井上 俊彦 騎手(北海道)
2020年06月05日
この4月に55歳を迎えた井上俊彦騎手は、ホッカイドウ競馬の最年長ジョッキー。5月に行われた3歳クラシック第一関門・北斗盃では紅一点レッドカードに騎乗し勝利しました。自身にとっておよそ4年ぶりの重賞タイトルは、ホッカイドウ競馬最高齢重賞勝利記録を55歳1カ月0日に更新する白星となりました。
今年でデビュー38年目を迎えました。これほど長くジョッキーを続けられる秘訣は何でしょうか。
ただただ馬乗りが好きだったということじゃないでしょうかねえ。競馬に乗るのが楽しいというのは若い頃から変わらないですし、レースで勝ったときの喜びっていうのが一番なんじゃないかと思います。
ホッカイドウ競馬では、2歳馬を育成していくというプロセスが重要だと思います。
やはり2歳の新馬が多いので、古馬とは違って神経質な面があったりして、レースへ行くために教えなければならないことがたくさんあるのが大変ですが、そのぶんやりがいは大きいんじゃないかと思いますね。今は自厩舎(林和弘厩舎)に仲原大生騎手(大井)が期間限定騎乗で来ていますが、若馬の扱い方をアドバイスすることが多いです。
今シーズンここまでご自身の騎乗ぶりを振り返っていかがでしょう。
久々に重賞を勝たせてもらったからというわけではないですけど、今のところはまずまず順調に行かせてもらっていますね。まあ、いつも通りやっていますよ(笑)。
2歳の頃から跨ってこられたレッドカードで北斗盃を勝利。久々の重賞タイトルを獲得されました。
自厩舎の馬だったので、乗り慣らしの段階から乗ってきたんですけど、その当時から乗りやすくて素直だなという印象でしたね。それが2歳の秋にウィナーズチャレンジを勝ったあたりから、ちょっと期待できそうな雰囲気になってきたんです。距離を伸ばしたブロッサムカップでも2着といい競馬をしてくれていたので、「これはもしかしたら、来年あたり重賞戦線でも楽しみが持てるんじゃないか」と思いましたね。
冬場から春先にかけて川崎・水沢と遠征したのですが、調教に跨っていても、順調さをキープしていたように感じました。
北斗盃のレース当日はどうだったのでしょう。
返し馬からちょっと入れ込んでいたんですよね。それでゲート裏でもちょっとテンションが高かったので、もしかしたら引っかかってしまうかもしれないな、と思っていたんですが、ゲートを出てしまったらいつも通りだったんで安心しました。
「ある程度前は速くなるだろうな」と予想していたので、後方2番手というのはイメージ通りでした。直線半ばで先頭に立って、1頭になったときはちょっと遊ぶようなところが出てしまったんですけど、最後は2着の馬(アッカレッツァーレ)が迫ったところをよくしのいでくれました。
北斗盃を制したレッドカード
レッドカードの成長ぶりと、今後の展望について伺います。
2歳の頃から大きく変わった印象は感じないんですけど、2歳の秋ごろから、いい雰囲気通りの走りはできているんじゃないかと思います。この後は北海優駿(6月18日)になるのかヒダカソウカップ(6月17日)になるのかは未定ですが、北海優駿の2,000mという距離はもしかしたら多少長いのかもしれません。ただ、折り合いの心配はありませんから、このまま無事に行ってくれればと思います。
期待している2歳馬についても教えてください。
おかげさまで、これまで自厩舎の3頭でフレッシュを勝たせてもらっています(5月28日終了時点)。厩舎の2歳馬としては、全体的なレベルとしては例年と同じくらいかなという印象ですが、期待している馬も結構いますね。
リーチ(5月6日6R・1着)は能検を受けた頃から馬がかなり変わってきて、走りそうな雰囲気が出てきました。直前の調教ではまだトモ(後肢)に緩さが残る点が気になったんですけど、レースではしっかりと、気持ちを入れていい時計(1分00秒5・重馬場)で走ってくれましたよね。素直で乗りやすい馬ですし、馬格もあるぶんどっしりと構えているというか、頼もしさを感じます。
5月6日のフレッシュチャレンジを制したリーチ
ラッキードリーム(5月26日6R・1着)も調教からいい動きをしていたので、デビュー戦の前から期待をしていました。初戦はコーナーで少々外に張る面があったんですけれども、直線に入るとまっすぐ走ってくれましたね。普段はおとなしい馬なんですけれども、少しスイッチが入るとカッとなる面があるので、そのあたりが成長してくれればと思います。
セカイノホシはまだちょっと気性が幼いというか、おてんばな感じですけれども、デビュー前から坂路で3ハロン36秒を切るくらいでしたからね。デビュー戦(5月14日5R・1着)はテンの速い馬がそろったなかでハナに立ったので、ラストで脚が上がらないか心配していたんですけど、よく最後までこらえてくれたと思います。
2歳馬については、いつもまずはフレッシュチャレンジを勝つことを目標に調教しています。今年はJBC2歳優駿(11月3日)が行われますが、自厩舎でも出走できたら最高ですよね。
門別競馬場では今年から、2歳新馬戦限定で1,100mコースが新設されました。
1,200mは2コーナー奥のポケット部分からの発走なので、2歳の幼い馬だと2コーナー側に突っ込んでいく馬もいたりして、特に内枠だと僕らも少し気が引けるようなところがあったんですよね。100m短くなってそれが解消されるようになったので、乗っている側としても、内枠が当たっても安心してレースに向かうことができます。
乗った感触としては、1,000か1,200かで言えば、どちらかと言えば1,000mに近いような気がします。何回か乗せてもらってなんとなくペースもつかめてきましたが、行き脚のある馬が残るケースも増えてきたんじゃないですかね。
井上騎手自身の今後の目標について教えてください。
目標らしい目標は特にないですね(笑)。年も年なんで、乗れるうちは普通に、しっかりと乗っていくことが一番なのかなと思います。
レースが終わっても、深く考え込みすぎないようにはしています。あまり引きずっても、そんなの仕方ないですから。
平常心でいることも長く続けられる秘訣なのかもしれませんね。では最後に、オッズパーク会員の皆さんへメッセージをお願いします。
早くコロナウイルスが収束して、門別競馬場にたくさんのお客さんが来てくださることを待っています。門別は今年開幕からずっと無観客競馬が続いていますが、レースでも能検に乗っているみたいな感覚で、なんか寂しいですね。
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※インタビュー・写真 / 山下広貴