戸部 尚実 騎手(名古屋)
2015年02月20日
今年でキャリア33年目となる戸部尚実騎手。2011年に地方通算2000勝を達成し、昨年6月には2300勝をマークと、コンスタントに勝ち星を積み重ねています。
一昨年も昨年も98勝と、好成績が続いていますね。
健康体であるのがいちばんの理由ですね。それ以前は3年ぐらい続けて骨折していますし、これまで本当にケガが多かったですから。でも僕みたいに30歳ぐらいから成績が上がってきたという騎手は、珍しいかもしれないですね。
それはどういうことが要因なのでしょうか?
やっぱりたくさん乗っている分の経験値というところかな。普段からレースの流れとか、そういうことを考えていることも、それにつながっているように思います。自分はタイプとしては努力型。性格というか、子供のころもそんな感じでした。
確かに東海ダービーを勝ったのは2011年(アムロ)。デビュー29年目でした。
若いころにはマルブツセカイオーなどの活躍馬に乗せてもらいましたけれど、騎手人生としては後半のほうがいいですよね。5年前の年末年始に3日連続(2009年12月31日〜2010年1月2日)で重賞を勝って、その次の年にダービー。やっぱりダービーは特別でした。
2011年東海ダービーをアムロで勝利(写真:愛知県競馬組合)
1963(昭和38)年8月27日生まれですから、現在51歳。健康などで気を付けているところはありますか?
食事には気を遣っています。もともと量を食べるほうではないんですが、食べるものもヘルシー傾向かなと思います。ここ何年かは釣りに凝っていて、知多半島のほうに船で行って魚を釣って帰ると、それをどうにかしないとならないじゃないですか。釣りにハマるまでは料理なんて全くしなかったんですが、今では刺身とかいろいろ自分で作るようになりました。お酒は30歳ぐらいまで飲めなかったんですが、今ではけっこう飲んでいますね。ただ、お店とかではなくて、自宅でのんびりと。レースがないときは調教が終わってお風呂に入って、それから飲み始めることもあります(笑)。
昨年はリーダーズボードが東海ダービーを前に戦線離脱しましたが、かなりの活躍を見せました。2011年の東海ダービー馬、アムロも、戸部騎手が所属している川西毅厩舎の管理馬です。
僕は以前、河村功厩舎所属だったのですが、川西調教師はそこで厩務員をしていたんです。河村厩舎もいい馬を集める厩舎でしたが、川西厩舎も同じような感じですね。リーダーズボードはダートグレード競走でも戦えるだけの走りをしていましたし、状態が万全だったらという思いはあります。デビュー戦から楽勝ばかりで、ゴールドウィング賞のときに初めてレース中に気合をつけたら、その感触がとてもすごかったんですよ。もう少し強い相手と厳しいレースをしていたら、兵庫ジュニアグランプリ(3着)で、もっとやれていたかもしれません。
昨年はクリスタルボーイも活躍しましたね。
どこに行っても動じない馬で、寝ているんじゃないかというぐらいの神経をしているんです。僕自身も、東海以外で重賞を勝った(園田チャレンジカップ)のは久しぶりでした。
クリスタルボーイで園田チャレンジカップを勝利(写真:兵庫県競馬組合)
それにしても、名古屋には戸部騎手以外にもベテラン勢が揃っています。毎年毎年、暑い夏と寒い冬を越しているから、みんなタフな体になっているんでしょうかね?
僕は青森県の田子町の出身で、小学校5年生のときから新聞配達をしていました。最初は学校に行く途中にある10軒ぐらいだけだったんですが、だんだんと配達する家の数が増えてきて、高校2年のときは100軒ぐらいになりました。周囲は山だし、雪が降っても自転車ですから、けっこう時間がかかりました。
そこから騎手になるというのは珍しいことですよね?
当時は田子にも競走馬の牧場がありまして、そこにも新聞を配達していたんですよ。それで、その牧場を訪れた名古屋の調教師が騎手を探していて、牧場の人が「小柄な子がいる」と紹介してくれたんです。最終的には高校3年のときに名古屋に来たんですが、朝早いのが全然苦にならなかったのは新聞配達のおかげですね。そのときに鍛えた蓄積が、まだ残っているようにも感じます(笑)。
この先の目標みたいなものはありますか?
そうですね、3000勝......はちょっと厳しいかなあ。でもスポーツの世界は全体的に若い世代が活躍していますけれど、競馬はそうじゃないんだというところを見せたいですね。そしてまた、大きな舞台を狙える馬に出会いたいです。
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※インタビュー / 浅野靖典