池谷 匠翔 騎手(佐賀)
2020年07月16日
今年4月に川崎競馬場でデビューした池谷匠翔(たくと)騎手は、6月6日から佐賀競馬場で期間限定騎乗をスタート。初勝利の喜びや、今後の目標を語っていただきました。
初勝利おめでとうございます。1番人気馬(6月13日佐賀11レース、エーティーキンセイに騎乗)での初勝利でしたが、プレッシャーも大きかったんじゃないですか?
ありがとうございます。かなり緊張しましたね。実は自分が初勝利する前日に、同期の古岡(勇樹騎手)が川崎で初勝利したんです。そのレースを見ていて、「これは自分も勝たないとまずいな」と。しかもエーティーキンセイは強い馬で、周りの方々からも「ここで初勝利だな」とう感じで言われていたので、相当緊張しました。特にパドックとゲート裏、ゲートの中に入った時までめちゃくちゃ緊張したんですけど、ゲートを切ったらレースに集中することが出来ました。
直線では追いながらビジョンを見ていましたよね? 初勝利のわりにすごく冷静だなと思いました。
いえいえ、あれは後ろから他の馬の脚音が聞こえなくて、ちょっと不安になってしまって......。それでチラッとビジョンを見たんです。そうしたら後ろとはかなり離れていたので、これはもう初勝利出来たなと。ただ先頭でゴールをした瞬間はあんまり現実感がなくて、検量前に戻って来て1着の枠場に入った時に「勝ったんだな」って。乗せてくれた関係者の皆さんと、頑張ってくれた馬に感謝しています。
エーティーキンセイに騎乗して初勝利(2020年6月13日)
周りの方々の反応はいかがでしたか?
皆さんから「おめでとう」って言っていただいて、すごく嬉しかったです。レース前に真島(元徳)先生から「スタートを出たらすぐにステッキ打って前につけて、あとは3コーナー辺りから何も考えず全力で追ってこい」と言われていて、その通りに乗れたことも嬉しかったですね。
さらに、すぐ次の日には8番人気の馬で勝利(6月14日佐賀11レース、ヒューズラインに騎乗)。初勝利までは少し時間が掛かりましたが、そこからは早々に2勝目を挙げましたね。
この時は向正面くらいから手ごたえが良くて、もしかしたらいけるんじゃないかと思いました。真島先生からは「あまりゲートが速くないから、出たなりの判断で」と言われていて、思っていたよりもゲートが速かったので、積極的に行って番手につけました。先生からも「自分で考えて乗ったな」と言っていただけて嬉しかったですし、今のところ一番会心のレースですね。
8番人気ヒューズラインで2勝目をマーク(2020年6月14日)
前日の初勝利が自信になったのでは?
そうですね。もし前日勝ってなかったら、2勝目はなかったかもしれません。初勝利するまでは焦って追い出しが早くなったり、馬にも僕の緊張感が伝わってしまったり......。なかなか上手く行かなかったんですけど、ひとつ勝ったことはすごく大きくて、少しは落ち着いて乗れるようになったかなと思いますね。今もまだまだですが、川崎でデビューしたての頃は、レースの流れに乗るだけで精一杯で、周りにいる先輩方に迷惑ばかり掛けてしまいました。技術的な面はもちろん、気持ちの面でもかなり落ち込むことが多くて。
どんな時に落ち込んだんですか?
一番は初めて1番人気の馬に乗せてもらった時(4月22日浦和5レース、ゴールドサミットに騎乗して10着)です。せっかくいい馬に乗せていただいたのに全然結果が出せなくて、すごく落ち込みました。その日はとことん落ち込んで、次の日に馬に乗ったら自然と前向きになれたんですけど、やっぱり勝てない時期が続くとキツイですよね。実際にデビューしてみて、想像していたことと全然違ったというか、もちろん厳しい世界だとはわかっていましたが、ひとつ勝つことの難しさを痛感しました。だからこそ、改めて先輩方のすごさを感じています。もともとすごいとは思っていましたけど、森泰斗騎手とかあんなに勝っているところを見ると、デビュー前よりもよりすごさを感じるようになりました。
デビューしてから約2か月で所属の川崎を離れて、佐賀で期間限定騎乗することに迷いはなかったですか?
それはまったくなかったです。大井の真島大輔さんから、「たくさんレースに乗せてもらえるから、佐賀で修行してみないか?」って言われて、すぐに「ぜひお願いします!」と答えました。所属の内田勝義先生も快く送り出してくれたので、佐賀にいる間にたくさん吸収したいです。
実際に佐賀で騎乗していみて、戸惑いなどは感じましたか?
最初はありました。そもそも右回りの経験が教養センター以来で、競馬では初めてでしたし、さらに内側を大きく開けるというのも難しかったです。今は毎朝1時過ぎくらいから17〜18頭の調教をしていますし、レースもたくさん乗せていただいて、とてもいい経験をさせていただいています。
佐賀に来て約1か月で5勝(2020年7月6日現在)を挙げました。今回の期間限定騎乗は9月30日までの予定です。この間の目標は?
佐賀では20勝するのが目標です。ここで経験出来るだけのことをして、今後に繋げていきたいです。たくさん乗せていただいて、少しだけ下半身の筋肉がついたかなと思いますし、レース中ちょっと気持ちに余裕が出来て、少しは周りが見えるようになったかなと。
ここ数年、佐賀で期間限定騎乗する若手騎手が増えました。佐賀はどんな雰囲気ですか?
皆さんが「育てよう」という感じで、どのジョッキーというわけではなくて、先輩ジョッキーの皆さんがアドバイスしてくれます。毎回レースが終わった後に「ここもうちょっと行った方が良かったんじゃないか」とか、細かく教えてくれるのがありがたいですね。所属の真島先生は厳しいですが、たくさんレースに乗せてくれて、上手くなるようアドバイスもしてくれますし、周りの方々には本当に感謝しています。
初勝利の記念撮影
池谷騎手のお父さんは元体操選手でタレントの池谷直樹さんということで、デビュー前から注目度が高かったですが、ご自身では感じますか?
そうですね。そういう空気は子供の頃からちょっと感じていました。でも前からなのであんまり気にならないですね。父にはかなり熱く応援してもらっていて(笑)、初勝利した時には連絡をくれました。「せっかくこういういい機会を与えてもらっているので、少しでも成長して帰って来なさい」と言われているので、今はとにかく少しでも上手くなれるよう頑張ります。
では、オッズパーク会員の皆さんにメッセージをお願いします。
初勝利までは落ち込むことも多かったのですが、今は馬に乗ることがとても楽しいです。新人らしく一鞍一鞍大切に乗ってくるので、応援よろしくお願いします!
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※インタビュー / 赤見千尋(写真:佐賀県競馬組合)