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小西 重征 調教師(岩手)

2020年09月09日

小西重征調教師は今年77歳。調教師として開業されたのが1979年と既に40年以上経っているのだが、それ以前は20年近くトップジョッキーとして活躍されており、今では岩手競馬を最も古くから知る"生き字引"的存在でもある。その小西重征調教師が先の7月、岩手競馬の平地通算勝利記録を更新された。多くの名馬を育て、また勝利数でも記録を打ち立てられた小西調教師にうかがった。

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まずは7月13日に達成された地方競馬通算1,844勝、『岩手競馬平地通算勝利記録』更新のお話からうかがいます。小西調教師は記録にあまりこだわっていない......とは思いますが、改めて振り返ってみていかがでしょうか

そうですね、今になって数えてみればああ届いていたのか......と。そうだな、届いたとか超えるとかでもなくて、そんなに勝っていたのか、という感じですね。

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7月13日、岩手競馬平地通算勝利記録1,844勝達成の口取り

とはいえ40年間も調教師を続けて来たというだけだけでなく毎年ある程度以上は勝ち続けないとこんな数字にならないのですから、やっぱり凄いのではないでしょうか

凄いかどうかは分からないけどね。まあ、凄いというよりは長いこと調教師をやってきたその積み重ねなのでしょう。

その40年の調教師生活で小西調教師が一番記憶に残っている馬は......やはりトウケイニセイでしょうか?

そうですね、やっぱりトウケイニセイだろうね。自分もまだ若くて張り切っていた頃だから、最初の頃は勝って良かった嬉しかったと喜んでいたけれど、最後の頃になるとプレッシャーの方が大きかった。良い事も多かったが一番苦労もした馬だからね、トウケイニセイは。

最近のファンの方はトウケイニセイを知らない世代が多いと思うので改めてうかがいますが、トウケイニセイはどんな馬だったのでしょうか?

まず賢い馬だった。そして我慢強い。ちょっと故障がちな所があったがレースでは我慢して走ってくる。しかし調教中なんか、何かちょっとまずいところがあったら極端に歩様を乱してみたりするのさ。そうやって痛いとかどこかおかしいとかいうのを我々に対して教えるんだね。それで治療をするんだが、その間はピクリとも動かないで辛抱している。つまり"ここが痛いぞ"というのを見せつけて治してもらおうとするわけ。そんな馬だった。

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2009年1月、水沢競馬場に里帰りしたトウケイニセイと小西調教師(右から3人め)

トウケイニセイのキャリア終盤の頃は、調教もレースも非常に慎重に、気を遣いながら戦っていました

ちょっと脚元にまずいところがあったからね。でもレースに出たら我慢して走ってくるから。その頃はもう、勝つとか負けるとかより無事に帰ってきてくれたらいいとだけ思っていた。

引退レースとなった1995年の桐花賞の時も、決して万全ではない脚元の状態で出走して、それでも強い走りで勝って。非常に印象深かったです

あの時は馬自身が"これが最後のレースかも"と感じて、そんな気持ちで走っていたんじゃないのかなと思いますね。トウケイニセイはカメラを向けるとカメラなのかカメラマンなのかを意識してポーズを取るような馬だったのに、その桐花賞で最後の口取り写真を撮った時は人に頬ずりするように甘えたりして、これまでとは違う雰囲気だったのを覚えている。馬自身も何か感じていたんだろうね。

引退して1年位経った頃に北海道に会いに行ったが、その時もまだ跛行していたからね、最後の頃はよっぽど我慢して走っていたんだと思う。

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2011年、盛岡競馬場でのトウケイニセイ

考えてみれば、トウケイニセイは小西調教師が開業して10年ちょっとの頃に出会った馬ですよね。自分は"大ベテランの調教師が育てた馬"という感じに思っていました

トウケイニセイには色々な事を教えてもらった。騎乗していた菅原勲君(現調教師)もまだ若かったから、同じだったんじゃないかな。自分はあれを超える馬には会った事がないですね。

まあ、あの頃の走る馬はどこかしら悪い所がある、故障している馬が多くて、グレートホープもそうだったが、当時はそういう馬を治し治しやっていくのが競馬だと思っていた。手のかかる子供を育てていくというかね。何かしら悪い所があったりする馬を手をかけて面倒をみて、活躍するようになっていくのを見ているのが競馬の楽しい所だと今でも思っています。

では、調教師としてだけでなく騎手時代も含めれば岩手競馬を最も昔から見てきた小西調教師は、今の岩手競馬についてどう思われたり感じられたりしていますか?

やっぱり、そうですね、スターが出てこないと盛り上がらないんじゃないかなと思いますね。馬だけでなく人もね。スターホースとスタージョッキー。

例えば武豊騎手が来るか来ないかであれだけ盛り上がりが違う。皆が接戦で頑張っているのも良いが、抜けて強い馬、抜けて強い騎手もやっぱり必要なのではないかと思う。

そしてライバル。トウケイニセイの頃はライバルもたくさんいた。強い馬がいてライバルがいて、次はどっちが勝つか?と切磋琢磨していくとライバルも一緒に強くなっていく。馬も人もね。

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齋藤雄一騎手(現調教師)が数年間使用した「胴桃・袖緑」の勝負服は小西調教師が騎手時代に使用していた服色を引き継いだもの

小西調教師はあと150勝で2,000勝に届きます。小西調教師がぜひまたそういう馬や人を育てていただけたら......。

それはちょっと無理じゃないかな(笑)。もうちょっと岩手競馬に置いてもらおうかなとは思っているが、それは若い先生方に任せる。馬とジョッキーを育ててもらって、岩手競馬をまた盛り上げてくれたら良いと思います。自分ももうちょっと頑張るかな。そうだね、もう少し頑張りたいと思います。

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※インタビュー・写真 / 横川典視

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