからね。それで被されたり捲られたりすると、直線で簡単に差せるような形にならないから、巻き返せなくなりますね。わりと内の方をあけて走ることが多いから馬群が詰まってごちゃごちゃになることが少ないのは乗りやすかったですけども。
遠征の前半はなかなか勝てなくて、後半になってポンポンと勝ったり上位に入ったりしたのは、やっぱりレースの流れに慣れたから?
そういう面はありますね。あと、高知は特に下の方のクラスは馬の力の差が大きい。クラスがひとつ違うんじゃないか?という馬が普通に混ざっているから、そういう馬を負かすのは簡単じゃなかったですね。
2月16日第10レース。トウカイルノンに騎乗して、高知での3勝目
そもそもナイター競馬も騎乗するのは初めてですよね。レースもそうだし、1日の仕事の流れとか、けっこう違ったんじゃないですか?
高知では朝の2時くらいから調教が始まって、それがだいたい9時半とか10時くらいまで。開催がある日はレースの時間まで待機して、レースが終わるのが夜の9時頃、ひととおり片付くのが10時とか。それですぐまた調教がある時もあったりするから1日中起きているような感じで。岩手とは生活リズムも全然違うから、身体が慣れるまではちょっとたいへんでした。
レース以外の部分はどうでしたか? なかなか楽しそうにしていたように見えましたが?
高知は騎手達の仲がいいし、土地柄もあるのか人が明るくて、楽しかったし過ごしやすかったですね。自分なんかもすぐ受け入れてくれて。赤岡騎手が率先して輪に入れてくれたんですけど、赤岡騎手は騎手としては先輩だけど年齢は一緒なんで自分も話しやすかったですしね。そういう雰囲気の良さが、高知が人気ある理由のひとつだと思いますよ。
さて、今回の高知遠征をまとめるとしたら?
レースは厳しかったし結果も決して満足できませんが、違う競馬場のレースを経験できたし、新しい人の繋がりもできた。いい経験ができたと思います。
これまではあまり他地区に行くことがなかったけど、また行ってみる?
そうですね。機会があればまた行ってみたいですね。行ってみて分かったことも色々ありましたしね。
それから、今年は盛岡で12年ぶりのJBCがあります。南郷騎手は前回のJBCの時は?
JBCのレースには乗ってないですね。その前にあった重賞(オパールカップ)にも乗ってない。平場にちょっと乗ったけど、その日は勝ち星はなかったですね。
12年経ってベテランになった南郷騎手は、今年のJBCをどう迎えますか?
自分もJBCに乗れたらいいですね。ファンの皆さんも、せっかくの"お祭り"ですから、ぜひたくさんの方に来ていただいて、盛岡のJBCを楽しんでいただけたらいいと思います。ぜひ来て下さい。
"南郷騎手、20年目の初遠征"はどうなる事か?とちょっと心配しないでもなかったのだが、実際に現地で見ていると、高知の騎手たちにもとけ込んで上手く乗りこなしていたようだった。それはもちろん、赤岡騎手をはじめ高知の騎手たちのフレンドリーさにも助けられた事だろう。そう思えば"初遠征"の場所が高知競馬だったのは南郷騎手にとって幸運だったし、だからこそ得るものもより多くなったのではないだろうか。
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※インタビュー・写真 / 横川典視