廣瀬 航 騎手(兵庫)
2021年11月04日
デビューから21年目にして悲願の重賞初制覇を果たした廣瀬航騎手。ガリバーストームで兵庫若駒賞を制覇した瞬間、喜びの声を上げ、検量室前に引き上げてきてからは嗚咽が止まりませんでした。トップ層が厚い園田・姫路競馬での長い下積み時代を経て、37歳の今でも誰よりも調教に騎乗する廣瀬騎手が、少し照れながら心境を語ってくれました。
兵庫若駒賞をガリバーストームで優勝、おめでとうございます!
ありがとうございます。
待望の重賞初制覇となるゴールの瞬間はどんなお気持ちでしたか?
「レースに勝てた」という気持ちで、ホッとしました。その後、長い間苦労してきたことが蘇ってきて、込み上げるものがありました。
ガリバーストームはデビューから2連勝中で、前走の勝ちタイムもよかったです。プレッシャーはありましたか?
結構プレッシャーを感じていて、むちゃくちゃしんどかったです。プレッシャーに弱いんですよ。夜は眠れたんですけど、兵庫若駒賞までに少しレース間隔が空いたので、そこから感じはじめました。
レースを振り返ってみていかがですか?
逃げにはこだわらずにと思っていて、内から行く馬を行かせました。4コーナーを先頭で回りましたけど、ベラジオボッキーニがまだ近くにいて気になりました。正直、こちらの手応えがなくて、残り50mくらいで「(ピロコギガマックスに)負けた......」と思いました。いつものパターンなら、差されて負けていました。
それが「今回はなんとか凌げてよかった!」と。
そうです。それで、とりあえずホッとしましたね。
その直後には喜びの声が聞こえてきました。
それはもう「よっしゃ!」と思いました。
ピロコギガマックス(右)をクビ差でしりぞけ人馬とも重賞初制覇
先月には5連勝中で1番人気に推されたハナブサで園田チャレンジカップに挑むも、4着という出来事もありました。
あの時も常にプレッシャーを感じていました。ハナブサの時は挑戦者という気持ちでしたけど、今回は勝ちに行かないといけないと思っていました。
それだけガリバーストームの可能性も感じていたんですね。現時点での長所はどんなところですか?
テンが速いですし、乗りやすいです。あとは距離が延びてどうなるか、それはまだ分からないですが、能力はありますね。
廣瀬騎手は2001年4月デビュー。JRAに移籍した小牧太騎手や岩田康誠騎手がバリバリに活躍されていた時代ですね。
当時はジョッキーも50人くらいいて、デビューして12〜13年はレースにあまり乗った記憶がないです。
それだけ競争が激しくてレースに乗ることさえ大変な時代だったんですね。減量特典も今は101勝を挙げるかデビューから5年までは付与されますが、当時は20勝で減量卒業でした。
環境のせいにはしたくなくて、自分が何か悪かったんじゃないでしょうか。その中でも伸びている後輩騎手もいますから。
そう感じつつも、努力が結果に繋がらないと腐りそうになることはなかったですか?
それはもう何度もありました。なかなか上手くいかなくてしんどいなとも感じますが、叩き上げでここまで上がってこられたのはミラクルじゃないかなと思います。
たまにですが調教を見に行くと、いつも最後の時間帯まで乗ってらっしゃいますよね。そういった姿勢が少しずつ評価されて、昨年・今年と騎乗数が園田・姫路で4位なのかなと感じます。
本当にありがたいです。毎日20頭以上、調教に乗ってきた甲斐があったのかなと感じます。
競馬で心がけていることは何ですか?
レースにほとんど乗れない時代が長かったので、どんな馬でも1頭ずつ真剣に「結果を出したろう!」と思って臨んでいます。もしかしたら他のジョッキーの方がもっと考えているかもしれないですけど、自分なりにはそう思って乗っています。
重賞初制覇を果たして、これからはどんなジョッキー人生を歩んでいきたいですか?
現状維持でいいんじゃないかなと思います。ここまでこられたら十分です。
最後に、オッズパーク会員のみなさんへメッセージをお願いします。
今はこういう状況でなかなか競馬場に来ることは難しいと思いますけど、全力で頑張るので応援よろしくお願いします。
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※インタビュー・写真 / 大恵陽子